思惑はずれ

 予定では、四月以降は悠々自適のはずであったのに、とんでもない思惑違いなのである。とにかく目が回るのである。おまけに大型連休で休みが多いから四月の実働日数は常より少ないのである。


 四月になれば、固評も終わり事務所の屋台替えもあるから、悠々と日々是更新のつもりでした。だから月初めに四国芸術・民芸巡りも計画して実行したのですが、その逍遙記を報告する暇もないのです。
 早々と地価調査が始まり、固評の残務整理が残っているのに、屋台替えに伴う様々な雑務が押し寄せてくるし、塾に使用するためにノートパソコンやプロジェクターを購入したからその設定も行わなければならないし、何より塾の講義準備が必要なのである。おまけに、屋台替えしても旧来の顧客から業務依頼が頂けるし(これは嬉しい思惑違いである。)、あまつさえ連休中に高校の同窓会が予定されていてその代表幹事までやってきているのである。そうそう、新スキームデータ調査も待った無しである。
 何年ぶりかに四月の手帳は真っ黒である。昔なら、四月は挨拶回り予定と歓送迎会予定しかなかったのに、ついつい愚痴になるのである。鑑定協会企画委も今月末の開催は「公益認定ガイドライン」決定公表(08/04/11)をうけての開催であり、欠席はできないところへ、士協会経営改革特別委員会まで招集されているから、その準備も多少は必要なのである。
 それでも世間は、そんな些事にお構いなく先に進んでゆくのである。名古屋高裁は「イラクへの自衛隊派遣は憲法違反」という判決を示したし、月末から連休明けにかけて国会は「ガソリン税差し戻し可決」を巡って風雲急な様子だし、非司法競売手続導入を巡る鑑定協会内外の様相も目が離せない。折りしも今日からは、競売ネットワーク年次総会が高知市で開催されているという。競売ネットワークがこの問題にどのような意志を示すか示さないのか、これも注目されるところである。
 順不同で、手短にあれやこれやを記しておきます。
『ノートパソコン・ビスタ設定』
 新しいノーパソを買いました。畏友堀田氏が共に推奨のSONY VAIO NOTE にするかPanasonic Let’s Noteにするか、正直迷ったのであるが、茫猿の場合は業務用はデスクトップを使用しているが、今回はモバイル並びに自宅用である。iNet散策やメールチェックができて多少のプレゼンができればよいのである。堀田氏と同様に本命は「Let’s Note」であるが、スペック、重量、価格を総合してVaioに決めたのである。購入機は「VGN-SZ35B/B」ブラックである。指紋認証セキュリテイ、DVDRW、ワイヤレスLAN標準対応、オフィス・プリインストだからモバイル対応機としては申し分ないのである。
 一つだけ不満だったのは、購入した販売店がセール中だったからカラーバリエーションの選択肢が限られていたことだけである。
 ここまでは佳かったのである。コストパフォーマンスも言うことない、ところが思わぬ落とし穴が存在したのである。茫猿の最近の周辺機種はWindowsXpばかりであるが、今やXPは特注しないと入手できないのである。だからOSはWindows Vista Home Premium なのである。HP製の旧ノートから住所録やブックマークくらいを移管するのは造作もないのだが、デスクトップやスクリーンセーバーなどの様々な詳細設定や不要アプリの削除などに、慣れぬVistaのこと故に思わぬ時間がかかったのである。一番苦労したのは無線LANの設定だった。自宅の何処でも使用できるようにと、自宅では以前から無線LANにしているが、この設定に苦労したのです。結局のところ、旧AirStationは廃棄処分にして新機を購入するハメになったのです。
『非司法競売手続導入問題』
 さて本日の本題「非司法競売手続導入」問題である。詳しくは『鄙からの発信』の過去記事を参照して頂きたいが、この問題の本質は新自由主義者による過度の自由競争主義と過度の自己責任主義にある。法務省民事局競売制度研究会が示すA~D案のうちで特にD案については「羊の皮を被った狼」であると云えるのである。D案はA~C案の選択を提案するものであり、ひいては司法競売手続と非司法競売手続のいずれを選択するかは当事者の自由とするのである。自由競争と自己責任なのである。一見して選択肢が多く、当事者の自由度が高く、規制緩和に即するものと見えるが実はそうではないのである。
 この点に関しては日弁連の二度にわたる反対意見書が詳しいが、深く考えなくとも判ることなのである。金銭消費貸借契約を結ぶときに大企業とメガバンクならいざ知らず、中小零細企業や個人の住宅ローン契約の場合に貸し主金融機関と借り主個人や零細企業が対等であるなどと誰も考えないであろう。さらに債務者は円滑な返済履行を前提にしている、まさかの破綻など考えたくもないであろう。そんな時に債権者は当然のように破綻を前提にしてリスクヘッジを考えるだろう。
 すなわち、金銭消費貸借契約締結に際しての特約条項に「裁判所の関与なし、三点セットなし、評価制度・基準価額制度なし、換価価額下限規制なし、自己競落あり」のA案を盛り込むのは当然であろう。その結果は破綻に際して代物弁済まがいが罷り通ることとなるのであろう。債務者は重要事項説明を受けたとしても、先ずローン締結が優先されるし、何年後どころか何十年後かに破綻するかもしれないなど考えもしないし、考えたくもないであろう。
 挙げ句は当事者の自由意志と自己責任でA案選択ということになるのであろう。労働三法の規制緩和・改悪による日雇い派遣の横行と同じことなのである。我々は不動産鑑定士である前に、善良な市民なのであり同時に不動産の専門職業家なのである。この本質を見逃して「三点セットの存続」のみを言っていてはならないのである。「裁判所で評価人の枠を拡げる場合には、積極的に参加させて頂きます。」などと、業益の立場のみの発言を行っていては駄目なのである。社会的相対的弱者保護の視点に立脚する発言が欠かせないのである。
『鑑定協会のWeb認識とコンプライアンス』
 せっかく鑑定協会会員専用サイトに、「競売制度の検討に関する掲示板」が設置されたと思ったら、「外部への情報流出が確認された」といって一月も経ないうちに閉鎖なのである。会員専用サイトは当然のことに「外部からのアクセス」を不可とするものであるが、掲載情報について直ちに外部流出を不可とするものではなかろう。外部流出を不可とするのであれば、それは当該情報流出が「鑑定評価に関する法律」や「地価公示法」や「個人情報保護法」に抵触する類のものに限られるのである。同時に倫理的に許されない情報流出も存在するのであろう。
 今回の掲示板情報掲載に関しては、書込情報の掲示板掲載是非はあるかもしれないが、それは専門職業家である書込者の自己責任である。閲覧者が情報流出させたとしても、事柄の種類・重要性からすれば、直ちに非難されるものか否かは検討の余地があるだろう。そこで管理者が直ちに掲示板を閉鎖した行為は頷けないのである。書込に問題があるとすれば、書込者に削除等善処を申し入れるべきであろうし、それでも書込者が継続掲載を望めばそのまま会員の閲覧に供すればよいのであり、そのことが書込者の意志に即することなのである。狼狽したごとくに閉鎖という管理者(鑑定協会執行部)行為は「オーウエルの1984年」を思わせる情報統制行為なのである。
 付け加えれば、鑑定協会のコンプライアンスというものの基本的姿勢が、このような行為にも現れてくるのである。
『追記』(08/04/20)
 コンプライアンス云々について、追記しておきます。
掲示板の閉鎖くらいでコンプライアンス云々とは大袈裟なとお思いの方も多いのでしょうが、W.W.WやiNetの本質を考えるまでもなく、自明のことなのです。
鑑定協会のWeb Site は、会員向けのものなどではなく、社会全般に向けての広報なのです。いわば、鑑定協会広報紙(無料)なのであり、街角で配られるホットペーパーやタウン情報誌と同列に位置付けられます。
 これに対して、会員専用サイトは会員向けの会報と考えるべきでしょう。会報は会員のみに配付されるものでありますが、特段の守秘義務を課せられるものではありません。ところが、会員専用サイト接続にIDとPWを要求することから何かセキュリテイの高いネットワークのように誤解します。
 でも専用ページ接続のIDとPWのセキュリテイなど子供だましです。これはREA-NETのアクセスセキュリテイと比較すれば、直ぐに判ることです。まして掲載情報について、倫理的な問題を別にすれば高度の守秘義務など課せられていません。鑑定協会が会員専用サイトに掲載する情報の大半は国交省など他のサイトで公開される情報です。同時に公益法人の業務行為全ては高度の情報公開性が求められるものであることも忘れてはならないことです。
 このように考えてみれば、「外部への情報流出が確認された」ことを理由に掲示板を閉鎖するという行為がいかなる問題かが理解できると思います。最初から存在しないならともかく、「理由にならない理由」をもって掲示板を(いわば、恣意的に)閉鎖すると云う行為こ潜む問題点が見えてきます。ことは、「表現の自由」にすら及ぶものです。
 W.W.Wの本質、iNetの本質、表現の自由の堅持、会員の意見表明の場保持などといった問題に無関心であり無認識でありすぎる行為だと指摘するのです。大袈裟だという批判は甘受します。しかし、多少は不都合でも、耳が痛くとも、広く会員の意見を受け止めようと云う姿勢が根底にあれば、このような行為は起きないと思われます。ブロードバンド・ネットワーク時代の鑑定協会の在り様というものを考えるときに、今回の(一見すれば些事にみえるが、本質的問題を内在させる)事件をとても悲しく思うのです。
 茫猿は数年前から、地価公示の情報セキュリテイ(Myシェルター使用)に比較して、地価調査の情報セキュリテイーが格段に劣ることを指摘し問題提起してきましたが、個々の評価員や分科会幹事任せであり、一向に改善される様子が見えません。このことも鑑定協会のコンプライアンス姿勢の為せることと思うのですが、如何なものでしょうか。
 茫猿も思惑はずれの四月ですが、鑑定協会もサイト掲示板閉鎖で火元を断ったつもりが、とんだ思惑はずれのようです。

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