国交省なかでも土地・水資源局傘下の審議会や研究会を注目しておく必要がある。 鑑定業界のなかでは、「あれは学者さんの言うこと、現実は違うよ。」とか、「まあぁ、ガス抜きだろうね。」などと軽視する方も少なくないが、ウオッチングという意味から、これら審議会、研究会などの報告書はとても重要であろうと考える。 そこで示された考え方の少なからぬものが数年後、早ければ一年後、二年後に何らかの姿を現してくるのである。
そういった研究会などを国交省応援団と称しては、いささか語弊があるだろうが、それでも「”敵(この場合は先方様くらいの意味)”を知れば、百戦危うからず。」と古来いうのである。 事務方が陰に陽に関与する、この種のリポートからは目が離せないのであり、それがインテリジェンス(情報戦略)なのであろう。
今回の記事では、不動産投資市場研究会を取り上げる。主管課は国土交通省土地・水資源局土地政策課である。
平成20年11月公表の報告書前文で国交省はこのように述べる。
国土交通省では、我が国の不動産市場へ投資を拡大することが、我が国の社会・経済にどのような意義・効果を有しているかを改めて整理するとともに、我が国不動産市場へ国内外から長期安定的な資金が流入するための方策について検討を行うため、日本の不動産投資市場に詳しい学識経験者等から成る「不動産投資市場研究会」を設置し、これまで計8回にわたって研究会を開催し、議論を行ってきたところです。この度、「不動産投資市場研究会報告書」をとりまとめましたので、別添の通り公表致します。
「不動産投資市場研究会報告書」(添付資料PDF1/5~5/5)を通読すれば、学者さんたちが鑑定評価とか不動産評価をどのように見ているのかがよく判るのである。
地価公示を取り巻く最近の状況も、国際標準に基づく不動産インデックス作りも、このあたりから始まっている。同じく国交省土地・水資源局土地市場課主管の「不動産リスクマネジメント研究会」も類似の立場からリポートを公表している。
地価公示に関して言えば、地価公示をインデックスとして捉えたときに国際標準にそぐわないと言うのがおおかたの考えなのである。 そもそも地価公示がインデックスたり得るかという疑問も呈されているのであるが、鑑定業界はまだ答えを用意していないように見える。
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