国交省組織改編

06/28 国土交通省の省内横断的な局の再編などを行う政令が閣議決定され、07/01より施行される。
鑑定業界との関連では、現行の土地・水資源局の土地分野と総合政策局の不動産業、建設産業分野を併せて土地・建設産業局が新設される。 国土インフラストック形成に関わる不動産業・建設産業行政と土地行政の一元化が図られる。土地・建設産業局内には、新たに不動産市場整備課を設置。不動産市場の整備のほか、国土利用計画法に規定される土地取引の規制などを担当する。


新しい組織図に拠れば、新設される土地・建設産業局は、総務課、企画課、土地市場課、地価調査課、地籍整備課、不動産業課、不動産市場整備課、建設業課、建設市場整備課が設けられる。不動産鑑定評価や地価公示を所管する現行の地価調査課は、土地・建設産業局に移管されるようだが、取引価格情報整備事業を所管するのは土地市場課なのか不動産市場整備課なのかはまだ不明である。
新スキーム・取引価格調査等に関わる鑑定協会の最近の動向が、性急であった背景には、この所管課組織改編があったのである。
今回の組織改編が地価公示や鑑定評価にどのような影響をもたらすかは、今しばらく状況を見なければ判らない。 従来は地価公示の枠組みのなかに位置付けられていた「取引価格動向調査(新スキーム)」が、どのように変わってゆくのかも現時点では明らかでない。
軽々な予想は避けなければならないが、土地・水資源局の土地分野と総合政策局の不動産業、建設産業分野の併合は、相当な影響が避けられないと読むのが妥当であろうし、しばらくは新しい地価調査課、土地市場課、不動産市場整備課の動向から目が離せないことである。
新スキームの行方と題する2011年6月23日付け記事の背景もまさにこの組織改編にあった訳で、所管課が大きく変わることにより、鑑定協会の意向などに関わりなく、新スキーム調査も地価公示も新しい時代に突入したといえるのであろう。 お気楽と評されるであろうことは承知の上で申せば、所管課の意向などに左右されない鑑定協会独自の立脚点確立が今以上に求められるといえるだろう。
今さらと云われようとも、もう一度次の三項目を自覚し直すことから鑑定士は始めなければならないと考えるのである。
1.新スキームの背景には個人情報保護法が存在するということ。【安全性担保】
2.不動産価格情報開示に関わる閣議決定が背景にあること。【情報開示要請】
3.基礎データは法務省提供データであること。【国民共有資産】
同時に大半の会員は忘れているか、認識すらしていないのかもしれないが、2003年当時に国交省が行った「取引価格情報の開示」に関わるパブリックコメント募集に対して、鑑定協会は、2003/08/29付けにて概略以下の意見書を提出しているのである。

 鑑定協会は、この意見書のなかで、A案(個別物件情報開示)に賛成と表明し、収集開示された取引価格の地価公示制度や鑑定評価制度への活用を求めている。また同時に、異常と認められた取引価格に関する調査権の付与を求め、「地価の番人」たる機能と権限の付与を求めている。

さて、この組織改編公表を受けて、先の新スキーム特別委員会(2011.06.20発)の説明資料を改めて読めば、その背景がよく理解できる。 すなわち、以下の記述について「国交省は斯くの如く考える」と前置してみればよいのである。
1.新スキーム特別委員会の目的と背景
(1)目的
・新スキームで収集した事例を一般鑑定で使用することについての整理を行う。
・鑑定評価制度の持続的な発展と信頼性の向上のためには、事例の収集・利用のための継続可能な体制の整備が必要。
・安全管理措置の徹底と閲覧料や閲覧制度について、利用の透明性を確保する。
・鑑定評価の技術向上のための調査研究への利用が必要。
・将来ビジョンの「新スキームを通じた事例情報の収集・管理・利用体制の整備」の実現と国からの「取引事例に関わる情報の保護と適正な利用及びその運用の透明性の確保等の取組みについてこれまでの実態を踏まえた改善案」の報告の要請に答える。
《ビジョン研究会の外部委員として、国交省担当官も関わっている。》
(2)背景と現状
・国民の制度への理解と信頼、事例収集の入口で国の関与(一次・二次データの提供)があって始めて取引事例の利用が可能となっているにも拘わらず、そのことに対する認識が低く、現状を放置できない段階に来ている(過去の士協会が中心となって収集していた時代とは置かれた状況が異なる)。
・士協会を通さない形で閲覧・事例の提供が行われており、情報の安全管理が危慎される(目的外使用、個人情報の保護)。
・現行の閲覧制度や閲覧料について協会の内外から様々な意見がある。
・利用と負担の公平性が確保されておらず、現状では将来的に制度の持続が困難。
・国との関係で一般鑑定に利用することについて整理がされていない部分がある。
・地価公示や新スキームの契約形態が変わった場合に事例の収集と利用が不可能となる恐れがある。
・地価公示評価員は地価公示の契約書(仕様書)と守秘義務により新スキームで作成した事例情報を都道府県鑑定士協会に提供することは出来ず、現状では本会・士協会いずれも事例を閲覧させたり閲覧料を徴収する根拠が整理されておらず、問題が生じた場合に事例の閲覧制度が出来なくなる。
【全文PDFファイルはこちらに掲載する。参考資料や添付資料は除いてあります。】

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