清水ゼミin岐阜

昨日は岐阜駅構内の「ハートフルスクエア・生涯学習拠点」で開催された、清水千弘教授による「不動産市場分析と統計学入門・清水ゼミ」に出席してきました。午後四時から八時までの4時間にわたるノートパソコンを利用した密度の濃い講義でしたが、眠気が襲って来ることもなく受講終了できました。

現在の清水教授はシンガポール国立大学不動産研究センター教授を務めておられますが、先生の日本帰国出張にあわせて岐阜県不動産鑑定士協会がセミナー講師をお願いしているものです。受講者各自がノートパソコンを持ち込み、各自のパソコンにインストールした「統計分析フリーソフト『R』」を用いて、『R』の操作に習熟すること並びに統計学の基礎を学ぼうと云うのがセミナーの趣旨です。並行して不動産価格指数の推計やヘドニック価格関数と不動産価格査定システム、さらには中古流通市場の活性化と専門家の役割などについても学ぼうと云うものです。

すでに、八月、九月に二回のゼミが開催されており、今回は三回目のゼミでした。『R』に実際のデータを読み込んで回帰分析を行い、回帰結果から何を読み取れるのか、読み取るのかというのが、今回のテーマでした。途中参加の茫猿は、ノートパソコンの持ち込みはなく、講義についてゆけるかどうか不安でしたが、プロジェクターで映し出される教授のPC画面を見ながら伺う講義は、とても興味深く、四時間はたちまちのうちに過ぎました。

当日の講義概要は以下のとおりです。《茫猿の聞き取りメモに拠るものであり、正誤は保証の限りではありません。》
1. データベースの作成について
統計解析はデータの作成がその工程の八割、九割を占める。正しいデータが作成できれば解析は終わったようなものである。不動産取引に関わる過去データの大半は紙ベースで保存されているが、これをデジタルデータ化して保管してゆくことが喫緊の大きな課題である。《その前作業として、正しいデータ作成マニュアルが求められるであろう。》

現在のデジタル化保存されているデータ《例えば地価公示取引事例資料》は、統計解析用のデータとしては利用し難いスタイルである。例えば所在地名などのデータに漢字等文字データが混在していること《都道府県・市区町村・町丁名 各コード化未了》、定性的データ《都市計画用途地域、街路方位、画地形状》について、正しくダミーコード化がされていないなどの欠陥があり、データを再整備しないと統計解析データとして利用できない。 逆に言えば、それらの欠陥データについてコード化或はダミーコード化が終われば解析作業の大半は終わっているとも云えるのである。既存の不動産取引データについてノーマライゼーション《データ全体の均一化》が必要なのである。

2. 要約統計量
要約統計量とは、標本の分布の特徴を代表的に(要約して)表す統計学上の値であり、統計量の一種。 記述統計量、基本統計量、代表値ともいう。 正規分布の場合は、平均と、分散または標準偏差で分布を記述できる。 特に最小値最大値について、異常値や外れ値の有無を発見することが大切である。

3. 相関係数の読み取り
独立変数間に非常に強い相関があったり,一次従属な変数関係がある場合には,解析が不可能であったり,たとえ結果が得られたとしてもその信頼性は低くなる。これを多重共線性という。相関係数を読み解き、多重共線性の有無・多少を解析することが重要である。また説明変数の相関について、現場にいる不動産専門家としての立場から実態に即応した解析が求められる。

4. 回帰分析の結果から
不動産取引データの回帰分析の結果、得られるものとしては、
① 不動産価格指数《インデックス》:時間ダミー法
② 価格査定モデル《価格予測値》:インピュテーション法
③ 比準表の作成 が挙げられる。《詳細は次回以降の講義》
以上の三項について、多重共線性の意味合いが異なるものであること、価格査定モデルについては細部検証の必要があること、また予測モデルでは層別化を行い構造変化の検証を行うべきものであること。《クラスター分析の必要性》

以上を教えて頂きましたが、半端な私の知識と理解力では「面白い」とは思いますが、全体像を的確に把握することはできませんでした。講義はまだ二回が残されていますから、及ばずながらも生涯学習の試みをささやかながらも続けてゆきたいと考えています。何よりも、学問として解析に耐えうる不動産データのあり方、統計学的解析《回帰分析・ヘドニックアプローチ》が不動産鑑定評価 に及ぼす影響などについて、考え続けてゆきたいと思わされました。

セミナーには岐阜県内鑑定士の他にも、滋賀県、三重県、愛知県から多くの不動産鑑定士が聴講しており、それらの鑑定士諸氏がそれぞれの地元のデータを解析した結果を持ち寄って、互いの結果を検証し合うことから、次の展開が生まれて来るであろうと考えます。清水教授の言によれば「取引データの統計学的解析は、業務効率と業務にイノベーションを起こす。」と言われます。このセミナーの次にもたらされるものに期待するのです。

私なりに総括するとすれば、解析結果を鵜呑みにすることなく、経験値などと照合する各数値の検証が大切であり、ローカライゼーション、層別化あるいはクラスター分析を的確に行うことが重要なのであろうし、其処にこそ地場に生きる不動産専門家の存在意味もあるのだろうと考える。別の表現をすれば、統計解析と云うツールを生かす為にこそ、不動産鑑定士としての視点が欠かせないのであろう。《鬼に金棒と云う表現もあり得るか?》

即ち、「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」なのであろう。思うと云うことは、不動産鑑定士としての当事者意識と言い換えてもよいのであろうと考える。もう少し付け加えれば、学んだことを自らの不動産鑑定評価 にどのように反映させるかが問われるのであり、自らの不動産鑑定評価 に止まらず組織全体の行動に如何に反映させるかが問われるのであろう。それこそが御多忙のなかを時間を割いて、ゼミに集まる鑑定士の為に講義して頂く清水教授のご好意に応えることに他ならないのであろう。

誰も居眠りすることなど無かった清水ゼミ。受講生が行き詰まる都度、個別サポートして頂ける教授の門下生の御支援も大きかったと思います。20151023shimiz-zemi

ゼミ終了後には、柳ヶ瀬を差し置いて活況を呈している玉宮町で懇親会が開かれました。会場店名は「喰なべ」と云います。鍋喰いかと思って行きましたら《たなべ》と読むのだそうです。でも提供されたメニューの一つには小鍋がありました。20151023tanabe

《追記》
「清水先生へお侘びします。」 講義中、私がしばしばスマホを開いていたのは、講義のなかに沢山出てくる専門用語や外来語がよく理解できないので、スマホの英和辞書を検索していたのです。決してFaceBookやTwitterへ投稿していたのではありません。お目障りだったでしょうが、お許し下さい。次回はMac Book Airを持参して、検索がお目障りにならないように致します。

ビッグデータに基づく、不動産価格指数や価格予測モデルは多くの民間企業において既に実用化されており、「鄙からの発信」前号記事「業界 vs iNetガリバー」に述べる価格査定モデルなどはその一例であろう。

国交省が実施している「不動産取引価格情報」では、三ヶ月後速報値と六ヶ月後確定値がある。速報値はアンケート回収結果について、GISを利用した属性調査を行って得た結果に基づくものであり、現地実査は行われていない。確定値は地価公示評価員《不動産鑑定士》による現地調査結果を踏まえたデータに基づくものである。 この両者に差異は認められないと云う結果が得られている。

講義終了後八時半から開かれた懇親会には「渡辺猛之参議院議員《岐阜県選出・議員運営委員会理事・国土交通委員会 委員》」にもご出席をいただき、様々なお話を承りました。盛り上がった懇親会に時の経つのを忘れていますと、気づけば時刻は十時半です。名鉄羽島線の新羽島駅《新幹線岐阜羽島駅隣接》行きの最終電車まで残り僅かです。慌てて名鉄新岐阜駅に向かい、かろうじて終電に間に合いました。《新羽島駅からは家人の出迎え車で帰宅です。》

《岐阜県不動産鑑定士協会前会長・久保輝氏のFBコメントより》
「分析できるデータをストックすることが、とても大切で、8割方の労力はじつはそこにある。」という事をさかんに清水教授が言って見えたのが じつは「キモ」と思いました。データが良くないと、いくらテクニカルに分析しても「ガベージ・イン→ガベージ・アウト」(ゴミを分析しても、ゴミの結果しか得られない)という 有名な統計標語がありますが、、、、まさに、その事でした。《garbage in garbage out :不正確なデータを入力すれば,不正確なデータが出力される。出力の質は入力の質次第だという経験則。》

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