北海道会と姉妹盟約十周年

2016.03.18 午後、北海道不動産鑑定士協会と岐阜県不動産鑑定士協会の姉妹提携盟約締結十周年を記念する合同研修会が、岐阜市内のホテルグランヴェール岐山にて開催されました。北海道から岐阜市までお越しいただいた北海道会の十数名の皆様、遠路有り難うございました。

盟約締結当時の「鄙からの発信」記事はこちらです。
姉妹提携の盟約 ( 

《鑑定評価に真摯な両会は》十周年記念とはいいながら、祝賀行事は両士協会会長挨拶だけで、約三時間三テーマの研修講義が途中数分間の休憩をはさみながら進められました。歓迎の挨拶をする岐阜会豊田会長20160318toyota姉妹盟約のさらなる発展を確信しますと挨拶される北海道会木野村会長。木野村氏は怪我を押して岐阜までお越しいただきました。20160318kinomula御来岐いただいた北海道会の皆様《申し訳ありませんが、居合わせられなかった前川氏や筒井氏などの数名様は写っていません。悪しからず。》20160318hokkaido
《研修テーマ1》
士協会地図システム P-MAP について
講師:岐阜会土地情報委員長・水野  亨氏
《研修テーマ2》
岐阜会における統計学研修について
講師:岐阜会前会長 ・久保  輝氏
《研修テーマ3》
他団体との連携活動報告(住宅ファイル制度等)について
講師:北海道会調査研究委員長・筒井大輔氏20160318tutui
講師:北海道会前会長・宮達隆行氏20160318miyatati

《1.士協会地図システム P-MAP 》
P-MAPはPrice-MAPの略称と伺っています。REA-MAPの後継事業として日本不動産鑑定士協会連合会において、公的評価にGISの導入を検討した結果、公的評価作業《主に固定資産税標準宅地評価、並行して公示・調査・相評にも普及を目論む》に電子地図を利用することにより、作業の効率と精度の向上を支援することを目的として開発されたシステムである。

地図情報はネットワーク配信を原則とし、各種公的評価地点情報をサーバにストックし、ネットワークを介して会員パソコンに提供する。一部に限定されるが作業中データの表示も可能であり、分科会等のグループ協議やデータ共有に資するものである。

業務上のメリットとしては、①標準宅地間の価格バランスのビジュアルな検討、②分科会等作業グループ内での情報共有、③計測での活用、④標準地点検及び各種評価情報の蓄積と共有などがあげられる。 また市販システムを利用するものでなく独自開発システムであることから、導入コストが比較的低額であり、地図の更新、情報の共有、システムのシンプルさに特徴がある。士協会独自の機能拡張も容易である。 同時に公的評価依頼者へ評価結果あるいは評価過程をビジュアルに説明することが容易であり、ひいては評価への信頼性を醸成できるものと予想されている。

(注)以下、各リポートは茫猿の聞覚え及びメモに拠るものであり、文責は総て茫猿に帰するものである。聞き取り過誤、書き取り過誤があれば報告者各位にお侘びします。

《茫猿の独り言》
REA-MAP構築に参画したものとしては、GISが実用段階に入っていることをとても嬉しく伺いました。しかしながら、2012年当時の状況を振り返りながら、現況を拝見しますと、更なる飛躍を期待するものです。

鑑定評価にGISを導入する一つの目的は、評価過程や評価結果をテキストデータのみにとどまらず、ビジュアルに表示すると云うことがあり、岐阜会の現行事業はその目的にかなうものであり、さらなる展開が期待されます。 例えば各評価地点の対前年比変動率を「ヒートマップ」にて表示すれば、視認性や一覧性はさらに高まるであろうと考えられます。《ヒートマップについてREAMAPとMANDALA  

同時にGIS導入のもう一つの目的は、地理情報すなわち緯度経度情報を縦横に駆使することにあります。 評価対象地並びに取引事例地等の属性情報を自動的かつ統一的に取得するだけでなく、評価要因としての属性情報の地域に即応した入れ替えが容易に可能となることに大きな意味があると考えます。《属性情報とは、駅・商業施設・公共施設等の名称並びに接続距離、用途地域や学区図などの領域情報であり、今やそれらの情報は緯度経度情報を持つものとしてネットに公開されている。》

《国土交通省が毎月公表している不動産価格指数(住宅)は、当初は地価公示評価員が入力する属性データを基礎資料としていましたが、今やGISによる自動取得データを基礎としていると伺います。》

GISを利用する鑑定評価の将来形は、取引価格情報を基礎としてGISにより評価対象地域に即応した属性データを取得し、統計解析手法を用いて数値比準表を作成して試算結果に至ると云う工程が考えられます。この評価工程を辿ることにより鑑定評価はより科学的になると同時に説明責任を的確に果たすものになるであろうと考えます。 固定された《調査要因の全国統一という不思議さ》要因を基礎とする鑑定評価から、速やかに脱却すべきと考えますが、如何なものでしょうか。

《2.統計学研修》
シンガポール国立大学不動産研究センター 清水千弘教授を講師にお招きして、何回かの統計学清水ゼミを開催していることについての講義です。《関連記事はこちら:清水ゼミin岐阜  

《茫猿の独り言》
会員鑑定士の統計解析能力を高め、取引価格情報を基礎として、地方における独自解析を施して、地方の不動産価格指数を求めることを目的とする事業であり、一定の成果を上げつつあると伺いました。実際取引データを基礎とする岐阜県地価指数が公表される時期もそれほど遠くないと伺いました。

願わくば、この統計解析結果を基礎として数値比準表を作成し、前掲のGISデータとリンクすることにより、取引価格 ➡️ GISによる属性情報取得 ➡️ 統計解析 ➡️ 数値比準表 ➡️ 試算価格 ➡️ GISによるビジュアル表示、という一連の評価工程が実現することを期待します。

《ご注意》以上の意味するところは、ネットに溢れている自動化価格査定などを意味するものではない。断じてないのである。半自動ですらない。統計解析には基礎とする取引価格情報データの分析整理が必要なのである。

《統計解析にはこの作業が必須かつとても重要である。基礎データの分析と整理を終えれば解析作業はほぼ終了すると云っても過言ではない。》

この不動産取引価格情報についての分析整理は不動産鑑定士ならではの作業である。 また、価格形勢要因分析及び要因の入れ替え作業、数値比準表作成等は鑑定評価固有の作業である。不動産鑑定士が取引価格情報に加えて、GIS並びに統計解析のツール及びノウハウを手に入れると云うことは”鬼に金棒”なのである。《このあたりは、清水ゼミin岐阜  》を参照。》

数値・数量化比準表 

《3.他団体との連携活動報告(住宅ファイル制度等)について》
北海道会においては、JAREA-HASを活用して北海道における地域特性を反映した価格を査定するための研究を行っており、今年度は北海道既存住宅流通促進協議会から実証実験を受注し、成果品を納入した。

今後は宅建業界や関連資格者団体との連携をさらに進めることにより、地方都市への定住促進やリバースモーゲージへとつなげてゆきたい。寒冷地であることから、基礎の凍結深度、断熱性、凍害、セントラルヒーテイングなどの独自仕様に対応したJAREA-HASのローカライズも課題として浮かび上がっている。さらには「住宅ストック維持・向上促進事業」への対応も喫緊の課題であると考えている。《筒井氏講義》

北海道不動産関連団体協議会《宅地建物取引業協会、全日本不動産協会、税理士会、司法書士会、土地家屋調査士会、不動産鑑定士協会》は、不動産の流通活性化を通して社会に貢献してゆくことを目的として設立された。年間数回の協議会を開催して、様々な課題について協議を重ね、その幾つかを行政機関や一般社会に提言している。今回の実証実験の受託も容易に実現できたものではなく、長い連携の歴史の成果である。《宮達氏講義》

《無念なり懇親会》
研修会終了後は、場所を柳ヶ瀬のBRASSERIE malkinに移して懇親会が開かれた。残念ながら茫猿は翌日に叔父の七七忌を控えていることや、夕刻から雨天となり夜の雨中運転は目が不自由なことから自信がないので御無礼しました。北海道会の皆様、失礼しました。そして多数の皆様の御来岐有り難うございました。

《閑話休題》
ところで、姉妹提携はどうして兄弟提携と言わないのだろうか、不思議だねと考えた。Wikipediaなどなどを検索してみたら、ラテン系外国語特有の歴史的背景が存在するのだと云う。なるほどね。

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