我輩は駅である -1-

我輩は駅である。名前はまだ無い。美濃国の鄙里に誕生し、今も日々成長を続けている鉄道ジオラマの基幹駅である。我輩の主人は、オーナーとか主宰者とか自称しているようである。我輩にとっては折々のメンテナンスを欠かさないでいてくれれば、それ程頻繁に顔を見せてくれなくても構わない。でも三日に一度は顔を覗かせて欲しいものである。

主人は”申”年生まれの”茫々”、即ち茫猿と自称しているようだから、茫猿と呼ぼう。我輩のことはしばらく明日開(アスカイ)駅とでも呼ぶことにしよう。明日開とは茫猿が長らく身過ぎ世過ぎの糧を得る仕事としていた不動産鑑定評価の、その黎明期を飾る名著「不動産の鑑定評価に関する基本的考察(櫛田光男 著)1966年刊行」中に記されている名句『今日の不動産の価格は昨日の展開であり、明日を反映するものである』の、”明日”と展”開”より頂いている。また、昨日と反映からも昨映(サクエイ)駅を頂いている。

展開と反映は70年代には鑑定士人口に膾炙し、受験講義などでは頻繁に使われていた名句であるが、我輩には詳しい意味は不詳である。門前の小僧駅であるから、多少は耳に馴染んでいるが生齧りを語るのはよそう。この名句は岐阜県不動産鑑定士協会を広報するサイトのトップページを今も飾っている。

この書籍は絶版となって久しいが、アマゾンなどでは古本が4,000円〜9,000円で出品されているし、国会図書館で閲覧にも供されている。我輩にとっては、日本不動産鑑定協会が復刻しようとしないのが不思議なことに思える。なお茫猿の書棚にはその一角を今も本書は占めている。

ジオラマ、中でも鉄道ジオラマには物語が必須であろうと我輩・明日開駅は考えている。制作者の鉄道への思い、関わる歴史などが編み込まれていなければと考えている。物語を持つジオラマは自ずと歴史の深みを反映し、事後の展開を広くするものと考えている。

さてそれでは、茫猿鉄道2020第八期ジオラマの物語を語ろう。明日開駅は茫猿鉄道のNゲージ本線の基幹駅である。N本線は周回エンドレス路線だから明日開駅もターミナル駅(終着駅)ではない。並走するHOゲージ線路には列車離合のための待避線はあるが駅舎は無い。基盤スペースの狭さと部品資材が高価なせいであるが、HO駅設置は茫猿ジオラマの将来的課題でもある。《写真はとある日の明日開駅》

Nゲージとは鉄道模型の線路規格の一つであり、線路幅が9mmすなわちNine mm、だからNゲージ(規格、1/150)である。鉄道模型規格にはHOゲージ(軌道幅16.5mm、Oゲージの半分/halfに由来する)、Oゲージ(軌間32mm、名前は0番ゲージが由来である)などがあるが、住宅事情などから日本ではNゲージが主流である。

Nゲージにしても常時展開する為にはそれなりのスペースが必要であり、古びた田舎家や広壮な戸建住宅でもない限りは家族の理解を得ることは難しい。幸いにして、我輩は老夫婦のみが住まいする鄙里の古びた住宅に生まれたから、常設されている。その我が鄙里にしてからが、我輩はいっとき納屋の二階に追いやられたし、最近は解体撤去収納されていた。

明日開駅には外回り線と内回り線が発着するが、本日は内回り線を語ろう。内回り線はループ線である。ループ線とは螺旋状に敷設した線路である。山岳地の急傾斜路線などに登坂路線として建造される。肥薩線や土佐くろしお鉄道などに存在する。なお、外回り線は単純な周回線路だが待避線を持っている。内回り線に待避線は存在しないが、これもスペースの制約からである。

それらNゲージ、HOゲージ路線敷設の経緯や、隧道の有為転変、路面電車の軌道敷敷設の経緯などは、過去記事「茫猿鉄道2020-1〜-4、第八期ジオラマ制作の記録」などに詳しいから此処では省略する。

我輩は駅である -2- へ続く》

 

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