森友学園案件に係る大阪府不動産鑑定士協会の調査報告書を何回も読み込み、痩せ衰えた脳細胞を振り絞り、疲れた茫眼に鞭打って2件の記事を書き終えたところで、追記補充記事を掲載しなくてはと思い立ったのである。
それは、とかく世慣れ事勿れ風潮が蔓延する昨今の日本社会において、大阪会執行部が示された勇気ある行動に、敬意を表さなければと思い立ったのである。
地価公示(国交省)、地価調査(都道府県)、固定資産税標準宅地評価(市区町村)、相続税標準地評価(国税局)という四種の公的評価を毎年継続して受託する不動産鑑定業界である。他にも様々な業務依頼を受けており、官公庁との結びつきが深い業界であることから、いわゆる忖度や斟酌も避け難いところがある。森友学園案件の一方の当事者である近畿財務局にしても、国有財産売却等に関しての経常的鑑定評価依頼先である。
今回の第三者委員会立上げには様々な葛藤が有ったであろうと推察できる。そして調査報告書を受領後、間髪を容れずに全文公開するには勇気を要したことだろうと思われる。時間をおけば様々な夾雑物が介在したであろうとも推察できるのである。
それらの背景が有りながら、大阪会が第三者調査委員会を立ち上げて調査報告を依頼し、受領した報告書を直ちに開示した行動力は敬服に値するものである。大阪会会長はじめ執行部の方々の勇気と矜持に深甚の敬意を表します。
次は近畿不動産鑑定士協会連合会と日本不動産鑑定士協会連合会の出番であろう。大阪会の開示する調査報告書を如何に引き継ぎ稔りあるものにしてゆくかが問われている。不動産の専門職業家としての不動産鑑定士が、その存在意義を問われているとも云える今回の案件である。如何に斯界一丸となって大阪会の問い掛けに応えてゆくが問われている。それはそのまま不動産鑑定士が”社会の木鐸”たる位置を確立できるかに繋がるものであろう。
大阪会は報告書の開示と並行して「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書の受領と今後の対応について」と題する文書を公表している。
その中で、『当協会は、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会(以下、連合会)と協力のうえ、以下の事項について取り組んでまいります。』と述べて、四項目を明らかにしている。いずれも大阪会単独では大きな成果が得難い事項である。近畿連合会や日本不動産鑑定士協会連合会の真摯な努力が期待される。
(1) 提言を踏まえ、不動産鑑定士が自らを省み、改めて業務実施に対し、鑑定評価基準等の遵守、価格等調査業務の受任に当たっての手続きの遵守等、不動産鑑定士の倫理、資質の向上に努めます。
(2) 不動産鑑定評価基準やその解釈に関する統一的見解は、当協会のみではなく、不動産鑑定業界全体に関わることであることに鑑み、以下の点について、連合会において検討すべきであることを申し入れます。(以下については、記載省略)
(3) 依頼者・利用者に対して、不動産鑑定評価制度等についての理解を促進する活動を行ってまいります。
(4) 国、地方公共団体の価格等調査業務の発注にあたっては、鑑定評価の基本的事項の確定に支障が生じない受任者選定手続きの遵守を要請してまいります。
「森友案件に係る鑑定評価&調査報告(1) : 2020年5月20日 」
「森友案件に係る鑑定評価&調査報告(2) : 2020年5月21日 」
『以上、2020.05.21』
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