森友案件に係る鑑定評価&調査報告(4)

 此処暫く低空飛行を続けていた当サイトのセッション数が、05/20以来急に倍増している。世捨て人同然の鄙の茫老が綴る埋もれサイトが、何故今頃になって世間の耳目を集めているのか。表題記事の連載が斯界の注目を集めているのだろうと云うこと以外は考えられない。そこで更に考えてみた、そして烏滸がましいとは承知の上で、業界の自浄復活と活性化を願って、この(4)記事を掲載する。

一、X、Y 鑑定評価と土地売買契約と報道
 以前から森友学園事件と鑑定評価の関わりは当然に承知していた。鑑定評価書がそれなりの役割を果たしていることも承知していた。不思議だったのは、時価9億円強の不動産を8億円強(埋設物撤去費相当額)差し引いて1億3千4百万円と云う額で売買契約締結に至った経緯である。

 当時の新聞記事等ではイマイチよく判らなかったが、2018/04/09付け日経記事によれば、『学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、財務省が同学園に口裏合わせを依頼していたことが明らかになった伝える。約8億円とされる地中ごみの撤去費用を学園側が負担することで売却額を差し引いたとする政府側のこれまでの根拠が崩れることになる。』

 大阪会調査報告書では、『Y鑑定評価書の「地下埋設物撤去及び処理費用を考慮しない鑑定評価額 956,000千円(正常価格)」と「近畿財務局が提示した地下埋設物撤去及び処理費用を鑑定評価額に反映した場合の意見価額 134,000千円」を参考として、近畿財務局は森友学園と土地売買契約を締結する。』とある。

 2017年3月23日には国会で森友学園代表の籠池泰典氏への証人喚問が行われるなど、2017年当初よりこの問題についての報道は加熱していた。国会では安倍総理が「安倍昭恵夫人が名誉校長に就任し、安倍晋三記念小学校名義で寄付が募られていた」等々を巡って、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁した。

二、「鄙からの発信」の関連過去記事
 当時から茫猿は幾つかの事柄を疑問に思っていた。国有地の払い下げ問題であるから、当然に不動産鑑定評価が背景に存在するであろうに、鑑定業界は何故音無しなのだろうか。地元大阪府不動産鑑定士協会は何故に沈黙しているのだろうか。

『2017/03/19 記事《森友学園を巡るテンヤワンヤ》』
表題「気塞せりなことばかり」記事は《森友学園を巡るテンヤワンヤ》と題して、以下のように記している。

 国有地の払い下げ疑惑が本筋であり、籠池理事長のパフォーマンスや安倍総理夫人の名誉校長就任や寄付金問題などは末節である。道路を挟んで豊中市へ野田中央公園用地として売却した国有地9,492㎡の売却価額は14億2300万円である。《単価は150,000円/㎡:正面路線価145,000円/㎡》

 森友学園の小学校予定地は野田中央公園とは道路を挟んで西側に位置する。名神高速道路との位置関係も相似している。評価格9億5600万円《8,770㎡:10,9000円/㎡》からゴミ撤去費8億円強を控除した1億3400万円で売却したという。当初価格にしてからが、道路接面条件が異なるとは云え公園用地と比較すれば随分と安い価格である。

平成27年分財産評価基準書・豊中市42100

 当初価格の適否、ゴミ撤去費の積算基準、異常に速やかな払下処理の経緯、などなど糾されなければならない事柄が多いのに、事件は本筋を逸れて三面記事的パフォーマンスに堕ちている。総理夫人寄付金にしてからが、受取を辞退された講演料を付け替えて寄付金と置き換えたという怪説もある。鬼の首を取ったようにハシャグ野党議員も踊らされているのでなければよいけれど。《記事引用終了》

『2018/03/10 記事《近畿財務局職員自殺》』
 次いで、表題「寒緋桜開花」記事は《近畿財務局職員自殺》と題して以下のように記している。

 2016年6月に鑑定評価額から約8億円を引いた1億3400万円で大阪府豊中市の国有地が森友学園へ売却された。当時、近畿財務局の上席国有財産管理官で、森友学園と交渉にあたり、昨年秋以降は病気を理由に休んでいた職員が自宅で自死されたという。決裁文書書き換え問題に関して、覚悟の上の自死とは思えない。役所や報道など様々な圧力に抗しきれず、心も体も病んだことによる自死であろう。決裁文書起案の現場にいる職員の自死はとても悼ましいことである。

 時を同じくして佐川国税庁長官が辞職した。麻生財務大臣は昨夜、記者会見を開き、「佐川氏から『理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議に混乱を招いた』こと」などを理由に辞任の申し出があったとし、「行政への信頼を損なった」として「減給20%3カ月」の懲戒処分を付した上で辞任を認めたと云う。

 適材適所の人事と安倍総理が国会で答弁し、国税庁長官としても理財局長としても適任だと麻生財務相が胸を張る佐川国税庁長官を、『理財局長時代の国会対応を理由に』懲戒処分の上で辞任させるなど理解不能な話である。決裁文書書き換えの証人は自死し、国会説明の責任者は懲戒処分を受けて辞任した。おぞましい、とてもおぞましい幕引き劇の幕開けである。《記事引用終了》

三、業界の自浄を妨げたのは
 2017年3月から現在に到るまで疑問だったのは、多分、地元大阪少なくとも近畿圏在住の不動産鑑定士が関与しているだろう不動産鑑定評価書が関わる事件なのに、どうして大阪府不動産鑑定士協会も近畿会も日本不動産鑑定士協会連合会も沈黙しているのだろう。鑑定評価への疑念が渦巻いているのに何故黙っているのか、それは茫猿が常に説いている『疚しき沈黙(心痛む沈黙)』ではないのか。

 その疑問が解けたのは、大阪会が依頼した第三者調査委員会が提出し、大阪会が即刻公開した調査報告書を読み込んでからである。鑑定評価そのものの疑問は報告書を読み込むに連れて多くが解けたが、それでも解けなかったのは「調査委員会の立ち上げが2019年11月22日」であり、2017年3月19日の「鄙からの発信」当初記事から遅れること30ヶ月である。この間、大阪の鑑定士諸氏は何をしていたのだ。

 報告書を数度読み込んでもその疑問が解けなかったのは、ことがZ鑑定評価書に関与した『C不動産鑑定士』に原因していたからである。茫猿はZ不動産鑑定評価書を軽視していた。即ち、森友学園が依頼した評価書であり、2016年6月20日 売却契約後の2016年8月10日にZ鑑定事務所より森友学園に提出された評価書でもある。担保目的であれ、学校設立審議用であれ、X 、Yなどと比較して、高値水準ではと疑われるが事件本筋とは関係無い。
Z鑑定・更地単価 148,000円/㎡ (2016/08/01、更地独立鑑定評価)
X鑑定・更地単価 109,000円/㎡ (2015/01/01、除却費考慮)
Y鑑定・更地単価 109,000円/㎡ (2016/04/01、埋設物考慮外)

 そう思っていたから、調査報告書39頁「4.対象不動産に関与した不動産鑑定士による鑑定評価の是非について」を読み流してしまった。「国有財産近畿地方審議会の委員である不動産鑑定士による鑑定評価」も注意を払わなかった。何故なら茫猿は岐阜県在住であり、東海財務局の所在する愛知県名古屋市内在住者とは異なって国の地方ブロック機関との御縁は随分と薄いのである。

 ところが、某日某所某氏よりSMSが届いた。
『情報通の茫猿さんも”Cさん”をご存じない!!!』
其処で、改めて報告書を読み直し、「国有財産近畿地方審議会委員」なる文言に着目したのである。

(注) 直近の国有財産東海地方審議会委員名簿 《不動産鑑定士M.h氏》 
(注) 直近の国有財産近畿地方審議会委員名簿 《不動産鑑定士M.m氏》
 東海審議会委員名簿に掲載される不動産鑑定士M.h氏は連合会中部区選出の前常務理事、近畿審議会委員名簿に掲載されるM.m氏は同じく近畿区選出の連合会現常務理事である。共に地域会の会長等要職役員で且つ連合会常務執行役員歴任である。平たく言えば地元並びに全国の有力者なのである。他の地区までは調べていないが、地方財務局とはいえ国の機関の審議会である。財界、学会、報道関係、専門職業家、いずれも錚々たる面々が名を連ねている。

《ご本人方は此の様な引用は御不快かもしれないが、ご寛恕ください。 と云うよりも、調査委員会立ち上げに少なからずご尽力頂いただろうと拝察しております。今後も大阪会会長の声明実現にご支援頂けると期待しています。》

 そうなのである。Z鑑定評価に関与したC不動産鑑定士は、事件当時に地元組織並びに全国組織における有力役員なのである。当然、地名度も高い。2015年〜2017当時の国有財産近畿地方審議会委員名簿はこちらのPDFファイルに記されている。

 名簿に記載される”K不動産鑑定士”は、茫猿の記憶が間違いなければ、近畿不動産鑑定士協会連合会の会長や日本不動産鑑定士協会連合会の副会長などを歴任されている。平たく言えば”浪花のお歴々”の一人と云うことでしょう。

 調査報告書によればC氏、審議会委員名簿によればK氏が、大阪会調査委員会の立ち上げに反対したか、妨害したかは詳らかではないが、少なくとも積極的に賛成したとは思えない。それ以前に鑑定業界地元役員諸氏の多くが大いに忖度したであろうことは容易に推量できる。だから30ヶ月もの間、第三者委員会の立ち上げは見送られていたのであろう。

 調査報告書のC氏、審議会委員名簿のK氏、実名を上げても良いのだが、調査委員会には一般的に云う調査権限が与えられていないので、『報告書が全て真実とは限らないし、採用資料の適否及び正否、証言の適否』等々があり得るだろうし、C&K氏にも言い分というものがあろうと考えるから、記事では仮名を通す。尚、C氏は調査委員会のヒアリングに応じている。

五、鑑定業界の自浄能力と活性化
 Z 鑑定評価に関与したC氏が、顧みて些かも疚しいこと無しであるとしても、お立場と云うものがある。鑑定評価依頼者である森本学園が何も語らなくとも、鑑定評価を依頼される直前の2016年06月20日には国有財産売買契約が締結され、買い戻し特約と共に登記されていた。その後に鑑定依頼を受けたC氏は、当然の如く登記簿を閲覧したであろうから、此の売買に介在する事情を知り得たものである。

 長年の豊富な経験を有する練達堪能な不動産鑑定士であるC氏は、依頼者との面談と登記簿等閲覧を通じて事情を察知し、自らが国有財産近畿地方審議会委員である立場に照らせば、例え事後であるにしても国有財産処分関連不動産に関与することには慎重でなければならないと承知されていたと推量できる。《立場からすれば、近畿財務局への問合せも可能だったことであろう。》

 C氏は調査委員会の事情聴取に応じられたとのことであるが、「李下に冠、瓜田の履」の箴言もある。評価依頼を受託すべきではなかった。受託したとしても、登記簿を通じて知り得る直前の売買契約金額と更地独立鑑定評価額との大きな差異について、付言して然るべきであった。

 さらにZ鑑定評価書は 4.鑑定評価の依頼目的等 (2) 依頼者以外への提出先等で以下を付言している。 「後日、本鑑定評価書の依頼者以外の提出先若しくは開示先が広がる場合、又は公表する場合には、当該提出若しくは開示又は公表の前に当社あて文書を交付して当社および本鑑定評価の担当不動産鑑定士の承諾を得る必要がある。」

 此の様な口止め付言が何処まで有効なものか、茫猿は寡聞にして知らない。不動産鑑定評価書なるものは、交付してしまえば後は依頼者の意志の侭であろう。複写物をどの様に配布しようと関与鑑定士が止め得べきもなかろうと考えている。

 それはさておき、問い質されるのは2017年3月〜2019年10月の間の大阪府不動産鑑定士協会の役員並びに会員諸兄姉である。地元で当然に事情を知り得る立場にいながら、各位は沈黙を守り通されたのである。様々な場で話題になり”要調査”の声もあったことだろうにと思われる。

 でも結果論として世間の耳目を集めた籠池氏国会喚問(2017.03.23)以後、2019.10.30まで大阪会の役員及び会員諸兄姉は”大いに忖度”し、”疚しき沈黙”を守られたのである。物言えば唇寒し、長い物には巻かれるのが大人の有り様、人の噂も四十五日、などと首を竦めて嵐の過ぎ去るのを待っておられたことでしょう。

「為政者が悪しき為政者であれば、庶民も愚民とならざるを得まい」と諦めていては何も変わらないので有り、不動産鑑定業界が二十年いや三十年、地価下落を通じて退潮の一途であると嘆く前に、業界を取り巻く環境が「地価上昇や公共事業満載」の時代から「地価下落、公共事業は新規投資から保守維持管理」の時代に入ったのである。同時に社会の根底を揺るがす「少子高齢化」が急速に進んでいる。

 そんな変化する時代に、疚しき沈黙を守り、殻に閉じこもり、地価公示の事例資料を墨守する姿勢でいては、業界の自浄復活も活性化も計り得ないと考えます。些か言い過ぎたと思っています。何かもの申したいだろうに何も申せない方々に対して申し訳ない心地もします。でも敢えて再度申します。皆様は「疚しき沈黙」でした。そして、多分事情を知り得たであろう当時の連合会役員諸兄姉にも同じく「疚しき沈黙でした」と申し上げます。

 1999年4月当時の鑑定協会会長選挙に際して、茫猿が全国の会員に『パラダイムを転換しようと問うた三カ条』が有ります。機器やシステムや周辺環境などは20年の間に大きく変わりましたが「問うた骨子或いは趣旨」は劣化していないと考えますので、再び読者諸兄姉に問います。
(1)インターネットを基軸にした会員間の有機的ネットワークの構築
※有機的に意味が有ります、ナレッジマネージメント形成が目標。
(2)土地センサス等、土地情報基盤の整備
※米櫃の飯の種は自らが開拓し管理する、土地センサス構築が目標。
(3)地理情報システムや数値比準表の基盤整備
※地理情報と取引情報全数の結合が目標。
以上の三項目についての詳細は、此のサイトで折に触れて様々に語っています。カテゴリーなどで検索してお読みください。古びた表現も有りますが、目指す処をご理解ください。

 今日はここまでとします。しばらくしてさらに続編が書ける様でしたら、(5)を掲載します。いまは斯界の自浄復活と活性化を願って、鄙里に咲く白い花を幾つかお目に掛けます。新型コロナ騒ぎの最中ですが、読者諸兄姉が白い花に眼を癒し明日の鋭気を養われることを願います。

 同時に連合会役員諸兄姉には『公益社団法人大阪府不動産鑑定士協会 会長 関野 肇 氏の声明書』趣旨に、速やかにお応え頂きたいと期待します。

 この季節に鄙里の白い花の極め付けは大山蓮華(オオヤマレンゲ)と沙羅双樹であるが、共にまだ蕾が固い。 さて、M.K氏がFBで 「with AI、withコロナの時代をいかに生きるべきか、思索に充てたいもの。」と述べていた。茫猿はフォローコメントして曰く「with AI、with COVID-19の時代とは《0 or 1 デジタル》と《証知生死即涅槃》と云うパラドックスをいかに生きるかであり、混迷と矛盾のなかに灯火を探すことで有りましょう。」と書きました。《 風は薫るけれど 投稿日: 2020年5月5日》

 新型コロナ感染症は人の社会の矛盾を顕にしました。 感染蔓延を防ぐには互いに助けあわねばならないのに、感染を防ぐ為に他者との距離を保つことを求められる。ステイホームを求められるが、富める者は広い住まいで猫を抱き音楽と珈琲を楽しみ潤沢に宅配便を利用する。富まざる者はステイする住居の家賃支払いに苦しみ、日々の糧を得る為に宅配業務に勤しまざるを得ない。非常事態であればあるほど、社会の矛盾はその裂け目を大きくして我々に突き付ける。

 こんな非常時には、不動産鑑定評価はその存在感が薄いかもしれません。それでも次の飛躍のために力を蓄える時で有りたいと考えます。業界の自浄力を高めることと活性化を図ることは矛盾するものではなかろうと考えます。自浄力を高めることが活性化を図ることなのであろうと思われます。

森友案件に係る鑑定評価&調査報告(1) : 2020年5月20日 」
森友案件に係る鑑定評価&調査報告(2) : 2020年5月21日 」
森友案件に係る鑑定評価&調査報告(3): 2020年5月21日

関連の記事


カテゴリー: 不動産鑑定 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください