磐越西線物語

 磐越西線をご存じですか。東京以北の方はご存じでしょうが、以西の方で磐越西線をご存じな方は、相当の鉄道マニアか旅行マニアでしょう。福島県の郡山から会津若松、喜多方を通って新潟に結ばれるローカル線です。郡山からは、線名の通りに磐梯山麓を、雄大な磐梯山を車窓右に猪苗代湖を車窓左に通過して会津若松に至ります。


 私が、磐越西線の乗客となりましたのは、4月の半ばのことでした。郡山に一泊して、翌日午後4時までに新潟に到着すればよいという旅程でした。JRの駅改札口では、郡山から新潟へは「東北新幹線大宮乗換、上越新幹線経由で新潟」を勧められましたが、少しばかり鉄道に興味がある私は、磐越西線を選択したのです。この線は郡山-会津間は特急が3往復走っていますが、郡山-新潟(正確には新津)間では直通列車はなく、快速列車の乗り継ぎになります。
 8時30分郡山発「快速ばんだい号」の乗客となった私は、間近に眺める磐梯山の雄大さに見とれていました。車窓から見える山麓一帯は、都会の近郊に溢れる雑多な広告看板や品のない建物のような夾雑物が全くといってよいほど見られず、美しい鄙の景色でした。(山麓にスキー場があるのはやむをえないとして、バブル名残のコンクリート建造物が2棟ほどは見えたのが惜しまれましたが)
 9時44分に会津若松に着きました。乗換の「快速あがの号」は10時50分
発ですので、1時間の余裕があり、しかも予定した若松折り返しのあがの号は途中で事故にあい1時間の延着でしたから、桜の美しい鶴ヶ城や白虎隊の悲劇を偲ばせる旧跡を駆け足で巡るには十分な時間でした。最初から延着が判っていたら喜多方で少し速いラーメン昼食を取ったのにと思ったことです。
 あがの号に乗り継いで喜多方を過ぎ、「山都駅-やまと駅」で離合列車の通過待ちをしているときのことです。車窓にハラハラと散るものがあります。一瞬何が舞っているのか判らず、フォームに降り立ちますと、それは山桜の巨木が落花爛漫の情景でした。山あいの人影もないフォームに「しず心なく花の散るらむ」風情です。
 新潟県境を越える辺りからは阿賀野川の上流沿いに列車は走ります。車窓には遠く、磐梯山には既に無かった雪を深く抱いた飯豊山を眺めながらの道中でした。
磐越西線の沿線の風景に匹敵する路線は他にも数多くあることでしょう。でも、磐越西線の特徴は路線の両端が新幹線に接続していると云うことです。東北新幹線郡山駅と上越新幹線新潟駅に両端を接して、日本の鄙の原点ともいえるような景色を抱えている路線はそう沢山はありません。桜の頃、新緑の頃、盛夏もまたよし、紅葉は多分最高でしょう。雪の中の磐越横断も風情有りと想像します。最近は磐越西線物語というSLも運行されているようです。機会があれば、是非とも再度ローカール線の乗客となりたい磐越西線でした。
「ご注意」、駅弁や車内販売はありません。弁当と飲み物を用意して乗客となるか、会津若松又は喜多方での乗換時間を上手く利用して下さい。

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