賃料事例収集-2

 先に案内の賃料調査は当面は三大都市圏対象ということのようです。
それなら、茫猿の位置する地方圏は当面は関係ないが、地方圏としても
いずれにしろ避けて通れない問題だから、もう少し詳しく考えてみます。
 茫猿が主張するのは「理想論だ」とか、「できればいいが現実はそう
はゆかない」という反論をよくお聞きします。私も障害が多く実現が困
難であるとは十分承知しています。
 当面できることから始めるのは当然としても、しかし、それであるか
らこそ、目標とか理想とかを忘れてはならないと考えるのです。
 望ましい在り方、到達すべき目標を掲げて、それが頂上であるならば、
今は5合目を目指す、できれば六合目を目指すという考え方が必要だと
思います。現実問題として、この位しかできないだろうから、此処まで
という考え方をしますと、結局其処に止まってしまいます。
 また、事業の全体計画としては、予想される全てとは云わないまでも
実現可能な範囲を少し超えた辺りに目標値を設定し、その七割八割の達
成を目指すべきではなかろうかと考えます。
1.当面の調査区域
 県庁所在地或いは有力都市の、商業地を中心に考える。
岐阜県を例にすれば、40名会員で3~4都市、調査対象都市総人口数
80万人。 住宅地は地価公示等の付随作業とする。調査対象エリアは
逐年毎に拡大することを考える。
※とにかく、地元に精通する鑑定士が、調査対象都市等を決めて、地価
公示設定区分図などを基礎にして担当エリアを決め、作業を開始する。
容易に、安価に入手できるデータは、所詮それだけの意味しかありませ
ん。例え当初は量的に不満足でも確信の持てるデータの蓄積が大事なこ
とと考えます。
2.基礎データとして、賃貸ビルデータの整備
 都計商業地域全域、もしくはエリアを限定して、賃貸ビルをリストアッ
プし、ファイル化する。(先ず、対象賃貸ビルの拾い出し)
※担当エリア内のビルを住宅地図の別記・入居者詳細情報などを参考に
してリストアップする。
a.対象ビルの住所をブルーマップより把握
b.テナントリスト(入居階層と名称のみ)
  ※正式名称の把握をどうするかが問題である。電話帳が利用できないか。
  ※NTTエンジェルラインで検索すれば、正式名称と住所が把握できる。
c.登記事項調査(所在地と登記床面積・建築年月日確定)
  ※法務局備え付け建物配置図と各階平面図も入手し、ファイル化
  ※公示等公用閲覧交付申請書を利用できるような措置がとられるの
   が望ましいでしょう。
d.建築確認資料の閲覧調査(建物面積調査表)
  公的データの利用の為には税務課への協力依頼も検討する。
e.可能な範囲でというより、アンケート回収後でもよいが、ビルの現
  地調査を行う。建物要因の調査並びにデジタル写真をファイル化で
  きればよい。
f.同じく入手できれば、建築図面のファイル化。
3.各ビルのテナント宛にアンケート調査
※アンケート内容は回答の容易さを考慮して絞り込む
a.月額支払い賃料、一時金(一時金月数)
b.契約時期、契約期間
c.賃貸階層、賃貸面積
d.特約の有無と内容
4.データファイル
 施工面積やある程度詳細な要因等、建物に関するデータをファイル化
する必要があると考えます。又、旧知のオーナーや、仲介業者への面接
調査も可能な限り行うべきと考えます。
 そして、それらのデータを入力することが可能なファイルを用意すべ
きと思います。このファイルはデータファイルに限定すべきであり、地
価公示との直接リンクやインデックス作成等シミュレーションは別ソフ
トに委ね、データコンバートを確保すればよいと考えます。
また、国土庁用フォーマットでのデータのエキスポート・インポートは
必須条件でしょう。
※データファイルの構成
a.データの種類、商・住・工、新規・更新、エリア悉皆・他等
b.所在地、公示要覧程度の道路・都計・接近条件等、要因入力部分
c.床・賃貸・施工面積、内外装・設備、建築時点等、建物データ部分
d.テナントデータ部分(毎年更新し、過去データを保持する)
e.賃貸データ部分(テナント毎又は各階毎、同じく過去データを持つ)
f.その他データ(取引データ、建物写真・建築図面等イメージデータ)
 ソフト作成方法も公示ソフトと同じような手法はとれないでしょうか。
会員は収集後のデータを利用するためにも、データ収集のためにもソフ
トが必要でしょうから。既に公表されているEXCELシート等をソフ
トハウスに提示してファイル作成の見積もりを求めてもいいのではない
でしょうか。
【この賃貸事例データファイルソフト作成が、実は一番悩ましいのです。
へたに先行すれば、全国的整合性がとれない恐れがあるし、座して手を
拱いていれば遅れるばかりだし】
 全国統一ソフトによるデータ集約については、有償であるならば全国
データを集約することも、あえて反対はしませんが、地元のデータは地
元で保管し活用を図るべきと考えます。そのためにも、会員が収集デー
タを利用できるべファイルソフトを持つ必要があります。
5.蛇足
 誠にくどくて申し訳なく思いますが、私は全項目が調査収集できたデー
タファイルをイメージしていません。
「案1~案3」を年2回程度継続することにより、次第にデータは充実
してゆくと考えています。初年度は、対象賃貸ビルをリストアップする
だけでも大変ですが、次年度はテナントの確認等追加作業及び新規ビル
のデータ追加作業になります。アンケートの発送は電算処理ですから封
緘作業が増える程度です。
 また、特定エリアのアンケート調査に限定することでもありません。
随時入手できた賃貸資料等は「この賃貸データファイル」に入力してデー
タ量の蓄積を図ってゆくべきと考えます。宅建業界やビル業界との連携
を模索することも必要でしょう。
「国土庁土地取引詳細調査」との関連で、年間約4万件強・アイテム数
約50項目強の官民の取引事例を全数入力している某会のケースをみれ
ば、「価格の無い取引事例も立派な取引事例」であり、「賃料の判明
しない賃貸事例も、立派な賃貸事例」であると考えます。基礎データさ
えあれば、追跡調査は可能かつ容易と考えます。また、様々な方法によ
り判明入手した賃料データを保全することも可能です。
 その意味で、一本釣り漁法よりもトロール網漁法を採用したいと考え
るのです。一回の調査で全項目を充足しようとするのではなく、経年調
査を経て多くの項目を充足してゆこうと考えるのです。
一見して迂遠のようですが、結構、近道だと思いますが。
さらに蛇々足すれば、一定のエリア内の賃貸ビルの棟数、賃貸床面積情
報、或いはテナントの充足率、回転率は立派な収益データの一部ではな
いでしょうか。そのためにも目標はエリア悉皆調査なのです。
 勿論、このような話は、会員数50人前後の小規模会だから云えるの
であり、大規模会では調査対象も関与会員も比較にならないほど、大き
く広く多いことから、意志の集約・方法論その他多くの問題を抱えるの
でしょう。方法論的にも別の手だてを考える必要があるのでしょう。
 しかし、大規模会ならば、人的資源も財政的資源も余裕があるのでし
ょうから、事務局充実等により対応が可能なのではないでしょうか。
或いは、会員及び第三者に、生データ或いは加工データを有償配布する
ことにより、事業費の相当部分を捻出できないでしょうか。
 集約点は一つです。「川上(基礎データ)から、川下(評価・コンサ
ル)まで」を指向するのか、「原材料は他者に委ねて、加工に特化する
のか」の、二者択一ではないでしょうか。勿論、補強材料として、他者
が有償無償で提供されるデータを活用することは云うまでもありません。
IT革命が俄に騒がれていますが、総理がメールを発信して「モリメー
ル」などという漫画に惑わされてはならないと考えます。
到達点は、自信をもって提供し、信頼をもって利用される「不動産収益
(賃料・投資)インデックス」の作成です。
我々のプレゼンスを高めるのに、巨大不動産収益データベースの自主運
用が大きな力を発揮すると思います。

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