国土交通省、鑑定協会、鑑定士

【茫猿遠吠・・国土交通省、鑑定協会、鑑定士・・02.06.07】
 先号の「蛇足」で、Evaluation.No5 にふれました。
 すこぶる難解な学問的な記事については軽々に話題にすることなどできま
せんから後日に致しますが、「ふくい やすこ氏・・鑑定協会のさらなる変
革に期待する」という評論と「平澤春樹氏・・不動産鑑定業界の現状と動向」
と題する分析記事は示唆に富むモノと思います。
 ふくい氏の評論は、鑑定士が「国土交通省、鑑定協会、鑑定士」を揺るぎ
のないワンセット(トリオ)とみなして議論を進める不思議を衝いています。
鑑定士及び鑑定評価の向上を議論するときに、
(1)その前提として役所や協会が持ち出される不思議、
(2)顧客や市場のニーズが話題と成らない不思議、
(3)情報開示が議論と成らない不思議を述べているものです。
(1)について、
 茫猿は、鄙からの発信で繰り返し『鑑定業界は「生い立ち」の不幸を背負
う』と述べてきました。
以下は、00.02.25付、アピールと題する記事の再掲(全面改訂)です。
 不動産鑑定業界は制度創設以来、痒いところに手の届く乳母の庇護の元に
育ってきました。そのことは幸せなことであり、茫猿自身も若い頃は他の資
格業界人から随分とうらやましがられたものです。
例えばこんな風に言われました、「鑑定士さんは佳いですねー。資格取った
ら国が百万円もの仕事をくれて、事務所の維持費がでるなんて。」
(75年代頃の話です)
 しかし、年月を経て、鑑定評価を取り巻く状況が変化するとともに、この
幸せな状況は一転して不幸な状況(逆説的な表現ですが)となりました。
 鑑定業界の幸せは、制度発足当初から地価公示制度と一卵性双生児であっ
たことです。その後も地価調査、届出添付鑑定、届出第三鑑定、民事執行法
施行に伴う競売評価、そして固定資産税標準宅地評価、相続税標準地評価、
最近は不良債権処理附随評価等々、常に建設省・国土庁・自治省・大蔵省、
最近は国土交通省、総務省、財務省等諸官公庁の庇護育成と業務提供(創設)
のもとにありました。(もちろんのこと、行政の意図するある種の役割を担
わされてきたという側面も否定できないのですが。)
 今でも、公示・調査で毎年数十億の予算が鑑定業界宛に支出され、三年に
一度は数百億の地方自治体予算が支出される恵まれた温室環境にあります。
だから、「ものを言わず沈黙を守って、霞ヶ関のご指導に従っておれば悪い
ようにはならない。」という、従順な子羊体質が骨の髄まで染みついてしま
ったのではないでしょうか。
 つまり、業界挙げて霞ヶ関を仰いでいればよい。乳母である建設省が、
国土庁が、国土交通省が指導してくれる。何とかしてくれる。
 二年に一回の協会役員選挙でも候補者の多くは、「地価公示の報酬引き上
げ、地点増設に努力します」ということ以外は、抽象論が殆どです。
平成に入ってからの数回の選挙でも、潮流の変化を見据えて我々の向かうべ
き具体的方向性を示した候補者は僅かです。最近一部では地方社団や鑑定協
会の役員立候補者が見当たらないというお寒い状況もあるやに聞いています。
 我々の頼りとする霞ヶ関は音をたてて変わりつつあると思います。霞ヶ関
頼りの業界は、切り捨てられる時代に入ったと考えます。霞ヶ関に提案し、
時に議論を挑み、対等のパートナーとして(時にはカウンター・パートとし
て)の自覚と責任を分け持つ気概と努力が求められている時代に入っている
と考えます。
 鑑定士というサムライ稼業を選んだ以上は、ささやかながらも微力ながら
も、社会の求めるものに的確・迅速に反応し、社会の求めることが是か非か
を信念をもって発信してゆくことが、大事だと考えます。
 資格を与えられた(獲得して)エスタブリッシュメントとしての自負・自
尊があるのならば、自分達の果たし得る役割を、アピールしてゆく姿勢が肝
心なのだと考えます。
 不動産鑑定業なる職種が情報の仕訳人であるならば、翻訳人であるならば、
分析人を自負するのであるならば、優れたセンサーが必要でしょう。そして
アンテナに掛かった情報を選り分ける優れたセンスが大事でしょう。
センサーとセンスを常に磨いていることが必須条件なのだと考えています。
及ばずながらも磨き続ける努力が大切なのだと考えます。
 沈黙を守ることは、楽なのです。もの言えば唇寒しとも云います。
茫猿も啼かずば撃たれまいにと、囁く声が聞こえます。でも、云います。
云わずにおいて、後悔するよりも、もの申して後悔しようと考えます。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
 ここまで書いてきましたら、平澤氏の評論にふれる余裕がなくなりました。
そして、氏の評論の結語である「零細化の一途の中で私達は座して死を待つ
のか、多種多様な鑑定評価の新たなニーズに結集して挑戦するかの岐路に立っ
ているのです。」という文言に我が意を得たりと感じていましたところ、
次のようなニュースに接しました。
 (財)資産評価システム研究センターという組織をご存じでしょうか。
同財団法人は総務省(旧自治省)の外郭団体です。
主に固定資産評価についての調査研究を行っている団体です。
 この財団法人が、本年夏を目途に次のような事業展開を企画されています。
 その一つは、地図情報システムによる全国の地価公示価格、地価調査価格、
相続税路線価、固評標準宅地価格、固評路線価等のいわゆる公的評価格を自
治体窓口で電子データとして公開ができるシステムの無償配布です。
 もう一つは、路線価等業務管理システムの開発及び配布(無償予定)です。
詳細は次号にてご案内しますが、両システムの配布が順調に行われれば、膨
大な情報のディスクローズが一気に進むであろうと予測されると同時に、
そのことによってもたらされる影響の大きさも大変なモノがあるだろうと考
えます。
(株)ゼンリンの1/2500ベクトルデータマップ等が基礎になっている GIS
(地図情報システム)がもたらす影響の大きさは想像できないくらいに大き
なモノと考えます。
簡単に云えば、DVDナビの詳細市街図に公示や地調や固評標宅さらには路
線価が搭載された状況だと云えるでしょう。
(以下は次号にて)

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