制度改正試案意見募集

【茫猿遠吠・・制度の改正試案意見募集・・04.01.16】
 表題に関して、先号記事でふれたように国交省は意見募集を行っています。
意見募集の対象は、以下のものでありますから、詳細は下記のURLから閲覧し
てみて下さい。
「不動産鑑定評価制度の改正試案」に関する意見の募集
意見募集期間
 平成16年1月9日(金)~平成16年1月30日(金)
 http://www.mlit.go.jp/pubcom/04/pubcomt1_.html
『改正試案の項目及び概要』
1.不動産鑑定士資格取得制度の見直し
・優秀な人材を確保するために裾野を広げる。
・資格制度を簡素合理化する。
2.隣接周辺業務の位置付けと行政による監督
・取引事例の調査分析、市場分析、その他コンサル
・独占業務とは位置づけない
・これら周辺業務について、懲戒・監督処分を行う。
 この件に関して、「不動産鑑定12月号」に「今後の不動産鑑定評価の
あり方について」と題する座談会が掲載されています。
出席者は、中間取りまとめ及び改正試案作成に深く関わった、
国土審議会土地政策分科会鑑定評価部会長 緒方瑞穂氏
同 専門委員・三菱信託銀行不動産コンサルティング部長 森島義博氏
地方圏の立場から
愛知県士協会会長・地価公示愛知県代表幹事 小川隆文氏
東北会選出本部理事、東北会副会長 莇 勇二氏(アザミ ユウジ)
 誌面にみる各氏の主張は、相当に濃淡があり、現在の鑑定業界において、
とてもコンセンサスが得られていないだろうことを垣間見させるものです。
 緒方氏は立場上から当然のことですが、制度改正の意義・必要性を滔々と論
じられる訳で、森島氏は金融資本に席をおく鑑定士(既にその立脚点は不動産
コンサルタント)として、現状を分析し進むべき方向を指摘されます。
いわば、都市圏の論理に聞こえます。
 これに対して、小川氏や莇氏は地方圏に位置する立場から、異論や疑問点を
投げかけられます。 いずれにしても、詳しくは記事をお読みいただけばよい
ので、この小稿で一つ一つ論じることは避けます。
 茫猿は、かねてから都市圏と地方圏の違いを論じてきました。
・実働約5千人の鑑定士の内、4千人が都市圏に位置し、
 1千人が地方圏に位置する状況がもたらすもの
・先端業務や周辺業務が多く存在し、デジタル的かつビジネスライクな都市圏
・先端業務は乏しいが、安定的でアナログ的かつヒューマンな地方圏
 どちらが佳いとか悪いとか云う問題ではなく、必然的におかれた環境が異な
るという認識が、都市圏鑑定士にも地方圏鑑定士にも必要なのだと考えます。
 すなわち、都市圏を中心に発生する先端・周辺業務を獲得するために系列化
グループ化が声高にいわれます。緒方氏が云うところの「大量」、「広域」、
「一括」、「安価」、「迅速」というキーワードでくくられる業務や、証券化
等の高度業際業務は都市圏なかんずく東京に発生します。
 それらは、ある種の必然性をもって、東京の元締めに業務発注され、地方の
系列あるいはグループ所属鑑定士は下請け的に駆使されます。
 証券化業務はJREITの目論見書をみれば一目瞭然のとおり、
ほんの数社に業務発注される状況にあります。
 茫猿はこういった現況について、悲憤慷慨するものでも諦観するものでもあ
りません。茫猿は都市圏鑑定士と同じ目線や視座でものを語ってはいけないと
申し上げるものです。同時に都市圏鑑定士といっても一律ではなく、前述のよ
うな業務の元締め(元請け)の立場に立てる鑑定士や鑑定事務所は極々わずかで
あり、多くの都市圏鑑定士もまた地方圏鑑定士に似た状況におかれているので
しょう。
 ひょっとしたら、地方圏鑑定士が現に得ている環境がないだけに、地方圏鑑
定士より悲惨なのかもしれません。
 森島氏の云う、「食えない東京と食える地方の温度差」ということでしょう。
 
 別に地方が豊かな訳ではなくて、低位安定しているに過ぎないのかもしれま
せん。別の観点からいえば業務量の割に新規参入が少ないだけのことなのかも
しれません。例えば、地方圏では新陳代謝が低いし、ある種のヒエラルキーも
動きが乏しいことから、保守的であり消極的な気分が蔓延しがちです。
 だから、地方圏では鑑定士資格を獲得して鑑定以外の業際分野で
あるいは異分野で活躍しようとする人は少ないように見ます。
 それに対して、都市圏特に東京圏では鑑定士資格を基礎にして異分野へ進出
しようとする人が多いし、その機会も多いように見ます。
これだけでも都市圏で学問を修めた若者にとっては、都会の魅力に抗しがたい
といえるでしょう。なんで好きこのんで都落ちなどということです。
 茫猿は改めて思います。鑑定評価を取り巻く環境というより、不動産を取り
巻く環境が大きく変わる中で、不動産の専門家を自負する者としては何を為さ
なければいけないのか、何が必要なのか。
 土壌汚染とか企業評価、或いはADRといった新しい課題について、勉強を
つづけることも忘れてはならないでしょう。しかし、恒常的にそれらの業務に
参画していなければ知識は知識に止まり、いつかは錆び付いてゆくでしょう。
 東京の元締めに連なり、その末端構成員に身をやつすことをいちがいに否定
はしません。でも末端構成員はいつまでたっても末端に過ぎません。
いつの日にか主導権を握れるものでもなく、駒のままで終わるのでしょう。
 茫猿は不動産を取り巻く環境変化には、地方圏は地方圏独自の対応方法があ
ると考えます。アナログ的かつヒューマンと先述しました。
・地方圏鑑定士は自己の在住エリアの専門家に徹すること。
・地方圏独特の濃密な人間関係を構築すること。(業界内よりも業界外と)
・エリア情報の高度かつ有効な共有化を目指すこと。
 別の云い方をすれば、このエリアでは地元鑑定士の協力が不可欠である状況
を構築することに他ならないと考えます。都市圏の鑑定士もそれらエリア情報
を得られない訳ではないでしょうが、時間と費用の面からとても不合理である
という状況の構築です。
 取引価格の開示、固評路線価の開示 その他多くの情報がinet等を通じ
て公開されてゆく状況はますます加速されるでしょう。しかし、その反面とし
て公開情報を掘り下げた個別深化情報や非公開人的固有情報の価値は今以上に
増してゆくと考えます。
 そういった意味で、地方圏鑑定士は不動産環境の変化にアナログ的ヒューマ
ニスティック的ネットワークの構築が不可欠と考えます。このヒューマンネッ
トワークを裏打ちするツールとして、茫猿は収益インデックス作成やブロード
バンドVPN採用を提唱しているのです。そして地理情報に至る高度多様な情
報データバンクの構築を目指そうと茫猿は遠吠するのです。
 不動産について、茫猿は「現場百遍、不動産は不動産に聞け」と考えます。
「岐阜のことは岐阜の鑑定士に聞け。聞かざれば大いに危険。」という状況を
作り出せばよいのであり、そのためには都市圏の元締めや金融資本の要求する
ものを越える状況が望まれると考えます。
 制度の改変などは都会の方々にお任せしておきましょう。
なんせ彼等は多数派だし、改変するにはするからの、なにがしかの必然性もあ
るのでしょうから。
 地方圏鑑定士は地場に密着した時系列的には故事来歴に至るまで、平面的に
は需給圏から代替競争関係に至るまで、三次元的には環境変化が求める解析能
力も含めて、己の依って立つ位置を見定めることが大事なのだと考えます。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
・資格制度の見直しは優秀な人材を得るために裾野を広げるもの
という論理は肯定できません。
 鑑定士商売に、収入面であれ、その業務内容であれ、魅力があれば、自ずと
人は集まってくるものであり、優秀な人材に事欠くことはないでしょう。
制度を変えて人を集めようというのは本末転倒と云うものです。
・隣接周辺業務の位置付けと行政による監督
 何が隣接業際分野であるのか、鑑定士に依頼すべき業務であるのかは市場が
決めることであろうと考えます。鑑定協会が押っ取り刀で組織したカウンセラー
制度が未だに本来の機能を発揮していないのも、不動産コンサルティング制度
が機能していないのも、制度で市場の需要を喚起できない一例だと考えます。
 ましてや、行政による監督処分制度などは、何の意味があるのでしょうか。
鑑定士の名をもって不当なコンサル業務やカウンセリング業務を行わないよう
にするということなのでしょうが、自治と自己規制ができない組織に市場の信
頼が集まることなどはあり得ないと云えましょう。
「法改正や独占業務編入」などはとてもお願いできないが、
せめて「監督処分」だけはお願いします、というのであれば、
もはや、何をかいわんやということでしょう。
・・・・・・閑話休題・・・・・・
 H16地価公示作業も一段落した今日のこととて、
2003年データのバックアップ作業を行いました。
 もちろんのこと、恒常的にはLANサーバーでミラーリングをしていますし、
バックアップソフトを利用して外付けHDに常時バックアップを行っています
が、ハードディスクがクラッシュしたり、何かの天変地異によって事務所内パ
ソコンが使用不能になる危険が考えられます。
 幸いにして茫猿は、PCが破壊されるような地震も火事も落雷も経験してい
ませんし、HDのクラッシュも未経験です。しかし災害はわすれたころにやっ
てくると云いますし、今まで無かったと云うことは、これから起きる蓋然性が
高いと云うことでもあります。
 何かの参考までに茫猿のバックアップ作業を申し上げますと、
1.CD-Rドライブに生CDを装着します。
2.生CDが認識されましたら、名前を付けます。例「2003-Bup」
3.バックアップを取りたいファイルやフォルダーを複写します。
4.複写が終わりましたら、CD作成コマンドを実行します。
 これで、CD1枚に約650MBのデータがバックアップされます。
昨年中に作成した評価書等ファイル、撮影した画像ファイル、作成入手したデー
タファイルの全てを数枚のCDに複写して、自宅書庫に保管します。
 本来は月に一回程度は実行すべきだろうと考えますし、DVD-Rの利用や
ブロードバンドを利用して自宅PCへデータ転送を行うことも考えなければい
けないのでしょうから、バックアップの強化策は今年の課題の一つと考えてい
ます。転ばぬ先の杖とも云いますから。

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