社説の読み比べ

【茫猿遠吠・・社説の読み比べ・・04.04.13】
 かねてより茫猿が述べてきたことであるが、いわゆる三大紙、四大紙をはじ
めとして、マスコミを頭から信じることは問題がある。誤報もあれば、意図的
に報じないことや、偏向的な記述もある。
 その意味からは、マスコミ以外のミニコミにも目を配る必要があるが、マス
コミの読み比べも結構重要である。
 今回のイラク人質事件に関して、報道は二転三転しているし、未だに解放さ
れる兆しがない。邦人三名の一刻も早い解放を祈るものである。
その変転する状況のなかで、四大紙の主張に差が見られるようになってきた。
著作権との関係があるから全文引用はできないし、各紙の社説はネット上で読
めるから、詳細は直接に各サイトを読んでほしいが、各紙の差違が明らかな論
点部分のみ引用する。
 さらに、この問題に関しては、紛争地域での活動が期待されるNGOは、同
時に自己責任も要求される状況にある。この問題に関して、4/13中日新聞は
「NGO板挟み」という見出しの記事を掲載している。
 また、同時期に拘束された中国人は、4/11に解放されたようであるが、この
解放の理由をめぐって、中日新聞は「十二日付の夕刊紙「北京晩報」は、七人
が日本人や韓国人と似ていることなどから、誤って拘束された可能性があると
の見方を伝えていた。」との記事を載せている。
 この事件に限らないことであるが、一つの事象を一面的に見ることの危険性
を考えたいものである。この世の事象は常に表と裏が存在し、光と影が存在す
る。行間を読むこと、紙背を読むこと、多面的な視点を持つことなどが大切で
あると考えるのである。
※追記、只管打座に岐阜の山間地の桜記事と日本最大級のロックフィルダムで
ある徳山ダム工事の4/13・現場写真を掲載しました。
「4/12・年々歳々花相似たり」です。
『読売新聞社説』(部分引用・全文は下記のURLからお読み下さい)
 三人の人質解放問題と、日本のイラク政策は、峻別(しゅんべつ)する必要
がある。人質解放問題によって、日本の国益にかかわる重要な政策が損なわれ
るような事態は避けなければならない。
 人質の家族の言動にも、いささか疑問がある。記者会見で、公然と自衛隊の
撤退を求めていることだ。  人質の安全を望むのは、家族として、当然だ。
だが、武装グループの脅しに応じ、政府の重要政策の変更まで求めることが、
適切と言えるだろうか。  日本は容易に脅迫に屈すると見られ、日本人への
テロや誘拐を誘発する危険がかえって増大する。
 政府は、昨年来のイラクからの「退避勧告」に加え、今年だけで十三回も注
意喚起の情報を出し、民間人の退去を求めている。三人は事件に巻き込まれた
のではなく、自ら危険な地域に飛び込み、今回の事件を招いたのである。
 自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動が、政府や関係機関などに、
大きな無用の負担をかけている。深刻に反省すべき問題である。
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040412ig90.htm
『産経新聞主張』(部分引用・全文は下記のURLからお読み下さい)
 そうした困難な中であっても政府は、全力で人質の救出をする義務がある。
特殊部隊の突入の手段がなく、情報機関をもたない日本にはやれることに限り
がある。だからこそ、国内は政府、国民が一致して卑劣な誘拐犯、テロリスト
に対処する必要がある。小泉純一郎首相が来日したチェイニー米副大統領との
会談で、改めて協力関係を確認できたことも重要である。
 いま、誘拐された三人の家族が、自衛隊の撤退を求める政治的な発言をする
ことは、誘拐犯に取引の余地があるような錯覚を与えかねない。家族の圧力で
日本政府が譲歩すると誘拐犯が考えれば、解放を長引かせて不安をあおる逆効
果を生むだろう。まして、日本国内の平和団体がこれに便乗する動きは、誘拐
犯を利するだけである。
 日本が誘拐犯の要求に屈し、自衛隊を撤退することがあれば、海外の邦人を
別の危険に陥れ、要求をのまない他国の外国人は殺害されるだろう。いまは、
日本がイラク再建にどんな貢献をなし、自衛隊派遣がどんな役割を示している
かの信念を、さまざまなルートで語るべきときである。
 http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
『朝日新聞社説』(部分引用・全文は下記のURLからお読み下さい)
 小泉首相と会談したチェイニー米副大統領は、人質事件の解決への協力を表
明した。首相は「米国の大義と善意を確信しており、だから支持してきた」と
述べたというが、イラク情勢の悪化を防ぐことが人質解放につながることをき
ちんと伝えたのだろうか。
 自衛隊の派遣を高く評価したチェイニー氏は「イラクの暴力は少数者の行動
に過ぎない」とも語った。現状とかけ離れた認識だけに、会談が人質解放にど
れほど役立つか心もとない思いがする。
 人質の解放交渉には、イラクの人々に占領がどう映っているかという視点を
持つことが欠かせない。
 http://www.asahi.com/paper/editorial.html
『日経新聞社説』(部分引用・全文は下記のURLからお読み下さい)
 政府は事件解決のためシリアやヨルダンなど中東地域各国に協力を呼び掛け、
前向きの反応を得ることができた。また、チェイニー米副大統領は12日の小泉
純一郎首相との会談で、米国としてあらゆる努力を払うと約束した。危機の際
に外国から支援の約束を取り付けられたことは極めて重要である。
 日本外務省はイラク戦争開戦前からイラク全土に退避勧告を出していたが、
これは強制力を持たず、徹底することは難しい。イラクには現在、大使館員や
報道関係者など70人程度がいると思われるが、非政府組織(NGO)関係者な
どの行動は掌握しにくい。
 このような状況下では自己責任がイラクにおける基本的な行動原則であるこ
とを再確認しておきたい。
 http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040412MS3M1200O12042004.html
『毎日新聞社説』(部分引用・全文は下記のURLからお読み下さい)
 民間人や女性を人質にして日本政府を脅迫するような行為は断じて認められ
ない。その限りでは、事件解決にあたる日本政府の基本方針が揺れ動いてはな
らないことも言うまでもない。
 しかし、事件と一連の戦闘が結びついているとすれば、解決は一層複雑で困
難にならざるを得ないのも現実だ。人質解放に努める中で、イラクの全体状況
も冷静に見通して対応を練る必要がある。
 その意味では、占領当局や米英政府の側にイラク住民の不満や反米感情を解
消する方向で治安を確保する明確な戦略があるかどうかがきわめて重要だ。
 それだけに日本政府は事件解決への相互協力だけでなく、治安、主権移譲、
復興支援、国連との協調など全般的次元でも米国に率直な助言をすべきだ。今
回の停戦を住民との意思疎通や対話による解決へつなげていく知恵と工夫を絞
ることも必要である。治安と主権移譲で確かな戦略を打ち出すことは、人質事
件の解決や再発防止にもつながるはずだ。
 http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20040413ddm005070136000c.html

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