鑑定守秘義務と情報保護

【茫猿遠吠・・鑑定法の守秘義務と情報保護・・04.09.28】
(一)守秘義務について
 個人情報保護法を語るときに、不動産鑑定士等は既に守秘義務を課せられていると述べられる場面が多い。
 不動産鑑定法は第38条において鑑定業者並びに不動産鑑定士等に守秘義務を課している。だから、既に不動産鑑定業者並びに不動産鑑定士等は法により守秘義務を課せられていると云えるのであるが、鑑定法の守秘義務規定及び罰則規定と個人情報保護法のそれとは相当に異なっている。
 鑑定法では守秘義務についてガイドラインも設けられていないのに対して、個人情報保護法では漏洩等違反について、両罰規定を設けている。
この両者の差異について、明らかにすることなく軽々に鑑定業者並びに不動産鑑定士等は法により守秘義務が課せられているとは云えないのではなかろうか?
※不動産の鑑定評価に関する法律
(秘密を守る義務)
第三十八条
 不動産鑑定業者並びにその業務に従事する不動産鑑定士及び不動産鑑定士補は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。不動産鑑定業者がその不動産鑑定業を廃止し、又は不動産鑑定士若しくは不動産鑑定士補がその不動産鑑定業者の業務に従事しなくなつた後においても、同様とする。
第五十七条
 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
四 第三十八条の規定に違反して、業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を漏らした者
※個人情報の保護に関する法律
   第六章 罰則
第五十六条
 第三十四条第二項又は第三項の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十八条
 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(二)個人情報の目的外使用
 個人情報保護法は個人情報の目的外利用を禁じているが、鑑定評価で知り得た個人情報を鑑定評価以外の目的に利用することを禁ずる措置、または利用できなくする措置(ガイドライン)が必要ではなかろうか?
即ち、鑑定業者が兼業するコンサルタント等業際分野において、それら個人情報を利用できる可能性を排除しておく必要はなかろうか?
特に、金融業やマーケットリサーチ等調査等業務の兼業や補償コンサルタント土地評価業務の兼業は、目的外利用の疑惑を招く可能性が高いのではなかろうか?
それらの観点から、鑑定業者の兼業禁止規定、もしくは鑑定業務専業規定の検討は必要なかろうか?
※個人情報保護法第十六条
 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
(三)多様なサービスを提供できる不動産鑑定業の確立
 国土審・土地政策分科会建議に示される「多様なサービスを提供できる不動産鑑定業の確立と兼業禁止制定とは矛盾するものであろうか?
 鑑定評価と業際分野とが併存する企業形態が、兼業鑑定業者利益の極大化に最も資するものであろうと考えるのは当然のことである。
 しかし、そのことは、本来、価格判定業務を行う鑑定評価の自主独立性という立脚点と、依頼者の利益極大化を目指すコンサルタント業務立脚点との混同を招きはしないだろうか?
 既に公認会計士業界においては、監査業務とコンサルタント業務の分離は、時代の要請となっていることを、改めて考えてみたいものである。
 なお、先に挙げた国土審建議に云うところの協業化は、東京を中心とする垂直的協業化、即ち業務受託者と業務遂行者を協業というラインで結ぶという「似非協業」の横行とは似て非なるものではなかろうか?
 ここで云う協業化とは、異業種特に業際分野業種との協業化や、地域或いはエリアにおける不動産情報の精緻化を目指す協業化、さらにはそれぞれの不得手な鑑定評価分野を互いに保管しあう協業化など、水平的協業化を目指すものと解する方が合理的であり将来指向的であると考えられないか?
(四)コンプライアンス・プログラム
 個人情報保護ガイドラインは、コンプライアンス(法令遵守義務)はもとより、コンプライアンス・プログラムの実施を求めるものである。
高度な倫理性を有する資格者団体であると自負する鑑定協会であればこそ、法令並びにガイドラインを遵守するのは自明のことであるが、それらを越えた倫理性の獲得を目標とすることが、社会の信頼を勝ち得て、不動産鑑定士のレーゾンデートル(社会における存在意義)を一層確かなものにしてゆくのではなかろうか。
その際に、多様な業種との兼業や、鑑定評価部門の企業内における位置などが問い直されなければならないのではなかろうか?
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
 個人情報保護法は幾多の問題点を内在させる批判の多い法律ではあるが、現に施行される法律である。また個人情報の保護という目的については異論は少ないのである。その今こそ、我々不動産鑑定士に求められるのは、「Too Late Too Easy & Too Fuzzy」という批判を受けてはならないということではなかろうか?
 実態上からして、無限責任状態にある一人法人を含む個人鑑定業者と、有限責任状態にある法人鑑定業者を同列に扱うことに正当性が認められるであろうか、改めて問い直してみたい問題である。
 鑑定業者(鑑定専業業者でなく、金融・宅地建物取引・再開発コンサルタント等との兼業者)が鑑定評価以外の業務に関連して漏洩事件を起こした場合、当該兼業業種に関わるガイドライン抵触事件を起こした兼業鑑定業者への鑑定協会の対応措置はどのようになるのであろうか、
 違う業種における事件だと放置したり見過ごしたりしておいてよかろうか、是正・対応プログラムを準備しておく必要はないのだろうか?
 保護法検討委員会が発足する。
素人が鳩首小田原評定を繰り返さないことを願うものである。
 この問題は専門家に任せるべきであり、少なくとも「ガイドライン対策の企画提案書」の作成を依頼し、その提案に基づいて、今から出来る対策を実施するべきではなかろうか、巷間にも云うではないか「餅は餅屋」と。
他の専門家を正しく活用する、専門職業家としての率直な姿勢というものを考えてみたい。
 同時に事例収集新スキーム統合対策WG(ワーキンググループ、或いはタスクフォース)を会長もしくは常務理事会直轄組織として作る必要はなかろうか。
 保護法ガイドライン対策、オンラインネットワーク構築、事例作成マニュアル等々の問題は相互に重複して関連するからである。機動的・機能的な対応が必要なのである。これらの問題に「木を見て、森を見ない」ような、統一性のない協議や検討は百害あって一利なき対応策と云える。
 こういった類の問題提起を行うと、お定まりの反論が返ってくる。
鑑定協会は、一般企業のように機動的運営はできない、一国一城の主であるところの独立した企業者を会員とする社団法人である。
 だからこそ、事務局が存在し、有給常勤の役員も存在している。
なにより無給非常勤役員といえども、自ら進んで役員会に席をおく専門職業家責任というものがあろうと考える。
しかも、メールやファクシミリなどその気になればオンライン会議の開催も可能なのである。今こそ、役員諸氏のセンス、センサー、スピリットが問われているということに気づいて欲しいものである。
「Too Late Too Easy & Too Fuzzy」では困るのである。
(注)素人とは
 我々は不動産鑑定士ではあるが、保護法ガイドラインやオンラインネットワークやコンピュータの専門家ではない。そのことを指して素人と表現する。
サーバー一つ取っても、WEBサーバー、ファイルサーバー、アプリケーションサーバー、SQLサーバーなどと幾つもの種類・機能がある。それらについての理解無しにガイドラインが云う安全管理措置の検討などとてもできない。
(注)事例の鑑定協会内開示範囲について
 取引価格情報の開示は、「規制改革・民間開放推進三カ年計画・04.03.19閣議決定」において、重点計画と定められた項目であり、「取引価格情報提供制度の法制化」を視野に、将来的には全面開示がありえるものである。
 アンケート協力義務が罰則なしで用意される可能性もあろう。
かつて「不動産取引価格情報の提供制度の創設」に関する意見募集において、A案を支持した鑑定協会はいずれ全面開示もあると予期するのが当然であり、今はコップの中の争いをする時ではない。
(注)取引価格情報の開示について 『所管:国交省 土地情報課』
 取引価格情報の開示は、「規制改革・民間開放推進三カ年計画・04.03.19閣議決定」において、重点計画と定められた項目の一つである。
(14)不動産取引価格情報の開示[重点・住宅1(1)(国土交通省、法務省)]
 正確な取引価格情報の提供は、市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るために早急に実現しなければならない重要な政策課題であり、このような制度を、個人情報等の保護に対する国民意識にも配慮しつつ構築し、さらに充実していくためには、幅広い国民の理解が得られるよう、実施上の課題も含めて、実績を通じて検証していく必要がある。このため、以下の施策を講ずる。
a 国土交通省は、法務省と連携し、現行制度の枠組みを活用して、取引当事者の協力により取引価格等の調査を行い、国民に提供するための仕組みを構築する。(平成16年度措置・国土交通省)
b 上記の仕組みに基づき、取引当事者の協力により取引価格情報の調査・提供を行う。(平成17年度措置・国土交通省)
c 価格情報の正確さが確保されること、個人情報保護の観点から情報提供方法に関する技術的側面が解決されること等を実績を通じて検証し、この結果等を踏まえ、取引価格情報提供制度の法制化を目標に安定的な制度の在り方について検討し、結論を得る。(平成18年度検討、結論・国土交通省)
・・・・・・本当の蛇足です・・・・・・
皆さんは、Googleのimode携帯電話検索を知ってましたか?
単語検索サイトですから、外出先で辞書替わりに便利です。!!!
試しに鄙で引いたら、何と三番目に『鄙からの発信』が出てきました。
とても嬉しく、晴れやかな気分になりました。
一度試してみて下さい。
※iモード
http://www.google.com/imode
※EZWEB
http://www.google.com/ezweb
※Jスカイ
http://www.google.com/jsky
・・・・・・もう一つ蛇足です・・・・・・
 我が陋屋に住みついている青鷺です。住みついてもう三年目になるのですが、とても警戒心が強くてなかなか良い写真が撮れません。こんな鳥でも飛び立つと羽長が1m前後もあり、結構雄壮です。
滑空する様なんかは我が家の主みたいです。

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