新実務修習の誤解

 不動産鑑定士試験の実施内容が平成18年度から大幅に変わる予定である。詳しくは下記の鑑定協会サイト記事をお読み頂きたいが、簡単に云えば一次、二次、三次とあった試験制度が一度きりの鑑定士試験となること、合格後に一年間の実務修習を課せられた後に修了考査が行われ合格すると鑑定士登録が認められることである。
【鑑定協会サイトよりの引用】
『社団法人日本不動産鑑定協会における新実務修習の実施方針について
(中間報告)(2005.9.20)
  新実務修習の基本的な考え方は、従来の実務経験2年プラス実務補習1年プラス3次試験合格と同等のレベルの専門的かつ実践的な知識・技能の習得を、最短でほぼ1年3カ月で可能とするものです。
 従って、これを可能とするために、実務修習生には濃密な課程の習得が課されるとともに、進度に応じたきめ細かい習得確認審査(確認されない場合の中間的な振り落し)が実施され、さらに最終的には、現行3次試験と同等レベルの知識・技能の習得を確認する「修了考査」が実施されるものです。』(引用終了)


 幾つかの不動産鑑定士関連サイトで、この実務修習講義料が話題になっている。講義料がとても高額であるということである。この点について誤解を解いておく必要があると思い記事にする。鑑定協会の中間報告によれば実務修習受講料等の詳細は以下の通りである。
実務修習カリキュラム(毎年12/01〜翌年11/30)
A.集中講義(東京会場開催:10日間程度) 受講料190,000円程度
B.基本演習(東京・大阪会場:9日間程度) 受講料200,000円程度
C.実地演習は基礎的実地演習と鑑定評価実地演習に分かれる。
 c1.基礎的実地演習約二ヶ月間  指導料 25,000円程度
 c2.鑑定評価実地演習 鑑定評価報告書作成 23件 指導料50,000円程度/1件
 C実地演習指導料合計額 1,175,000円程度
D.修了考査 口頭試問及び小論文 受験料30,000円程度
 以上の全てを合計すると約160万円となる。
 この合計額約160万円が、どうやら一人歩きしているようである。過去の一次二次三次コースでは二年間の実務経験と一年間の実務補習を要したが、今回の改正では実務経験は不要となり一年間の実務演習のみとなる訳であり、期間短縮効果は大きいのである。
実地演習指導料が多額であるという批判があろうが、これには幾つかの誤解が存在するようである。先ず、A及びB並びにDは現在も三次試験受験前に必要であり特に重科される訳ではない。問題はCであろう。C実地演習受講料背景の一つは、実務演習機関が鑑定協会に登録した鑑定事務所または協会が認定した大学であるということである。
 昨今の鑑定業界の状況では、従来型の実務経験取得事務所や実務補習引き受け事務所が年々得難くなっているという事情がある。その事情を解決する手段の一つとして実務演習引き受け機関の指導料徴収基準を明確にしたということが指摘できるのである。
 鑑定協会は幾つかの大手事務所に対して、この指導料を背景に指導鑑定事務所引き受けを要請するという事情も指摘できるのである。
 それでは、一般の鑑定事務所に勤務しながら勉強して鑑定士試験に合格した者の実務演習指導料はどのように取り扱われるかと云えば、鑑定事務所勤務合格者の受講料支払い等については、次のような見解があるものの詳細は未定である。
 すなわち、受講者は一旦は受講料を協会に納めた上で、協会から指導鑑定事務所宛に指導料を支払うというのである。鑑定事務所に勤務することにより演習鑑定評価報告書が現実には鑑定評価書となってゆくであろうことに関しては、雇用に伴う給与が支払われるであろうというものである。一見複雑な過程を用意するのも前項と同じ理由であり、雇用に対する給与と演習指導料を明確に区分できるようにしたとも云えるのであるが、受講者には別の見解や言い分があろう。
 いつか記事にしたいと考えているが、小規模事務所にとってこの雇用と指導と云う問題はとても難しいのである。むやみと雇用者を増やせば事務所が立ちゆかなくなるし、指導と実際業務との兼ね合いも結構難解である。しかも茫猿が試験に挑んだ頃とは時代背景も受講者の意識も大きく変化している。率直に云えば、実務経験取得生や実務補習生を抱えるのは様々に負担が大きいのである。ケチクサイことを云うようであるが、家賃を支払う狭い事務所の中に机・椅子を用意しパソコンを用意するだけでも無視できない負担なのである。さらに正規雇用すれば、雇用者としての社会的責任も生じてくる。にもかかわらず、時代の方向は省力化なのである。
 鑑定評価実地演習における必須類型について地方の事務所や、小規模事務所では演習命題用の案件が用意できないと云う指摘もあろうが、この件に関しては実際業務に加えて演習命題を想定すれば済むことであろうと考えるが、詳細は未だ不明である。
 これらの問題については、「不動産鑑定10月号・40周年記念不動産鑑定士セミナー」のなかで詳細に解説されている。

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