鑑定士新資格創設か?

 読者の皆様は前号記事「REIT掲示板」の内、「NO.11:鑑定評価」をどのようなお気持ちでお読みになりましたか?
まだお読みになっていない!! それは良うございました。あの掲示板をお読みなった上で、今日のこの記事を読まれたら、衝撃が大き過ぎます。今日の日経朝刊5面記事によれば、鑑定士に「証券化シニア・アプライザー(仮称)」なる新資格が来年度創設されるそうです。  【後述の国土審報告に関連記述有り】


 今朝の報道を含めて、最近、報道された事実を整理して列挙する。
「06.04.05・JPモルガンBK・金融庁処分事件」
「06.04.26・新生信託銀行への金融庁行政処分事件」
 これらを受けて、国交省が動き出す。
「06.06.02・国土地第37号:証券化関連の鑑定評価に係る実績調査」(リンクするページ無し)
「06.06.05・証券化対象不動産の鑑定評価等の適正な実施について、日本不動産鑑定協会宛の通知」
「06.06.16・オリックス・アセットマネージメント事件」
 そして週刊ダイヤモンド記事、並びに鑑定協会会長談話へとつながる。
「06.06.24・週刊ダイヤモンド掲載記事」
「06.06.29・鑑定協会・会長談話」
 同日、国交省は鑑定協会に再度通知の徹底を要請する。
「06.06.29・国土地第29号・鑑定協会宛、国交省土地水資源局長徹底通知」
 月が替われば、国交省・国土審議会・本筋報告の公表である。
「(06.07.05)国土審議会土地政策分科会企画部会不動産投資市場検討小委員会最終報告の公表」
 この報告公表には付属文書として「概要」、「本文」、「参考資料」、「市場重視型土地政策における政策体系」の四資料が付属するので、一度は眼を通しておきたい。 特に、3.4.8トランスペアレンシー(透明度)向上策には鑑定評価に関連する重要な施策の方向が示されている。
 1)不動産投資DCF基準の策定
 2)不動産EDIのためのデータコード統一
 3)投資不動産鑑定評価データベースの作成
 4)ベンチマークインデックスの作成
 5)不動産デリバティブ市場創設の研究
 6)鑑定評価信頼性向上のためのER評価
 7)証券化不動産の鑑定評価に関わる鑑定士の資質向上
   『証券化シニアアプレイザー制度の創設』
 8)複数価格提示等、投資家ニーズに応えた鑑定評価手法の研究
 9)ビジネスモデルに応じたコンプライアンスの確立
 続いて、(06.07.06)第2回「不動産の証券化に係る鑑定評価とデユー・ディリジェンスのあり方に関する検討委員会の結果」の公表である。
『最近、かなり強気の鑑定評価書もあるが、100人いれば100通りの評価もあり得る。高額鑑定も見解の相違とは言えるが、一概に悪いとはいえない。「速い(仕事が)、安い(フィーが)、高い(評価額が)」が求められ、保守的評価をする鑑定業者は仕事をとれなくなる構造も否定できない。 』などと、一見鑑定評価擁護にみえて開き直りとしかとれない記述もある。
 一連の慌ただしい動きから、何やらきな臭ささと肌寒さを感じていました。だからこそのキャンペーンでもあったのですが、その結末が今朝の日経記事とは思いもよりませんでした。(日経記事はリンクしておいても、いずれリンクが切られてしまうから、見出しに加えて記事の一部概要も掲載しておく。)
見出し『不動産鑑定士に新資格、証券化のプロ認定・国交省検討』
 記事はその末尾でこのように述べている。「しかし、実際には不動産の収益性などを分析したりする経験がない不動産鑑定士も多く、不動産投資市場の急拡大に対応できていないのが実情だ。」
 何とも手厳しい記述であるが、委員会の構成メンバーからすれば鑑定士の身内と云ってもよい国土審投資市場検討小委員会最終報告や、鑑定評価とデユー・ディ検討委員会報告を読めば、記者子がこのように記事をまとめるのもやむを得ないなと思わざるを得ない。
 このように状況が慌ただしく変化し、(社)日本不動産鑑定協会にとっても鑑定業界にとってもこれ以上の大事はまたと無いであろう時に、鑑定協会の対応には不満が残るのである。
 折りもおり、こともあろうに次に掲げるような「方向性を見失った会長声明」を、伝聞によれば役員会の了承を得た上で協会会員専用サイトに掲載したのである。役員会の方向音痴さというか、「場の空気を読めない能転気さ」を、深く哀しむのである。
(06.07.07)「週刊ダイヤモンド掲載記事について」(会長声明公表)(会員限定サイトへの掲載であり、リンクできず) 『公開されている談話及び関連の記事で背景を推量して下さい』
 この声明記事は私的な問題に終始するものであり、会員専用サイトとはいえ協会サイトを個人的使用に委せてよいとは云えないのである。「見て見ぬふりをするのか」、「何が問題なのか判らないのか」、上級役員諸氏の為され様を哀しむのである。何よりも、何度も何度も伝えているように、ただ今の最重要課題は「証券化と鑑定評価」に関わる公的機関の指弾や社会の疑問にどう応えてゆくかなのである。
 鑑定業界を取り巻く潮流が見えず己の方向性も見出せずに、国交省が鑑定士の屋上に設ける新資格を検討中と知ってか知らないでか、私的些事に終始して「当事者能力を喪失し漂流するかに見える鑑定協会の現状」を嘆くのである。
 それにつけても思うのであるが、このような屋上屋を重ねるような制度創設が本当に役立つのであろうか。それでなくともデスクワークに偏重し、鑑定士スピリットの養成がなおざりになっていると云われて久しいのである。
 この際はやはり「レビュー制度創設」を鑑定協会統一目標として掲げられないものだろうか。
 不動産鑑定評価レビュー関連の記事 
不動産鑑定評価書のレビュー(審査・批評)業務のご案内」、
米系不動産ファンドの日本不動産投資戦略」、
「求人情報・シニア・インベストメント・マネージャー」
 何よりも、「平成17年度 不動産の証券化実態調査」が示す状況を単に業務環境の拡大傾向とだけ受けとめずに、その背景や内訳を含めて真摯に検証することが「国民の負託」に応えてゆくこととなるのであろう。
また新スキームについては、07/07付けにて「平成18年1月〜3月分の土地取引価格情報」が公表され一日当たり15万件のアクセスがあるそうだ。順調に推移する新スキームを全国に展開させる為にも、一連の問題への適切な対応が期待されるのである。

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