公示オンライン化-3

 改めてインフラとしての士協会ネットワーク整備問題を考えてみたい。鑑定協会ネットワークといわずに士協会ネットワークシステムと呼称するのは、士協会がそれぞれに自主性、独立性、独自性を維持することが重要と考えるからである。その上で各士協会ネットワークが互換性を維持し相互交流すればよいと考えるのである。


 情報通信網としてのネットワークは、港(海運網)、空港(航空網)、鉄道網(新幹線等)、道路網(高速道路等)と対比できるであろう。各エリアにおいてその全てを充実することが望ましいが、立地条件や費用負担の面から全国一律に全てを整備するのは不可能である。空港や海港の無い県は存在するし、新幹線の無い県も存在する。
 情報ネットワーク整備も対象圏域の大きさ、会員の多少、対象会員の構成内容等に応じて様々なスタイルが検討できるし、そのスタイルにはそれぞれ長短が指摘できるのである。例えば数百名を超える会員数を擁しておりオフ会など考えられない会におけるネットワークの在り方と、百名未満の会員数でオフ会が恒常的に開催され会員の名前と顔が一致する規模の士協会におけるネットワークの在り方は自ずと異なるのである。
 それはID・PWの管理方法からして異なるであろうし、グループウエア、メッセージボード、ファイル管理等の各セクションにおいてもスタイルが異なってくるのはやむを得ないことである。
 情報流通ネットワーク構築の事業目的は何も地価公示の為だけではないのである。前述のように地価調査もあれば、相続税評価もある。取引事例の安全管理やオンライン閲覧提供もある。何より会員間の双方向性を十全に維持したフラットな情報交換システムでなければならない。そこにある種の限定された利用目的に対応するネットワーク構築は非効率であり、縦割り行政の弊害を示すものとなるであろう。
 
 先のネットワークの在り方論から「公示オンライン化」を見てみれば、この関係がよく判るであろう。システム管理者が毎年々々流動する三千名の評価員を効率的に、時に効果的に管理するシステムを考えようとするのは至極当然のことである。IDとPWの先にアナログ的思考も管理も存在し得ないのであり、何処まで行ってもその先は無味乾燥なデジタルの世界なのである。
 とすれば、結論は見えてくるのであり、ネットワーク構築は官主導でなく、鑑定協会主導でもなく、士協会主導でなければならず、会員主導でなければならない。それは、船便網、鉄道網、航空網、高速道路網を比較すれば理解できるであろう。それぞれに長短が存在するわけで、我々はどのスタイルが与えられるかではなく、我々自身が選択するかであり、自己負担と自己責任においてどのような選択肢を用意できるかなのである。
 結論的に云えば「地価公示のオンライン化」のみを目標としてネットワークを構築してはならないのである。公示のオンライン化はネットワーク構築後の事業目的の一つに過ぎないのである。両三度繰り返すが、廉価、安全、簡便で且つ自主・独立して運営される士協会主導のネットワークシステム構築が大命題なのである。自己負担と自己責任においてネットワークインフラが整備構築できないようであれば、後はもって瞑すべきと云わざるを得ないのである。
 誤解の無いように付け加えておくが、茫猿は公示業務のオンライン化に反対なのではない。進むべき方向だと考えるし賛成でもある。またネットワーク構築を推進する一つのエンジンとしても「公示オンライン化」は重要である。しかし、優先順位は士協会の自主独立ネットワーク構築が一位であり、次順位が公示オンライン化なのである。管理強化を助長するのみのオンライン化に陥ってはならないのである。ネットワーク構築の財政的な問題については稿を改めて論じてみたい。
 ところで最近は鳴りを潜めている、鑑定士会化とか鑑定士法制定を標榜している方々に伺いたい。我々自身の財政負担無き事業には、事業裁量権もないのである。所管庁に負んぶに抱っこは楽だけれど、将来の発展性が見えないのであるし、その生殺与奪は管理者の意のままとなる。
 ネットワーク構築という鑑定協会・業界の情報動脈整備を他者に委ねていて、それでいて我々の自主とか自治というものが確保できると考えるのであろうか。考えているとすれば、とてもおめでたい人々と云わざるを得ない。
 システム造りもサーバ管理も、情報管理も第三者に委ねてよいのか、事例情報も地価情報も全ての情報を第三者が管理する中央サーバに保管されれば、我々の手元には何も残らなくなる。我々は著作権も版権も得られない鵜飼いの鵜に過ぎなくなるが、それで佳しとするのであろうか伺いたいものである。表現がラジカルに過ぎるかもしれないが、問題の在処に気づいて頂くためには、こうでも云わざるを得ないと云うのが、この問題に少なからず関わってきた茫猿の心底の感慨でもある。
【以下、次号に続く】

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