事象の連鎖-1

 鑑定業界には相も変わらず、様々な問題が存在する。そして、これら数多くの問題はそれぞれが別個に存在しているのではなく、多くの場合にそれらは互いに連鎖し連関しているのである。さらにこれらは幾つかの原理的或いは基本的な原則を基盤として観測することが可能であり、そうすることにより問題の在り様がより鮮明に見えて来るとも云えるのである。

 例えば、昨日このような書き方をした。
『鑑定協会について何も話題が無いわけではないし、俎上に挙げたい話題にはこと欠かないのである。しばらく前に記事にした「評価モニター制度」問題をはじめ、「公益社団法人」問題、「連合会化」問題、「新スキーム全国展開」問題、「地価公示オンライン化」問題、「士協会ネットワーク構築」問題、「様々な局面での入札実施」問題、「慢性的な官公需業務縮小」問題、「慢性的な業務報酬低落」問題、等等々々々。 挙げればきりがないけれど。今は夏、しばらくは休もうと存じ上げ候ということである。』

 公益社団法人化問題と協会の連合会化問題は、組織の根幹に関わる問題ではあるが、実は目的とする問題ではない。鑑定評価が目標とする「適正な不動産価格」の追求に資する適切な組織形成なのであり、手段ではあるが目標や目的ではない。いわば、組織は事業目的の為に存在するものであり、事業目的にそぐわなくなればその存在意義を失うのである。組織の為の組織であってはならず、鑑定士の為の、鑑定評価の為の組織でなければならない。
 組織のための組織論というものは、往々にして陥りやすい現象でもある。例えば、「公益法人制度改革への対応方針について(第一次報告)(H19.3.20)(鑑定協会会員専用サイト:留意事項等資料:末尾・その他資料)に掲載」には、以下のような記述が認められる。
P14(1)一般社団法人よりも公益社団法人の方が社会的信用力が高くなる。
 語るに墜ちたとも云えるのである。公益社団法人化して公益事業を拡充することにより社会的信用力を増してゆこうとするのが鑑定協会の目的なのであり、公益社団法人という名称を得れば社会的信用力が増すなどと考えて公益法人化を考えれば、考えたその瞬間から我々の堕落が始まるのである。
P20-4.公益認定要件について
a.事業項目の内、どの項目が「公益法人法:第2条:別表各号」に該当するか、その根拠理由について公益認定等委員会に説明できるようにしなければならない。
b.鑑定協会については、地価公示受託事業が公益目的事業として認められるかがポイントとなる。
b.鑑定士協会については、地価調査受託事業及び固定資産評価業務が公益目的事業として認められるかがポイントとなる。
 公益性認定については、虎ノ門界隈に星の数ほど存在する社団法人や財団法人の多くについて公益法人認定を行うべきことが要請されているという現実の背景を考えれば、上記a~c項の実現ハードルはそんなに高くないであろうが、地価公示はともかくとして現に競争入札対象となっている地価調査と固定資産評価業務には問題を内在させていると云えよう。
 即ち、公益事業に収益性や競争が馴染むかと云うことである。究極の公益事業であるところの「警察」、「消防」、「救命救急」を比較対象として考えてみれば直ぐに理解できることである。公益性とか公益事業というものは、収益性とか競争原理というものの対極に存在するのである。ただし、経済合理性を無視しろと云うのではない。どういうことかと云えば、富士山頂から救急救命センターまで要する時間距離を東京都区部内と同等にしろと云うようなことである。
【この件は改めて論じたいと思う。今日はこれまで】
 羽島市桑原町の大賀ハスである。今年は先日の台風の影響で花も葉もいささか痛んでいるが、二千年前、縄文の昔を今に伝えて美しい花を咲かせている。

 

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