事象の連鎖-2

事象の連鎖-1に続く記事である。前号では今話題の組織論を取り上げた。公益社団法人化問題である。今号では連合会化問題と新スキーム問題とモニター制度創設を考えてみたい。


連合会制移行問題は簡単である。公益法人化問題と新スキームとモニター制度などの事象・事項を機能的かつ円滑に運営してゆくために、現状が望ましいか連合会化が好ましいかという視点からの選択なのである。
ユメユメ忘れてはならないのは、連合会化するのが時代の潮流だからとか経済的だからなどという理由で選択してはならないということである。鑑定業界の事業目的実現により好ましい組織はいずれかという検討以外に選択肢はないのである。
さて、新スキーム全国展開である。先日もこんなボヤキを聞いた。「こんな問題を士協会で扱わなければならないのか?」、「負担ばかり増えて、やってられない!」、いずれも前々から聞こえてくるボヤキである。
多くの地価公示評価員は間違えているというか知らされていないのである。
新スキームは事例調査の負担を増したように見えるが、実は通年分散化なのであり、照会郵送費などの負担を増したように見えるが、実は回収データの増加という効果を得ているのである。もちろん、それだけに留まらない。
「新スキーム」は「取引価格情報開示制度」の一環であり、市民サービスの一環を地価公示評価員が担っているものである。同時に見落としてならないのは、取引事例資料の共同利活用という事象である。新スキームの全国展開により「少なくとも地価公示評価員である鑑定士」は、デジタル化された事例資料をほぼリアルタイムに共同利活用できる状況に至ったということである。
この一事だけを見ていては理解できないかもしれないが、従来と比較すればその歴史的転換が一目瞭然なのである。
従来の地価公示資料の共同利用スタイルは、公示価格公表後一ヶ月程度経過した後に「紙複写資料」を士協会事務局にて閲覧利用するというのが一般的であった。つまり最終最新である前年11月データの利用が可能になるのは五月の連休明けくらいになるのである。前年6月、7月データに至っては十ヶ月遅れと云うことになる。鮮度も何もあったものではない。
ところが、新スキームでは、照会・回収・調査・確定という過程を(取引発生後)約三ヶ月以内で終了するから、今のシステムで考えられる最短時間で総ての資料の共同利活用が可能なのである。勿論、この新スキームデータ共同利活用実現の為には整備されなければならないサポートシステムがある。しかし、デジタル化された異動通知情報からスタートし照会回収結果のPDF化、(新スキーム)オンラインネットワークによる調査結果の入力確定という作業工程確立なくしては実現し得ない事象である。
既に先行試行する幾つかの士協会では(サポート)オンラインネットワークを構築して、これら新スキーム資料のオンライン・リアルタイム共同利活用を実現しているのである。このことはネットワーク構築という手段が必要であるが、その結果として地価公示のオンライン化が実現するものであり、最大の事業効果は「新スキーム資料のリアルタイム(常時更新)共同利活用実現」にある。
理解して頂けるであろうか、新スキーム全国展開が目的なのではない。ネットワーク構築も手段にしかすぎない。地価公示のオンライン化などというものは「この目的」のサポート或いは付随効果にしか過ぎないのである。間違っても「地価公示オンライン化」のためにネットワーク構築を考えてはならないのである。
事業目的は新スキーム資料の迅速かつ効果的な共同利活用の実現にある。実現の方法や細部は各都道府県士協会によって異なるものであろう。それぞれの地域環境や歴史的経緯が異なるから、一律を求めるのは角を矯める行為でもあろう。多少の相違はあっても「新スキーム資料の迅速かつ効果的な共同利活用」が実現すれば、それでよいのである。

さらに、共同利活用はこれだけに留まらないのである。デジタル環境やオンラインネットワーク環境の実現は、「豊富な資料を基礎とする社会への情報発信」や、「豊富な資料を効果的に活用する市場資料分析法」などの次世代型比準価格の開発に向かうであろうと予想するのである。これは予想ではない。我々不動産鑑定士は、デジタル化された大量の市場データを基礎とする価格分析手法開発に直ちに着手すべきである。
新スキームは「取引価格情報開示制度」という別の一面を有している。これら開示情報を利用した地価分析研究が既に始まっているであろうし、それが公表されるのもそんなに遠くないであろう。

 鑑定士にとって連鎖する事象のうち、一つの大きな目標は、『次世代型比準価格の開発』なのであろうと、茫猿は信じる。その目標は、新スキーム、ネットワーク構築、地価公示オンライン化、士協会連合会化、公益社団法人化などの連鎖のゴールに位置すると考えるのである。

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