十年一昔

 十年一昔というから、もうしばらくで一昔である。1999年4月7日付けで立候補届を提出して約一ヶ月間の鑑定協会会長選挙を戦ってから、既に八年余を経過した。当時二期四年を終え三期目を目指す現職会長であった安藝哲郎氏に挑んだ選挙戦は、身の程知らずと云えば身の程知らずであり当然のごとく敗れたが、選挙結果はそれほどに惨めなものでなかったと今でも思っている。


 何よりも地盤も看板も鞄も無い鄙の無名人にしては、善戦敢闘したと云えるのではなかろうか。地元はじめ多くの支援者もそのように評価してくれたし、自身で今もそう自惚れている。このあたりは、「一石を投じることはできたか」や、「終わりは始まり」に記すとおりである。当時の出馬のいきさつは、「勝てっこない」をはじめ、このブログ「1999/03~1999/04」記事に記していますから興味があればお目通し下さい。
 ところで今頃、なんで一昔も前のことを書き連ねているのかと云えば、「新スキーム全国展開とRea-Net構築」が稔りの時を迎えているからである。当時、茫猿が選挙公報や全会員に郵送配布した立候補趣意書に述べた事業は次のとおりである。そして、その後もことあるたびに提唱し続けてきた事業である。茫猿が提唱し続けたなどと云うのは烏滸がましい限りであり、時代の潮流や鑑定協会歴代執行部のご尽力や関係官庁の理解があってのことである。でも、一昔前から唱え続けてきた事柄がようやく陽の目を見る時が来たと思えば、それはそれでとても嬉しいのである。
【99/04に作成した立候補挨拶『鄙からの発信』を開く】
【協会配布の選挙公報を開く】

 鑑定評価の将来と社会のニーズに対応するためには、基礎的データと鑑定士相互間のネットワークをそれぞれ整備充実させることが緊急の課題であり、各単位会を事業主体とする次の事業につきまして、鑑定協会支援に着手します。
(1)単位会のコンピューターネットワークの整備充実を支援する事業
 インターネットやイントラネットを整備し、公的評価の情報交換及び会議連絡業務をそれぞれ合理化し、鑑定業界内の情報受発信を活性化しますと共に、対外的な情報発信を充実することが急務と考えます。これら各単位会の情報ネットワーク整備事業を支援し、協会諸事業の活性化と合理化を図ります。
(2)単位会の、土地情報収集体制の充実を支援する事業
各単位会の土地取引情報の収集調査体制の充実を支援します。取引全数調査による、土地センサスの実現を目標とし、公益に資するようにします。又、取引情報の有効活用を行い、近い将来に実施が予見される取引情報公開制度導入に備えます。
(3)単位会の、地図情報システム導入を支援する事業
地価公示・地価調査・相続税標準地・固定資産税標準宅地等、公的評価標準地のデータファイルと位置図を整備してCD-ROMに搭載する各単位会事業を支援します。この事業は鑑定評価の精度向上に資すると同時に、将来的に鑑定評価業務の業際的業務拡大を指向する有力なツールとなり、社会に貢献できる事業でもあると考えます。

 掲げた三つの事業の内、(1)コンピューターネットワークの整備事業は、「Rea-Net構築」として結実しようとし、(2)土地情報収集体制の充実事業は新スキーム全国展開として結実しようとし、次は悉皆調査を基礎とする土地センサスや地価インデックスが視野に入りつつある。(3)の地図情報システム導入も、既に少なからぬ士協会で事業化されつつある。
 一昔前の選挙を終えた後、当時はブログではなくホームページとメールマガジンであったが、『鄙からの発信:一石を投じることはできたか』を通じて全国の支援者各位に茫猿はこう約束したのである。

 インターネット・メールやホームページを最大のツールとして選挙運動を行うつもりが、(誤算は、)インターネット接続率が予想以上に低かったことです。この情報整備の立ち遅れを警告することも、立候補主旨の一つではありましたが、インターネットは集票マシーンとしては力を発揮できませんでした。
 いずれにしましても、全国各地からの御支援や御提案を抱いて、私なりの立場から
(1)コンピューターネットワークを基軸にした会員間の有機的ネットワークの構築
(2)土地センサス等、土地情報基盤の整備
(3)地図情報システムや数値比準表の基盤整備
 等の実現に向けて、委員会活動等を通じて微力を傾けて参ります。

 この約束を果たすために何ほどのことをしたなどと申し上げるつもりはさらさらございません。私が言い続けたせいなどでもない。それはよくよく承知しています。それでも、唱え続けてきたことが形になるということは、やはりとても嬉しいし有り難いことと思えるのです。
 また、九年前に全国の多くの方々から頂戴した物心両面にわたるご支援に、些かでもお応えできたのではなかろうかと思うのです。先ほど数えてみましたら、取引事例悉皆調査やネットワーク構築に係わる99年以来の『鄙からの発信』記事は百件を越えていました。よくもまあ、書き続けたものよとも思います。
 「森島は直ぐに切れてしまう。」という地元の批判は今でも根強いようですが、『鄙からの発信:カテゴリー:Rea-Net構築』検索結果を見てもらえば、押したり引いたり、切れたフリもしながら、以外と粘着質な森島の一面を見直してもらえないかなとも思い、独り悦に入っている彼岸連休明けの茫猿なのです。
 私的と云えば、あまりにもわたくし的な記事に、終わりまでお付き合い頂き、誠に有り難うございました。(合掌礼拝)
・・・・・・いつもの蛇足である。・・・・・
『ところで手前味噌で、自画自賛で、夜郎自大である上に、大いなる蛇足でもあるのだが、選挙パンフ、今様に云えば「マニュフェスト」の後半なのだが、いま読み返してみてもそんなに古びていないというのが、ある種怖くもある。』

3.将来の連合会のあり方については次のように行います。
 現在は年2回開催の部会長会を、単位会・会長会として拡充し、少なくとも四半期毎に開催して単位会の情報交換並びに交流の場を充実すると同時に、鑑定協会の運営に単位会の意見を直接に反映できるようにします。そして、鑑定協会と単位会がイーコールパートナーとして鑑定業界のパラダイム転換に取り組める体制を創ります。

Q2.森島信夫は岐阜に在住して、会長職をどのようにして執務するのか?
 インターネットやファクシミリネットを利用して、毎日、必要な指示・審議・決済を行います。同時に、会長メールアドレスを全会員に公開して、直接に会員と対話をします。又、理事会等の日程に合わせて、月に一週間程度は東京並びに本会事務局に在勤して、業務推進活動の先頭に立ち、鑑定評価及び関連周辺業務の拡充に努めます。
 誠に借越ですが、不動産鑑定評価の明日を考え、あなた自身が不動産鑑定評価の将来のために一歩踏み出すことは、あなた自身の為だけでなく、あなたの友人鑑定士・士補のためであります。最も大事なことは、この一歩こそが「未だ見ぬ若き鑑定士の卵達」のための行動でもあることです。
「土地政審の意見」にみられる通り、比準重視から収益重視への流れ及び取引情報公開の流れの、両流は止めようもなく、又、社会の目指すところでもあります。さらに、我々鑑定業界を取り巻く世の流れは、コンピューターネットワークへの流れであり、情報公開と情報共有への奔流だと思います。
しかし、世の中がいかに変わろうとも、変わってはならないものもあります。この変わるべきものと、変わってはならぬものを見極めることが大事であり、激流に翻弄されることなく、漕ぎ渡ることこそが今求められているのだと思います。

終わりに
 今回の選挙で、私はメディアミックス型の情報受発信の実験を兼ねた活動を行いたいと考えております。同時にインターネット上の鑑定士交流集会実験も行いたいと考えます。様々なご意見並びに私へのご批判、ご指示、ご支持、何でも結構です。下記にお寄せください。お寄せ頂いた、ご意見には、必ず御返事申し上げます。尚、各推進事業の詳細等については、ホームページ『鄙からの発信』を御覧下さい。又、お寄せ頂いたご意見につきまして、『鄙からの発信』へ掲載をご了承頂ける場合は、その旨を附記して下さい。

追伸
昨夜の月である。
「月々に 月見る月は 多けれど 月見る月は この月の月」(詠み人知らず)
とは云うものの、公益法人改革問題への反響は僅かであるし芳しくない、
「溜息と眺め入る この月の月」である。じっと月を見る。

「万葉集からいくつか」
月夜よし 川の音清し いざここに 行くも行かぬも 遊びて行かむ
秋風の 吹き抜き敷ける 花の庭 清き月夜に 見れど飽かぬかも
天離る 鄙にも月は 照れれども 妹ぞ遠くは 別れ来にける
「戯れ歌を一首」
秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 今朝のウオシュレット 水の冷やさぞ

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