惻陰の情

 畏友堀田氏の時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]の12/18記事のタイトルは「子どもが見ています」である。「子どもが見ています」と言われて、恥じ入るだけの心根があれば、様々な不祥事など起こさないであろう。多分、彼らは「子どもが見ています。」となじられても、「子どもに分かりはしない」と、せせら嗤うだけだろう。  「子どもが見ています」という叱責は躾の基本である、子供達をしつけるには大人が立ち居振る舞いを正してゆこうということである。政府高官にそう言わざるを得ないのはとても哀しいことである。


 官僚トップの事務次官が夫婦連れでゴルフ旅行に接待されても何の痛痒も感じないご時世である。部下は灼熱のアラビア海のフライパンみたいな甲板で給油作業に従事していたと云うに。
 昨夜(07/12/19)のNHK特集で元社会保険庁長官・持永和見氏がインタビューを受けていた。彼は薬害エイズ当時の薬務局長であり、社保庁長官であり、多額の退職金を得た後は衆議院議員に転じた方である。彼がいかにも他人事のように薄ら笑いを浮かべながら年金ファイル5千万件不明事件の背景を語るのを聞いていると、怒りよりも情け無さが先に来た。
『不明年金ファイル問題についての政府対応』

「宙に浮いた年金記録」5000万件のうち4割近くの持ち主の特定が困難なことが判明した問題で、舛添厚生労働相が12日の衆院厚労委で行った「コンピューター上の記録と紙台帳との照合作業を2年以内に完了する」との公約は、実現困難であることが14日わかった。持ち主探しには、コンピューター上の3億件の年金記録と原簿の紙台帳8億5000万件分との照合作業が不可欠だが、厚労省は08年度予算で、国民年金の紙台帳の一部3300万件分の照合にかかる費用しか現時点では計上しない方向のためだ。 (asahi.comより) 

 福田首相は17日、年金記録問題をめぐる政府・与党の対応が「公約違反」と批判されていることに関連して、「党のビラで誤解を招くような表現があったのは事実。おわびを申し上げなければいけない」と陳謝した。舛添厚生労働相は5000万件の「宙に浮いた年金記録」のうち4割近くで本人の特定が困難と発表、参院選時の「最後の一人までチェックし、支払う」という公約の実現は絶望的になっているが、首相は公約の撤回には触れず、引き続き名寄せ作業に取り組む姿勢を強調した。 (asahi.comより) 

 福田総理の対応も舛添厚生労働大臣の対応も不満とか怒りを通り越して、いいや、あまりにも予想通りの三百代言的対応だから情け無くなる。我々はこの程度の総理や厚労大臣をいただいているのだ。厚労大臣と入力すれば『功労大臣』と変換されるから、なおのこと腹立たしい。
 この日本という国は一発試射の代金六十億円もの迎撃ミサイル発射実験に使う金はあっても、薬害C型肝炎患者を等しく救済するお金は無いのだ。バランス感覚も惻陰の情も持ち合わせない、なんと情け無い国に成り下がったものだ。(惻陰の情:困っている人を見捨てておけない心情)
 素人の茫猿ですら『見えない年金問題』や『お馬鹿な年金問題』記事で当初から問題点を指摘してきたのに、政府は選挙対策やら問題を糊塗することばかりに意を用いてきた結果が「公約違反」と指摘される現状を招いているのである。
 『疲弊する精神』で、『ワーキングプアⅢ』で、茫猿が伝えたかったことを、堀田氏は、過不足無く書いて頂いているので、引用させて頂きます。
時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]の12/18記事より引用

 ただでさえ、収入が不安定で年金保険料など払えない若者が多いご時世だというのに、こんなことが続くと、ますます年金制度に対する信頼がなくなり、払わない人が増えるに違いない。
 私は、国民年金も健康保険料も介護保険料も、すべてきっちり、夫婦二人分支払っている。
 では、年金制度を信頼しているのか?といえば、実はまったく信頼していない。将来もらうこともあまり考えていない。定年のない仕事をしているので、死ぬまで働きたいと思っているからだ。
 それなのに律儀に年金保険料その他を支払っているのは、今現在の受給者を支える義務が、私たち現役世代にはあると考えているためだ。つまり、税金と同じだと思っている。
 最近、「日本人の情」なんてことをやたら言いたがる復古趣味の方々が多いが、この私くらいの愛国心は当然お持ちなんでしょうなあ。

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