第262回本会理事会報告(2008.05.20開催)が中部会から送られてきた。そのなかに興味を引くというか見過ごせない一節が掲載されていた。
1.審議事項議題(3)REANETの実施について
すでに昨年9月の理事会で運営実施が決定しているREANETの実施について再度、説明及び詳細な規定案が提示された。すでに愛知県も事例閲覧は当該システムを利用しているので、とりわけ違和感はないが、地方の理事から何回もまたしつこく「REANETで地方の事例データが外部(=東京)鑑定士によって閲覧できないように保証を求める」旨の意見や質問があった。
緒方副会長が常務理事会等で「個人的な要望としては」「東京で地方の事例データを閲覧できたらいいな」の趣旨の発言があったとかで、これに対する反発意見も地方理事から出された。
個人的見解では、いったんシステムを構築してしまえば、運用は少々の改良ですぐにでもどうともなるので、近い将来、地方の事例データが東京で見られる時期は免れない観がある。そもそも取引事例データは一体誰のものなのか? その点では取引事例データのみが地方鑑定士にとって最後の生きる術という事実も理解できるし、緒方副会長の本音もよくわかる。
この件は、緒方副会長の意見は「舌足らず:説明不足」だし、地方理事の意見は事例閲覧オンライン化の意味も意義も理解されていないように思われる。
オンライン閲覧といえども士協会事務局閲覧と同様に有償であることは当然なのであり、閲覧場所まで出向く時間的労力や交通費等の出費を考えれば、オンライン閲覧は閲覧者の便益を向上させるものであり、ひいては閲覧件数の増加並びに閲覧料の増収につながるものである。当然に評価精度の向上に資するであろう。 評価基礎資料採集目的の閲覧だけでなく、広汎な資料収集目的の閲覧も増えるであろうと見込まれることからすれば、各士協会は所管資料のオンライン閲覧化に早急に踏み切るのが上策であろう。
言うまでもないことだが、REA-NETには資料閲覧に伴う閲覧料徴収システムもビルトイン済みである。最初からREA-NETは全国オンライン閲覧を前提にして構築されている。ただ、いつの時点からオンライン閲覧に踏み切るかは各単位士協会の自主的判断に委ねられているのである。
このあたりに関して、鄙の堂守は常日頃から「地方鑑定士」と「都会鑑定士」の軋轢は事例を開示するしないなどにあるのでなく、そもそも業務発注場所と業務現場が乖離するところにあるのだから、地方と都会がJVを組んで業務を行うべきと考える。 業務現場の所在する地方には最新且つ詳細な資料が眠っているのであるから、JVを組むのは至極当然なことである。それをパートナーシップなどという、中途半端で有害無益な制度を何年も維持しているところに問題の根源がある。 とはいうものの、気の利いた都会の鑑定士は、地方の鑑定士を既に一本釣りしてしまっているのが実態ではあるけれど。
ただ都会出身理事の発言として見過ごせないのは、「取引事例データのみが地方鑑定士にとって最後の生きる術という事実」というくだりは容認できない。『最後の生きる術』とは、あんまりな言い方であろう。チホウ(鄙)の鑑定士はそれほどに揶揄されるほどひ弱ではないし、チホウ(痴呆)でもない。何よりも、そのような思い上がった都会鑑定士の感覚こそが、地方の鑑定士の神経を逆なでするのである。
もう一つ緒方副会長も地方理事も、リポート作成担当理事も理解されていないことがある。それはセキュリテイに係わることである。オフライン閲覧(士協会事務局閲覧)によって生じた事故は、士協会の責任である。オンライン閲覧によって生じた事故はREA-NET管理者である鑑定協会の責任なのである。さらにオフライン閲覧においてトレーサビリテイが十全に確保されているか否かについての理解や認識が不足しているように思われる。
とにかく事故というものを100%根絶するのはおよそ不可能である。問題は事故の減少縮減に向けて、どのような手段を講じてきたかが問われるのである。それが「コンプライアンス」というものであろう。
瑞兆事件や桃福事件を見るまでもなく、『REANETで地方の事例データが外部(=東京)鑑定士によって閲覧できないように保証を求める』などという見当違いで浅薄な議論に理事会が終始しているとすれば、とても哀しく嘆かわしいことである。 何処かで誰かが事故を起こすまでは問題の本質が判らないのだとすれば、それは「センス・センサー・スピリット」に欠けるところ有りと言わざるをえないだろう。
2.報告事項議題、(1)委員会報告、G法務鑑定委員会
①自民党司法制度調査会「明るい競売プロジェクトチーム」への対応が報告された。民間競売を否定するにせよ、対案として当協会からなんらか提示をしなければならないとのことで、「任意売却の促進に関する提案」を作成した。この審議中、法務鑑定委員会の小谷さんがご自分の意見とは合わないとのことで委員長を辞める辞めないの紛争に至ったようである。
似たようなブラフまがいの話はあちこちに転がっているから、特にコメントするまでもないでしょう。
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