鑑定評価偽装事件Ⅱ

 証券取引等監視委員会:勧告事件の本質が何処に在るのかと云えば、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律施行令:第四条」に抵触する畏れが高いことにある。


08/06/17付けプロスペクト・レジデンシャル・アドバイザーズ株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」(証券取引等監視委員会)
 前掲、証券取引等監視委員会勧告と、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律施行令:第四条」との関連は以下に示すとおりなのである。

第四条(優先出資申込証に記載する特定資産の価格を調査する者)
 法第三十八条第二項第八号に規定する特定目的会社以外の者であって政令で定めるものは、次に掲げる者とする。
一 弁護士
二 公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第三項に規定する外国公認会計士を含む。)又は監査法人であって、法第八十七条第二項の規定により当該特定目的会社の会計監査人となることができない者以外のもの
三 不動産鑑定士であって、法第三十八条第二項第八号に規定する鑑定評価を行う者以外のもの(特定資産が不動産及び不動産を目的とする担保権により担保される指名金銭債権並びにこれらを信託する信託の受益権の場合に限る。)

特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律
第三十八条 優先出資の申込みをしようとする者は、優先出資申込証に、引き受けようとする優八 特定目的会社以外の者であって政令で定めるものが前号の特定資産の価格につき調査した結果(当該特定資産が不動産であるときは、不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえて調査したものに限る。)先出資の口数及び住所を記載し、これに署名しなければならない。

 要するに、法に規定される不動産の鑑定評価依頼を引き受けて不動産鑑定評価を行うものでありながら、不動産鑑定士として払うべき善管注意義務を果たしていなかった疑いが高いことにある。すなわち、不動産鑑定評価に関する法律第五条及び不動産鑑定評価基準第4節の規定に抵触する疑いが高いのである。

 「不動産の鑑定評価に関する法律」
第五条(不動産鑑定士の責務)
 不動産鑑定士は、良心に従い、誠実に第三条に規定する業務(以下「鑑定評価等業務」という。)を行うとともに、不動産鑑定士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

 「不動産鑑定評価基準:第4節不動産鑑定士等の責務」
 土地は、土地基本法に定める土地についての基本理念に即して利用及び取引が行われるべきであり、特に投機的取引の対象とされてはならないものである。不動産鑑定士等は、このような土地についての基本的な認識に立って不動産の鑑定評価を行わなければならない。
 不動産鑑定士等は、不動産の鑑定評価を担当する者として、十分に能力のある専門家としての地位を不動産の鑑定評価に関する法律によって認められ、付与されるものである。したがって、不動産鑑定士等は、不動産の鑑定評価の社会的公共的意義を理解し、その責務を自覚し、的確かつ誠実な鑑定評価活動の実践をもって、社会一般の信頼と期待に報いなければならない。
 そのためにはまず不動産鑑定士等は同法に規定されているとおり良心に従い誠実に不動産の鑑定評価を行い、専門職業家としての社会的信用を傷つけるような行為をしてはならないとともに、正当な理由がなくて、その職務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならないことはいうまでもなく、さらに次に述べる事項を遵守して資質の向上に努めなければならない。

 (社)日本不動産鑑定協会は早急に役員会を開催して、当該勧告に対する(社)日本不動産鑑定協会の対応方針を明らかにするとともに、関連するまたは関連したとみられる会員鑑定業者及び会員鑑定士に事情を聴取し実態を明らかにするよう求めるべきである。同時に他の投資法人に関連して類似行為の有無及びその実態を会員全業者を対象に調査すべきである。
 業務依頼者である投資法人側より鑑定業者に対して行われた「不当な働きかけ」の有無とは以下のようなものが考えられる。
・鑑定評価報酬についての見積合わせ依頼の有無及びその結果(a)
・概算評価及び鑑定評価額についての明示または黙示の示唆、指示の有無(b)
・鑑定業者が提示する概算価格如何によって業務依頼を行うという、依頼者の意思表示の有無(c)
・前二項に対して、当該鑑定業者が行った行為とその結果
 本来、鑑定業者は前(a)及び(b)二項に記載する働きかけがあった段階で、お付き合いを謝絶すべきである。a項はまだしも、b項の働きかけが在った場合は拒絶の対象となるものである。ましてやc項の意向が表明されていながら或いは黙示されていながら、概算価格を提示することも立派な関連する法令や鑑定評価基準違反行為であることに留意しなければならないのである。
 これらの法令違反行為や基準遵守義務違反や倫理綱領違反行為を看過すれば、不動産鑑定評価の自殺行為であると、我々不動産鑑定士は肝に銘記すべきである。自ら襟を糺すことが、今、社会が鑑定業界や鑑定協会に求めている最優先課題であることに我々は気付かなければならない。あれは一部の不心得者の行為と無関心を装うことは、自らを貶めることであることに気付かねばならないのである。鑑定士とても聖人君子ではない、茫猿もまた然りである。しかし、社会より与えられたその地位に鑑みてみれば、自ずと超えてはならない一線というものがある。
 不動産鑑定士は高度な倫理性と、高度な専門知識を有する専門職業家として、社会から信頼され特別な地位を与えられていることを改めて自覚しなければならないのである。今起きている事態に対して曖昧にして遅すぎる対応を行えば、社会の信頼も信用も失墜するものと覚悟しなければならないのであり、『Too Late & Too Fuzzy』であってはならないのである。
 茫猿は今さらに思うのである。DCF法特定価格のもたらす弊害を看過した我々の不作為の罪深さを思うのである。DCF法収益価格とは投資家に対して前提予測条件の変化に対応するシミュレーション結果を示し、それを精緻に説明するに有効な一手法なのである。それ以上でもそれ以下でもなく、直ちに或いは無批判に収益価格の精緻化を期すものなどでは決して、断じてないものであることを、もっと声高く云うべきであった。
 既に十年余も前から茫猿は特定価格導入のもたらす弊害やDCF法至上主義の欺瞞や砂上の楼閣同様であることを、このサイトを通じて指摘してきたが、それが十分であったかと云えば茫猿の遠吠に過ぎなかったことを、今さらにして思い知るにつけ慚愧に耐えないのである。
 斯界のリーダーたる諸氏に申し上げたい、「諸氏が日頃声高に云われるコンプライアンス」とは、社会正義に反する働きかけを拒絶することだけではなく、その事実を公表することにより、そのような反社会的行為を鑑定業界から根絶することにあるのです。概算価格高値提示競争から離脱し、「ヤセ我慢」をしていたなどと、今頃、シレッと言うことではないのです。
 斯界において一家言ある者として評価され、サイトを通じて様々な意見を表明されている諸氏に申し上げたい。 (このサイトのカテゴリー:鑑定士onWWWで紹介している各氏のことです。) 今こそ諸氏の存念を iNetを通じて公表する時です。サイトを立ち上げながら、「沈黙は金」などとこの事件を黙殺するのであれば、即刻サイトを閉鎖すべきでしょう。 それこそが、あなた方のセンサーとセンスとスピリットの有り様が試されていると知るべきでしょう。
【参考資料】
「(社)日本不動産鑑定協会公式サイト:証券化鑑定コーナー」
 このコーナーのなかのQ&Aでは、以下の項目について説明しています。
第1章 証券化対象不動産
 Ⅰ 証券化対象不動産の範囲
 Ⅱ 証券化鑑定基準の対象とならない鑑定評価の取り扱い
第2章 証券化対象不動産の鑑定評価の基本的姿勢
 Ⅰ 不動産鑑定士の責務
 Ⅱ 説明責任
 Ⅲ 複数の不動産鑑定士による評価作業
第3章 処理計画の策定
 Ⅰ 処理計画の策定に当たっての確認事項
 Ⅱ 確認事項の記録
 Ⅲ 途中経過の記録
 Ⅳ 利害関係等
第4章 証券化対象不動産の個別的要因の調査
 Ⅰ 対象不動産の個別的要因の調査
 Ⅱ 実地調査についての記載
 Ⅲ エンジニアリング・レポートの取り扱いと不動産鑑定士が行う独自調査
第5章 DCF法等の適用
 Ⅰ DCF法の適用過程等の明確化
 Ⅱ DCF法等の収益費用項目の統一等
第6章 定期的な実務の状況の把握
第7章 施行期日

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鑑定評価偽装事件Ⅱ への1件のフィードバック

  1. 地方鑑定士 のコメント:

    私も当県選出の本会役員を通して、全会員を対象とする実態調査の実施を働きかけるつもりです。また、調査結果の公表と対応方針の表明を求める予定です。会員各位が事態の重大性を認識し、鑑定評価制度を維持するために、叡智の結集を図ることが重要だと考えます。各県の県士会長が独自に声明を発表することも必要と思います。

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