鑑定評価偽装事件Ⅲ

 当鄙からの発信サイトは、「08/06/17付けプロスペクト・レジデンシャル・アドバイザーズ株式会社に対する検査結果に基づく勧告」(証券取引等監視委員会)について、既に二本のエントリーを掲載しているが、この事件について、Web検索していたら自サイトの過去記事がヒットした。


【証券取引等監視委員会】勧告
08/06/17付けプロスペクト・レジデンシャル・アドバイザーズ株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
株式会社ダヴィンチ・セレクトに対する検査結果に基づく勧告について」 (2007年2月14日)
【鄙からの発信:関連過去記事】
2006年07月27日:鑑定協会執行部への質問とご回答(1)
2006年07月27日:鑑定協会執行部への質問とご回答(2)
2006年07月27日:鑑定協会執行部への質問とご回答(3)
2007年02月16日:リート会社に行政処分勧告
2007年02月16日:リートと鑑定評価
2008年06月22日:評価額の見積合わせ
2008年06月23日:鑑定評価偽装事件
2008年06月25日: 鑑定評価偽装事件Ⅱ
 以上のリンクする過去記事については、あえてコメントはしない。でも注目してほしいのは、06/07/27、つまり二年前に鑑定協会執行部より頂いた回答が教訓として何も生かされなかった結果が、今回の事件背景にあるということです。特に「鑑定協会執行部への質問とご回答(2)」は、「06.07.08日経記事:証券化に伴う新資格創設を」を受けての質問である。
 なかには事態の把握状況を疑いたくなるノンビリした回答もあるが、総じて真摯な決意が読みとれるのである。

不動産の証券化に関連する鑑定評価に当たっては、証券取引等監視委員会並びに国土交通省の指摘のとおり、鑑定協会会員に対する倫理の更なる啓蒙を行わなければならないと思っております。その方法については、常務理事会、理事会等で検討されました。

「これらを踏まえ、金融庁から、国交省土地政策課への圧力が強く、局長通達となったと思います。鑑定協会も遅れていますが、会長を委員長に据え、証券化関連の特別委員会が近く発足します。色々問題がありますが、杞憂に終わるように対応していますので、よろしくご理解を賜りますようにお願いします。」

「私たち不動産鑑定士においても技術基準の向上及び倫理向上による自己規律化が喫緊の課題といえます。 本会としては、これらの問題に対処するため、今月4日に開催された第376回常務理事会において「証券化関連鑑定評価の水準向上及び適正確保に関する特別委員会」(委員長:横須賀会長)の設置が承認されました。 私も当委員会の委員の一人としてこの問題の解決のために積極的に取り組んでいくつもりです。」

「たとえば、証券化評価の信頼性を高める評価基準の見直し、証券化評価データの蓄積と会員への公表等は、特別委員会で検討できると思います。
また、評価書の公開レビュー制度が、どのような内容のものかよく理解しておりませんので、意見を申し上げられませんが、レビューをどのように行なうのか、リート評価に限るのか、私募ファンドも含むのか、誰がレビューするか・・・。監査報告書のレビューのような方策が、協会で実行可能なのか。これが実現すれば、何もいうことはありません。」

「真しに協議し、鑑定協会指導部としての責任を取り辞任すべきです。本件については、平成18年7月18日開催の正副会長会議においてその旨提案しましたが、賛同は得られませんでした。全会員及び社会に対する指導部の一体責任として早急に対応すべきであると私は思います。理事会の一部には、すでにそのような声があがっています。」

 などと、当時の副会長各位からご回答を頂いているのは二年前である。当時から抜本的改善策が実行されていれば、今回の事件は起きなかったであろうといえるのである。さて、今回はどうなるのか、注目されるのは7月1日(火)開催がサイトで予告されている協会正副会長会並びに常務理事会である。神戸会長の類い希なる指導力並びに突破力に期待したいのである。
 もう一点、注目して頂きたいのは、証券取引等監視委員会勧告の内容変化である。06年の勧告では「投資法人資産運用業に係る善管注意義務違反」を指摘し、「鑑定を依頼した不動産鑑定業者に対し適切な資料を提示しなかっただけでなく、適切な資料を提示しなかったことによって算定された鑑定評価の内容を確認しなかったことなどから、誤った鑑定評価内容が看過され、結果として過大に算定された鑑定評価額を基に投資法人の資産の取得を行うなどしていた。」と述べている。
 誤った鑑定評価が行われたのは不十分な資料開示のせいだとでも言うように読める。実態はそうではなく、所管外についてものが言いにくいだけであり、鑑定士の善管注意義務も問われているのである。資料不十分だから不動産鑑定評価も誤りましたなどと言えば、自らの不明や力量不足をさらけ出すだけなのであり、専門家としては恥ずかしいことである。
 当時、ダヴィンチ・セレクトとDAオフィス投資法人に関わる不備な鑑定評価問題に関して、鄙の堂守はこのように述べている。

デューデリ・リポートの不備を見抜けなかった鑑定側が落ち度を問われるのか否かというのは、今まさに開催されようとする「証券化対象不動産の鑑定評価基準」及び「実務指針(仮称)」に関する研修会に関わる問題である。
 騙した方が悪いのか騙された方に落ち度があるのかという問題なのかもしれないが、ここで問われるのは『不動産鑑定士は専門職業家』であるということであり、「一旦発行された鑑定評価書は、専門家の判断であり意見として社会に流通してゆく。」ということなのである。

 さて、巷間で囁かれているのは、昨今の経済情勢や蔓延するREITの行儀の悪さからすれば、鑑定評価に関連する三回目の監視委員会勧告は近いであろうということである。そして三回目は仏の顔も三度までなので、三度目は鑑定業者の実名入り勧告が公表される可能性が高いと言うことである。
 協会サイトの予告によれば、7/1は定例の正副会長会並びに常務理事会が開催される。そこで、どのような協会声明が用意されるのか、どのような対応策が審議決定されるのか、注目したいとなどと他人事のように云うよりも、抜本的改善策を示してほしいと願うのであり、神戸会長の類い希なる指導力と突破力に期待するのである。
 それこそ、REITバブルに狂奔した一部不心得者のために鑑定業界が沈没させられてはたまらないのである。ただいま業務遂行中の2008年地価調査は全国的に地点数が縮減されているが、一部の県では大幅削減が実施されたという。地方財政逼迫のおりから、2009年地価調査は全国的な大幅削減もあり得る状況である。さらに2012年固評評価替えの雲行きも怪しいのである。
『今改めずして、いつ改める。』 そんな心境に茫猿はいる。 そして今度こそ『Too Late & Too Fuzzy』を打ち破ってほしいと願っている。
 

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