Nスペ・激論2009

 元旦の夜、9:00から二時間にわたって放映された「NHKスペシャル、激論2009 世界は何処へ、そして日本は」は、そんなに期待せずに見た、小泉改革のプロデューサー竹中氏と反小泉改革の旗頭金子氏の議論がかみ合うとは思えなかったからである。 でもこの二人が同じ画面に登場し議論を交わすというのはしばらく見なかった絵柄である。 放送が始まってすぐに幾つか面白いことに気付いた。


 登場した方々は次の通りである。 三宅アナウンサーは、こういった討論の場では得てして中途半端な割り込みをしがちである。ひとり三宅氏だけではなくNHKのキャスター固有の特性ではあるのですが、今回はそれ程でもなかった。 たぶん「金子+山口+斎藤」対「竹中+岡本+八代」の論争に不用意に割ってはいるのは余りにも危険だと感じたからであろう。
『出演者』
(キャスター)三宅民夫アナウンサー
        リサ・ステッグマイヤー(タレント)
(出演者)  岡本行夫(外交評論家) ネクタイ派・小泉改革派、右派
        竹中平蔵(慶應義塾大学教授) ネクタイ派・小泉改革派
        八代尚宏(国際基督教大学教授) ネクタイ派・小泉改革派、右派
        金子 勝(慶應義塾大学教授) ノーネクタイ派・非小泉改革派
        斎藤貴男(ジャーナリスト) ノーネクタイ派・非小泉改革派
        山口二郎(北海道大学大学院教授) ノーネクタイ派・非小泉改革派
        勝間和代(経済経論家) ただひとりの女性、ただひとりの40代・中間派
 三宅&リサMCを中央に画面右方が竹中、岡本、八代が着席する。いずれも小泉改革以来の政府審議会等委員であり、骨太の規制改革案の起草に大きな影響を与えた方々である。 いわば現在の格差とか派遣切りに少なからず責任を問われる方々でもある。三氏はいずれもネクタイ着装で着席されていた。
 対してMC左側には、金子、山口、斎藤の三氏並びに勝間氏が着席する。女性の勝間氏を除いて男性三氏はいずれもノーネクタイ姿である。 これがNHKの演出ならば面白いし、演出でなければそれはそれでスゴイことと云える。
 論争はそれ程にはかみ合わなかった。一つはディぺート力において、竹中組がやや勝ったと見えることにある。ディぺート力と表現するのが金子組にとって不本意であるならば、竹中組の議論の的はずしの巧さ、あるいは論点すり替えの巧みさといってよいであろう。別の表現をすれば、ワンフレーズ議論というかアジテーション力の巧みさと言ってもよかろう。
《09.01.03追記》
 この竹中氏のディぺート力やすり替え論理については、『こちらのサイト』に詳しい。
 このすり替えあるいはアジテーションを端的に象徴するのが岡本氏が言うところの、「日本の周辺隣国が攻めてきたら、ミサイルを撃ち込んできたら、なされるがままに日本人は逃げまどうことでよろしいのですか!!」という議論建てである。 この話がすり替えであるというのは、現実に中国や韓国や台湾やヴェトナムやフィリッピンロシアが日本に攻めてくるというのであろうか、可能性がこの先十年以内にあるというのであろうか。 かろうじて北朝鮮にその可能性が皆無とは云えないにしても、その軍事力や経済力からすれば、やはり可能性は皆無に近いであろう。 また、そのような軍事行動が起きるような緊張関係にも日本と周辺隣国はないのである。
 だから、起こりそうもないことを取り上げて、起きるぞ起きるぞとか、起きたらドウする、という議論建ては議論のための議論であり、社会を惑わす議論である。このようなアジテーションに惑わされてはならないのである。
 さて、二時間に及ぶ議論を締めくくる話として、三宅MCは出演七氏に今年のキーワードを聞いた。 竹中氏:リアリストたれ、岡本氏:世界の多様性を自覚せよ、八代氏:オープン化、金子氏:チェンジ、山口氏:共生・共感、斎藤氏:戦争自殺貧困の根絶、勝間氏:教育、そして教育であった。
 最後にMCリサ・ステッグマイヤー氏が「このような時こそ、前向きの気持ちを持つことが大切」と結んだのがとても印象的であった。 なお勝間氏の「教育、そして教育」というのは、何も学校教育とか青少年教育に限った話ではなく、国民全般の生涯学習なかんずく政治家の再教育や教養というものであると付け加えていたのが、とても興味深いことである。 また教育問題から派生して「海部美知氏著:パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」が取り上げられた。 若者の内向き指向が彼等の保守化のせいなのか、教育のせいなのか、閉塞感のせいなのか、これも興味深いことである。
《追記》
 当日の各氏のコメントについて、こちらのブログに速記が掲載されています。

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