政治は結果

菅総理の辞任に伴う民主党代表選出のドタバタを見ていると、鑑定協会の昨今に重なって見えて仕方がないのである。 所詮、国民は自らの民度に見合う政治しか得られないし、会員は自らの民度に見合う執行部しか得られないのだと思わされる。
政治は結果が総てであると云われる。 政治は様々な課題について優先順位を与え、妥協を図る行為であるとも云われる。 鑑定協会の運営もまたひとつの政治である、そこには直面する課題に優先順位を与え、会員の多様な利害と適切な妥協を図ることが求められる。限られたマンパワーと財政力を効果的に発揮させるためには優先順位のもとに人材と資金力を集中させなければならない。 妥協は野合とは似て非なるものであり、安易な妥協は野合に等しく、問題を先送ることに他ならないのである。


今の茫猿は協会理事の位置に偶々いるし、情報委員会の委員のひとりでもある。なまじっかコア情報を得易い位置にいるから、書きたいことも書かなければならないことも、残念ながら思うままには書けないのである。 だから公表されている事実をもとに今の茫猿の思いを書いてみるから、読者各位には行間を読みとって頂きたいのである。
今年の二月から三月にかけて、所管庁から問題点を指摘され(指摘されたようであり)、新スキーム特別委員会が設けられたのが四月から五月にかけてのことである。 慌てて問題点と問題解決の方向を取りまとめて発表されたのが、06/20 士協会会長会議にて報告された、「新スキーム特別委員会と不動産取引価格情報提供制度と題する資料」である。 その後新スキーム特別委員会は新スキーム改善特別委員会と名称を変え、委員会再編成を行い審議を重ねて今日に至っている。
しかし、その後は何も見えてこないし聞こえてこないのである。もちろん、漏れ聞こえてくる情報は幾つもある。しかし、公表情報は何もないのである。 06/20から08/25に至るまでの二ヶ月のあいだ、理事会は二回開催されたし、常務理事会は公表日程によれば三回開催されている。新スキーム改善特別委員会にいたってはその開催情報も審議経過も何も公表されていない。 直面する問題点も課題も「06/20資料」に網羅されていると考えます。されどそこには確固たるいいえ断固たる方針が示されていない、暗示はされていても執行部の明確な意志が読みとれないのである。
茫猿はなにも全てを公表しろと云っているのではない。しかし、会員の重大関心事であり、取引事例収集の今後に大きな影響を与えるだけでなく、鑑定協会のコンプライアンスを問われている事案について、二ヶ月ものあいだ何も公表が無いというのは如何なものかと問うのである。担当副会長と特別委員会委員長はこの二ヶ月のあいだ、全国各地を行脚して経緯を説明し、会員の意向を聞いて廻っていると聞きます。 しかし、全国行脚は全地域を廻ったわけではないし、そこでの質疑応答は何も報じられてはいないのである。
漏れ聞こえてくるのは、各地の士協会が従来からの事例管理権限を保持したいと云う要求(クロとまでは言わないが、グレーであり、正統性は認められない。)が強いと言うことと、改善案はその要求と妥協しながらも煩瑣な手続きを強化する方向が模索されているということだけである。 担当副会長と委員長は公表されているが、委員会構成は未公開のままであるし、まして審議経過は何も公表されていないのである。 鑑定協会公式サイトに掲示される「理事会・委員会報告」に掲示される最も新しい報告は「2011/05更新の理事会報告」であり、これは2010年度理事会に関わるものなのである。 2011年度に関わる報告は何も公表されていないのである。
鑑定協会執行部は(茫猿は、日常的に会務を総理し掌理する常務理事以上を執行部と呼んでいる。)、あいも変わらず「知らしめず拠らしむべし」を貫いているようである。(委員会報告等に関しては、近い機会に公表の遅れを糺してみたいと考えている。)
国政の状況と同じように、当事者に言わせればそれなりの事情はあるだろうが、茫猿から見れば何やら弥縫策に終始しているようにしか見えないのである。このように言えば、当事者は「我々は、自らの仕事を放り出して、懸命に対策にあたっているのだ。部外者が無責任にあれこれと言うな。だいいち我々は無給のボランテイア役員なのだ。」と言うかもしれない。 でも偶々であれ、自ら望んだことであれ、その任に居るのである。任にいる以上は、課せられた責任を果たさなければならない。 責任を果たすと云うことは、”懸命に頑張りました”だけでは済まされないのである。 敢えて言うのであるが、政治は結果であり、結果責任が問われるのである。
『鄙からの発信』は、この問題について繰り返し話題にしているが、新スキーム問題は突如として浮上した問題ではない。2004年頃、譲っても2007年には指摘されていた問題であり、当時から現在まで問題を放置してきた結果責任は、当時も今も鑑定協会執行部に席をおく現会長をはじめとする役員諸氏に糺されなければならないのである。
茫猿は、いまさらに問題を放置した責任を問おうと言うのではない。問題の本質をわきまえた上で、問題解決の順序が違うのではないかと糺すのである。事例収集に関わる問題であれば、鑑定評価にとっては根幹的問題であり、弥縫策に終始していてよいはずはないのである。

一、先ずは事例管理についての的確な現状把握であるが、未だに現状把握が行われた形跡は無い。このこと自体が既に鑑定協会のコンプライアンスを問われているのである。
◎国土交通省告示第1500号(平成16年12月2日) 個人情報保護法ガイドライン第9条2項5号によれば、個人情報取扱事業者は「個人データの安全管理措置の評価、見直し及び改善」に努めるものとされています。(評価、見直し、改善の第一歩は現況把握から始まる。)
◎鑑定協会の「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」第3条7項では、「会長は士協会等に対し、毎年度資料の閲覧等の状況について報告を求めることができる。」と規定されています。(過去に報告を求めた形跡は見られない。)
二、続いて行うべきは、この問題に対処する執行部の基本方針を決定し理事会の承認を得ることであろうが、未だ理事会には何も上程されていないのである。 本来ならば、臨時理事会を招集して、一日がかりでも二日、三日をかけても基本方針を決定すべきであろう。
協会定款第18条 会議は、総会及び理事会とし、総会を通常総会と臨時総会に分ける。
協会定款第21条 理事会は、本定款において別に定めるもののほか次の事項を審議決定する。 1. 総会に付議すべき事項  2. 総会の議決した事項の執行に関する事項 3. 総会の議決によって理事会に委任された事項  4.その他会務の執行に関する事項
基本方針も決めずに、問題公表以来二ヶ月ものあいだ、発生時からすれば半年ものあいだ、一部役員や委員会に委ねておいて良い問題ではなかろうと考えるのである。
三、茫猿が云う基本方針とは。
1.問題の根源は、鑑定協会のコンプライアンスが問われていることである。
現状に認められる独禁法抵触、個人情報保護法抵触について、速やかにリーガルチェック(専門家の第三者意見)を受けた上で、改善の方向(コンプライアンスの再確認)を決めるべきである。
2.安全管理措置徹底の観点からは、事例管理の速やかなセキュア・オンライン化を図るとともに、新スキームに地理情報システムを導入することにより、その機能向上、ビジュアル化並びに会員の負担軽減を図るべきである。
3.同時に鑑定評価の将来展望を踏まえて、新スキームの発展的解消を図り、不動産センサス(仮称)を創設すべきである。 ニュービジネス創設は、情報開示、データ解析、さらには不動産に関わる優れたポータルサイトを実現するものでなければならない。
このように言えば返ってくる答えも予想される。「そうは言うが現実問題としては、一朝一夕にことは運べないし、会員の理解を得ることも並大抵ではない。第一に財政問題をどうすればよいのだ。」 ですが、そのように答えること自体が、既に会員の理解力を上から目線で見ていることに他ならないし、何よりもなんの情報開示も、説得努力も行われていないのである。 五月雨式に全国行脚を(事実は一部地域の行脚でしかない。)すればよいというものではない。 鑑定協会にはRea Net というイントラネットも存在するし、会員専用Web Siteも存在するし、理事会も全国士協会会長会議という制度も存在しているのである。
担当役員が懸命の努力を為されていることを、茫猿は些かも疑うものではない、ないが、その手段と方向性が少し違うのではないかと言うのである。 相手(所管庁)があるとか、外聞を憚るとか言われるのであろうが、ことの本質は法令遵守(コンプライアンス)と自主規制並びに協会自治に関わる問題なのである。 SHINSUKE流を行けば市場から退場を迫られることにもなりかねないのである。(SHINSUKE流:これくらいは許されるだろうと思っていました流儀。) 単位士協会がSHINSUKE流を主張したとしても、協会執行部は明確に「NO」を言わなければならないし、言うことが課せられた責務であろうと考える。
同時に、一方的に執行部(正副会長及び常務理事)を責めているのではない。それよりも会員各位の民度を糺しているのである。 ことの本質とか根幹を理解した上で、正しい解決策を会員一人一人が考えてほしいのである。特に二十代、三十代、四十代の会員、鑑定評価の将来に大きく関わるであろう会員にこそ、真剣に考え声を挙げてほしいのである。 ことの帰趨は彼ら若手会員の将来に大きく関わることなのである。 五十代半ばを越えた先の短い、しかも既往の利害に羽交い締めになっている会員に、任せておいてよい問題ではなかろうと考えるのである。 会員の民度が問われるというのはそういうことなのである。

いつしか季節は秋である。蝉の声は小さくなり草むらの虫の声が大きくなっている。山ぼうしの実は赤く色づきつつある。もうしばらくすると濃い紫色に完熟するであろうから、旨いジャムが作れるだろう。(野鳥の胃袋に納められなければだけれど)
巡り来て去った季節を無駄にしたと思う茫猿は考え過ぎなのであろうか、杞憂に終わってほしいと願うしかないのである。 茫猿が予想する終戦記念日まではあと二ヶ月余である。蟷螂の斧も茫猿遠吠もあと暫くのことである。
【追記】
民度には二つの使い方があります。一つは〈文化水準〉the cultural standard 、もう一つは〈生活水準〉the standard of living です。ここで云う民度は、もちろん前者です。
【追記-2】
折しも、2011.08.26官報に「不動産鑑定士に対する懲戒処分と不動産鑑定業者に対する監督処分」が公告されている。

関連の記事


カテゴリー: 茫猿の吠える日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください