膝笑う旅・酒田編

前夜(11.06)は雨のなか吹浦海岸沿いの鄙びた宿に入り、為すこともなく夕食と風呂をいただいた茫猿は山寺千段の石段登りの疲れもあり、間もなく爆睡に落ちました。 早朝、雨は上がったものの曇り空の下、吹浦海岸の散歩に出たのです。
この宿(酒田旅館)は、吹浦海岸・湯の田温泉に二軒だけ残る宿の一つであり、日本海に落ちる夕陽が売り物なのですが、雲に遮られて夕陽は無し、残るお目当ては海岸沿いに走る羽越線だけです。 今風のバス・ウォシュレットトイレ付きに慣れた身には昔風の木造旅館は戸惑うことも多いのですが、でも窓の外に潮騒が聞こえてくる古びてはいるものの清潔な宿は意外に新鮮で心地良いものです。 夫婦で営んでいるらしい宿の主の応対も、気配りがきいていて快いものでした。


日本海、宿、国道345号、そして鳥海山の山裾のあいだを走る羽越線一番列車。

早朝の波静かな吹浦海岸。

この地方には「あまはげ」という行事があるそうです。写真はその衣装です。
男鹿半島には「なまはげ」があり、この地・吹浦女鹿地域には「あまはげ」が行われているのです。「あま」は多分おんなを意味するアマだろうと思われます。

朝食もそこそこに宿のご主人に吹浦駅へ送ってもらい、今日の目的地酒田へ向かいます。途中の車窓から鳥海山が望めるはずですが雲に隠されてこの日も叶わず。 酒田では土門拳記念館が目標ですが、途中本間美術館なども訪ねながら向かいたいので観光自転車を借りることとしました。自転車の使用料も預かり金も無料でした。(この時点で土門拳記念館までの距離確認無し。)

先ず向かったのは酒田駅近くの本間美術館。庭越しに1813年(文化10年)建築の本館を眺めます。

美術館を出て、鐙屋、本間旧邸を経て山居倉庫に立ち寄ります。山居倉庫のケヤキ並木は紅葉の盛りを過ぎていました。

山居倉庫のインフォーメーションで土門拳記念館までの道筋を尋ねましたところ、「自転車ですか! 出羽大橋も渡りますから自転車ではねェー?」というお答え。多分、茫猿の風体(年齢)などを見てのお返事だったのでしょうが、借り物の自転車を放り出すわけにもゆかず漕ぎ出したのですが、最初の難所は出羽大橋の登り坂道です。写真は出羽大橋から河口方面、酒田港を望む奥羽の大河最上川です。

飯森山公園に至る坂道を懸命にこいで到着した土門記念館です。 ここまでの道のりは約5km強。

自転車漕ぎに耐えただけのことはございました。土門拳記念館は予想以上の素晴らしさです。 月替わりの展示も今月は「筑豊の子どもたち」そして「古寺巡礼」でしたが、他にも谷口吉生氏が設計する記念館のたたずまいや友情寄贈展示品など見るべき処は多いのです。 写真は彫刻家イサム・ノグチ氏寄贈の中庭と彫刻。

草月流華道家元・勅使河原宏氏寄贈のオブジェ。

主展示室、今月は古寺巡礼。(館内の撮影は管理者の許可を得てあります。)

展示される写真に魅せられ、館内から池を眺めて心和ませ、池の対岸から記念館建物を見入り、至福のひとときを過ごすことができました。 記念館の展示は月ごとに替わりますから事前の確認が必要なのですが、仙台行きに併せて組んだ旅程だから展示品確認なしに訪れたにしては、観たいと願っていた写真に出会えてとても幸運なことでした。 写真は詩人草野心平氏の筆による「拳湖」の銘石。

土門拳記念館を出た頃には昼どきを随分と過ぎていましたが、足にむち打って自転車を走らせ辿り着いた蕎麦処は、日枝神社近くの田毎です。

いただいたのは、特盛り鴨汁せいろです。 地酒付きなのも当然のことです。 わずかに緑色をおびた蕎麦は申し分なし、特盛りの量も東京あたりの名店と比べれば倍近くあります。 難を一つだけ言えば、せいろ蕎麦なのに蕎麦ツユが付いてこないことです。蕎麦を鴨汁で食せと云うことでしょうが、蕎麦ツユがあれば二度旨いのにと思えました。 蕎麦を食べきってからセイロの簀の子を持ち上げてみましたら、簀の子の下には僅かな水しかありません。 蕎麦の水切りが巧みであり脱帽ということです。

蛙啼く  田毎に映る  月のよさ (詠み人しらず)
※田毎 酒田市日吉町2-1-14 0234-23-7686 水曜定休
酒田駅から土門拳記念館往復が約10km、あちこち足を延ばしていますから、実距離は12kmはゆうに超えていただろうと思います。 疲れた身体は蕎麦と酒で癒したので、今夜の宿を予約する鶴岡へ向かいました。酒田駅で見かけた特急いなほです。

『鄙からの発信』の定番、蓋です。 絵柄は酒田・山居倉庫。

そして、日和山公園。

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