不動産情報ストックシステムの試行運用

国土交通省の記者発表によれば、国交省は不動産に係る情報ストックシステムの整備(※)に向けて、横浜市との連携により平成26年度にプロトタイプシステムの構築に取り組むことになった。
同システムについて平成27年度に一部地域での試行運用を実施し、情報集約・提供等に係るシステム運営上の課題、システム導入により期待される効果・メリットやシステムの機能等に関する課題・対応方策等の検証を行うための試行運用である。

国交省は、行政情報の提供やオープンデータに係る検討に先進的に取り組んでいる横浜市と連携し、同市において平成27年度の試行運用を実施するため、同市の都市計画情報や防災情報などのオープンデータを活用してプロトタイプシステムを構築することになった。 今後、不動産関係実務者や横浜市を中心とする情報保有機関の意見を踏まえ、プロトタイプシステムの詳細な機能や、各種情報保有機関との連携のあり方について検討を進めていく予定である。(プロトタイプシステムの開発・検討は日本ユニシス株式会社に委託し実施する。)

※不動産に係る情報ストックシステムの整備について
国土交通省においては、宅地建物取引業者が不動産取引に必要な情報(過去の取引履歴、周辺環境に関する情報等)を容易に収集し、消費者に対してより充実した情報を提供するためのシステムの整備に向けた検討を進めており、平成25年度には、システム構築の基本的な方向を定めた「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」(以下の国土交通省ホームページ参照。)をとりまとめた(平成26年3月)。

「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」《概要》

1.収集する情報項目
不動産取引に必要な①物件情報、②周辺地域情報を各情報保有機関から幅広く収集。 特に、住宅履歴情報やマンション管理情報等住宅の性能や維持管理に関する情報を収集することが重要。

「情報ストックシステムに集積する情報項目」
a. 物件情報:取引履歴情報(レインズ成約情報等)、住宅履歴情報・マンション管理情報
b. 周辺地域情報:用途地域等都市計画情報、周辺の価格情報(地価公示、取引価格情報等)、周辺環境に関する情報(ハザードマップ、公共施設、学区情報等)、インフラ情報

2.システムの利用者
システムの主な利用者は宅建業者を想定する。レインズシステムと連携し、システムから取得した情報を基に、宅建業者から消費者に対して充実した情報を提供する。
広く一般に公開されている情報は、不動産ポータルサイト等民間事業者と連携し、情報を直接消費者に提供する方策も検討する。

3.システム構築・運用に向けた想定スケジュール
本格運用に先立ち、平成27年度に一部地域におけるシステムの試行運用・検証を実施予定(平成26年度は試行運用のためのプロトタイプシステムを構築)。当該検証を踏まえ、平成28年度以降に本格運用に向け検討を実施。

4.システム構築・運用に係る課題について
集約する情報の充実について、(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会との連携を検討する。 情報を一覧性をもって閲覧できるようにするため、レインズ成約情報と他の情報との名寄せ方法の検討が必要。名寄せの精度を確保するため、住所情報について号レベルまでの登録のあり方等必要な方策を検討する。

《注.会長挨拶等より引用》
一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会とは、住宅履歴情報の蓄積と活用を支援する業務(以下「住宅履歴情報サービス」という。)を行う事業を行っている事業者である住宅履歴情報サービス機関等が会員の一般社団法人である。

住宅履歴情報サービスの基本指針の策定、業務の効率的で効果的な実施のための共通の業務ツールの整備等を行い、住宅履歴情報サービスの公正かつ適正な実施を図るとともに、住宅履歴情報の蓄積・活用の普及等のための活動を行うことにより、社会資産としての住宅の適切な維持管理及び既存住宅の適正な流通の実現に寄与し、国民の豊かな住生活の実現に貢献していくことを目的として活動している。

一般社団法人 住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会(2010年5月設立)は住宅履歴情報を整備・保管・活用する専門の情報サービス機関の集まりとして、情報活用の有効性、効率性を高めるために、共通のルールに則り情報を整備するとともに、日本国のすべての住宅にID番号を付る体制をもっています。これで、住宅履歴情報が、災害時の緊急対応、復旧工事への対応、さらに日常的な維持管理、住宅の効率的な経営管理、資産価値の向上に大きく寄与することが可能となります。

なお、情報会員には、長野県 、大阪市、東京都、兵庫県、神戸市、大阪府、北海道が加入している。

《茫猿独白》
以上、国交省記者発表による事柄の経緯のみを述べるものである。これらの事柄の根幹は取引価格情報並びに関連情報の一般公開と共有であると同時に、地理情報とのリンクなのだと考えている。 何かコメントを加えようかと考えたが、今更のことと考え止めにする。 代わりに過去記事のインデックスを挙げておく。
鑑定協会と情報管理(収集と分析)《2012.08.12》

 

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