会費の虚実と協会の義務

【茫猿遠吠・・会費の虚実と協会の義務・・04.06.22】
 よく耳にする話に、こう云う囁きがあります。
『日本不動産鑑定協会の会員資格から業者会員を削除すると、協会財政に多大な貢献をしている大手会員からの会費収入が著しく減額してしまい、財政赤字を発生させる。したがって、大手小手区分や鑑定業者区分をなくすことは、財政的見地から賛成できない。』


 現在の鑑定協会会費区分は次のようになっています。
・会費規則第2条1号会員:資本金1億円、又は所属士10名以上
 月額会費 45,000円 会員数 78名  年会費 42,120千円
・会費規則第2条2号会員:資本金5千万円、又は所属士5名以上
 月額会費 35,000円 会員数 17名  年会費 7,140千円
・会費規則第2条3号会員:上記以外の鑑定業者及び従たる事務所
 月額会費 9,000円 会員数 3,027名 年会費326,916千円
・会費規則第2条4号会員:不動産鑑定士
 月額会費 5,000円 会員数 1,677名 年会費100,620千円
※以下、士補並びに特別会員は省略する。
 ちなみに、上記の区分で納付される2003年度会費収入合計は約5億4百万円です。その内、1号2号会費を納める、いわゆる大手業者会員数は合計97名、会費年額総額は約4千9百万円で会費収入の約10%弱を占めます。
 この97業者が一律9千円会費になれば、減収額は約3千9百万円の額となり、約8%の会費収入減が生じます。
※昨年度会費収入の明細は、下記のURLよりご参照下さい。
 http://www.morishima.com/cgi-bin/k_data/pdf/bin/bin040620183324004.pdf
 しかし、ここに実はカラクリが存在します。
それは、4号会員の存在です。1号2号会員は当然法人等会員ですが、3号会員も法人業者(資本金5千万円未満、及び所属不動産鑑定士5名未満)を含むものではありますが、実態は一事務所在籍不動産鑑定士数一名強が大半でしょう。
したがって、個人として協会に入会していれば不動産鑑定士会費(月額5千円)を納付することとなりますが、法人個人を含めて大半は業者会員として入会し、業者会費を支払っているものと推定されます。
 ところで、1号会員は十名以上、2号会員は五名以上の不動産鑑定士が在籍すると仮定しますと、1号会員78名×10名+2号会員17名×5名、
1号・2号会員在籍不動産鑑定士の合計数は865名となります。
 これは。4号会員の約50%です。
 この4号会員(不動産鑑定士)を、鑑定業者在籍鑑定士と非在籍即ち鑑定業に従事していない鑑定士に区分し、鑑定業従事鑑定士はその実態に鑑みて3号会費を納付すると改訂するとしてみます。
鑑定業従事鑑定士数は、先の数値を基礎にして50%と推定します。
 鑑定業従事鑑定士は月額9千円会費、非従事鑑定士は月額5千円として計算しますと、会費収入は5億6百万円となり、僅かながら収入増となります。
 つまり、鑑定協会の財政はいわゆる大手鑑定業者が支えているという噂は実態が無く、大手鑑定業者は本社、本所会費は高額ですが、従たる事務所会費は個人業者と同額であり、さらに所属する鑑定士会費は安いわけです。
鑑定実績報告に照らして考えれば、決して多額会費を負担している訳でなくて、会費負担能力からすれば、むしろ低廉会費といえるのかもしれません。
 勿論のこと、在籍鑑定士数が多いいわゆる大手業者会員が負担する会費総額は、どう転んでも多いことに変わりはありませんが、一見して多額の会費を負担するかのように見える1号・2号会費区分の存在は、実態を誤解させる効果があると云えます。
 なによりも、会費区分を鑑定業に従事する鑑定士、非従事鑑定士及び士補と簡明に区分して会費納付を求めても会費収入は減額するどころか増額の可能性すらあるということに注目するべきでしょう。
 協会の創設当時は、財政的にも人的にもいわゆる大手会員の負担によるところが大きかったであろうと推定されます。その功績についても敬意を払って然るべきと考えます。
 しかし、協会創設後四十年を経て、会の裾野は広がり、今や財政的にも人的にも大手ばかりでなく、個人あるいは独り法人会員の寄与するところも大きいと考えます。
 したがって、鑑定協会会員資格を不動産鑑定士、不動産鑑定士補並びに特別会員とし、会費区分も鑑定業在籍鑑定士、非在籍鑑定士、鑑定士補、特別会員とすれば、会費収入の減少は生じませんし、非在籍鑑定士の会費減額の余地も生じます。
 今現在の鑑定業界の状況で最も残念なことは、鑑定士登録者数に比較して鑑定協会在籍鑑定士数が少ないことです。
 2003.1.1現在のデータでは、登録不動産鑑定士等数8,760名、内鑑定業従事鑑定士等は4,942名です。ちなみに鑑定業者数は3,103業者、事務所数は3,304です。実に40%強の不動産鑑定士等は協会に加入していないのです。
彼等40%強の鑑定士等が協会に加入しないのには、様々な理由があるのでしょうが、月額会費が五千円であるというのも大きな理由ではないでしょうか。
 将来の鑑定業開業に備えて、研鑽を積んでゆく必要が益々叫ばれているのに協会に加入しない鑑定士を放置しておくのは協会として見過ごせないことだと考えます。
 鑑定業非従事鑑定士並びに士補は月額千円程度の会費に減額することも検討すべきと考えます。
協会として次世代を育ててゆくという大きな義務を考えれば、鑑定士登録と同時に鑑定協会に加入してもらい、鑑定のひろばや研修案内を送付し協会から最新の情報を得るとともに、多くの研修の機会を享受してもらうということが大切だと考えます。同時に、鑑定業界以外の世界を知る不動産鑑定士が協会活動に参画することは、鑑定業に従事する会員にとっても有益なことだと考えます。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
 今後の高齢化社会を考えると、いつか茫猿が鑑定業登録を廃業した時に、現行の鑑定士会費5,000円は負担が大きかかろうと予想します。
鑑定協会会費だけなら払えるかもしれませんが地元士協会会費も考えると、両方併せて3,000円位、せめて5千円以下が望ましいと考えるのですが、如何なものでしょうか。

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