何が起きているの?

 4/8から4日間、香川県の庵治や直島に行っていました。帰ってくると競売評価を巡って幾本かのメールが届き、某Web Site の最新エントリーはなにやらきな臭い事件を伝えています。


 何かが起きているようなのである。鄙に伝わってくる情報は断片的であるけれども、何か起きていると思わせる話なのである。競売制度に関しては、現行の司法競売制度に対して、民間競売制度導入を検討する法務省民事局競売制度研究会、内閣府規制改革会議及び自民党司法制度調査会において、競売制度の検討が昨年来進められている。それらを巡って鑑定協会の基本的姿勢がよく見えてこないのである。
  このうち、自民党政調会、司法制度調査会・明るい競売プロジェクトチームでは、司法制度改革の一環として、民事執行手続における不動産競売制度の更なる改善に向けた検討がおこなわれており、最近のは「08/4/10:8:00 – 9:00 党本部901」という会合が開かれている。(自民党サイトより)
 この会合を巡って、協会元副会長・平澤春樹氏の主宰する APPRAISAL OPINION サイト最新記事は、鑑定協会の動静を伝えている。(平澤氏は別の団体関係者(資産評価政策学会?)として、この会合に出ていたようなのである。) 平澤氏の記事は、協会法務鑑定委員会委員長の辞任についても触れているのであるが、それに関して詳細を伝えているという「協会サイト掲示板」は既に閉鎖されているので、真偽を確かめることはできない。この会合で鑑定協会が配付したというペーパーも入手したが真贋を確かめる方法がないから、ここには掲載しない。
 

APPRAISAL OPINION 記事は、「明るい競売プロジェクトチームの座長である佐藤剛男先生から最後に「鑑定協会は積極的に関与する意向があるのだネ」旨の念押しをされている始末です。(「積極的に関与する意向がない」と見られている。)
 評価実務の専門家に運用上の改善点はあるかと聞かれているのに、「三点セットは重要である」等という回答は誰が見てもまじめに回答しているとは見られないのではないでしょうか。(と云う。)

 民間競売制度導入に関して、鑑定協会の公式な態度表明は寡聞にして知らないけれど、仙台弁護士会は、平成20年3月24日に民間競売手続きの導入に反対する会長声明を公表している。鑑定協会は競売制度改善に関わる動きについて無関心なわけではないようだが、この問題に関連する一連の記事は全て会員限定サイト内記事なのであり、協会が真正面から取り組むという姿勢が対外的には見えてこないのである。

 日本弁護士連合会は、2007年11月22日「非司法競売手続に関する意見書」を公表している。その総論は以下のように言う。
 現状では、非司法競売手続を創設する立法事実が存在せず、現行の競売手続で作成される三点セット(現況調査報告書・評価書・物件明細書)は必要性があり、また、非司法競売手続自体も様々な問題点を内包しているため、同制度の導入には反対である。

 日弁連は、さらに2008年3月19日付けにて「非司法競売手続に関する追加意見書」を公表し、「現在導入が検討されている非司法競売手続について、日本弁護士連合会は、2007年11月22日付けで「非司法競売手続に関する意見書」を発表いたしました。
その後、本テーマについて更なる検討を加えた上で、改めて強く反対する旨の意見をより詳しく述べるため、新たに「非司法競売手続に関する追加意見書」を取りまとめました。」と云う。

 これらの経緯に関して、平成20年4月1日(火):法務大臣閣議後記者会見の概要 は次のように伝えている。

【民間競売に関する質疑概略】
Q: 民間競売について、大臣の御見解をお願いします。
 
A: 民間競売についても、こういうことは民間に任せればいいのだと、両論あることは致し方ないと思います。民と官という意味で,民でできることは、全て民にという表現が随分使われましたけど、必ずしもそこに当たる話ではないと思っています。やはり,官というのか,裁判所の信頼性みたいなものが,日本の競売のバックにあるとすれば,それもまた非常に結構なことだと思います。

 鑑定協会が公式態度表明を行ったとは寡聞にして知らないと先に述べたが、協会はその会員専用サイトに「競売制度の検討について(2007.11.29) 」と題する記事を掲載している。その「2.鑑定協会の基本的立場」では、「不動産鑑定士は、その職業専門家として競売に係る債務者、所有者等の関係当事者の正当な利益を護り、ひいては国民の生活と経済の安定及び発展に寄与する責務を有する。」と述べ、ついで「職業専門家としての不動産鑑定士の立場からみると、司法競売においても、非司法競売においても、また任意売却においても、担保物件の公正な売却価額の保証が必要であり、それが、国民の生活と経済の維持、向上につながるものと考える。」と云うのである。
 日弁連が、『三点セット(現況調査報告書・評価書・物件明細書)は必要性があり、また、非司法競売手続自体も様々な問題点を内包しているため、同制度の導入には反対である。』と旗幟を鮮明にしているのに対して、三点セットのうちの『評価書』作成に関わる鑑定士の団体である鑑定協会が、「司法競売においても、非司法競売においても、担保物件の公正な売却価額の保証が必要であり、それが、国民の生活と経済の維持、向上につながるものと考える。」と云うのは、いささか腰が引けているように見えるのである。
 非司法競売(民間競売)においても、「公正な売却価額の保証が必要」というのであるから、別段、問題が無いように読めるかもしれないが、競売制度研究会が検討中のA~D案のうち、A案、B案は評価制度・売却基準価額制度について「なし」としているのである。だから「三点セット」が必要であると鑑定協会が云うのであれば、必要としない非司法競売(民間競売)には反対であると明言すべきなのである。
 なぜ鑑定協会が対外的に「民間競売制度導入についての反対姿勢」を公表しないのであろうかと考えるときに、『鄙からの発信』司法競売制度批判(08.02.18)記事が参考になるであろうと思うが、これ以上に鄙の堂守の観測を述べるのはあまりにも生々しいから、ここでタイピングを止めて、後は各位の御明察にお任せするのである。
 

競売制度を巡ってこのような動きがあるのに対して、評価人候補者(大半が不動産鑑定士)で構成される「全国競売評価ネットワークサイト」のTOPに掲載される代表理事・山田均氏の挨拶文は以下のように述べている。
  
 (前略)地価の上昇や賃貸市場の好転は経済情勢の良化と相俟ってここ数年不動産競売の申請件数が減少しておりましたが、最近に至ってさらに減少傾向を加速させておりまして、評価人候補者の生活を脅かすようになっております。 特に東京をはじめとした首都圏周辺の地域においては競売物件の減少幅が大きくなる傾向にあるようです。
 この点につきましては、ネットワークとしては不動産競売制度に関する対外的なPR 活動等をさらに積極的に行っていくことにより不動産競売の申請件数の増加を促していきたいと考えております。(後略)

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