非司法競売手続Ⅱ

 先号記事「非司法競売手続」は長いだけで、いささか判り難い記事である。書いた本人も再読してみて、何が言いたいのか散漫な感が拭えない。そこで、記事の要点を短くまとめてみる。


(一)競売評価に関わる鑑定協会の基本姿勢
 非司法競売手続(民間競売)導入に関して、鑑定協会が深く関わってゆくのは至極当然のことと考えるが、過去において協会は関与せず、あるいは無関心であったという経緯からすれば、積極的関与姿勢を改めて明確にすべきである。
1.競売評価は鑑定評価の範疇に入るのか?
※民事執行法58条に規定される評価ではあるが、評価人の大半は鑑定士であり、その評価人・鑑定士が行う不動産評価であれば、法58条の趣旨に照らしても、広義の意味で不動産鑑定評価と位置付けるのが相当である。
2.競売評価の位置付けは、地価公示や固定資産評価に比較して、どのような位置におかれるのか?
※個別法に規定する不動産評価という観点から鑑定協会においては、地価公示、地価調査、相続税標準地評価、固定資産税標準宅地評価と同等同列に位置付けられるのが相当である。
3.競売評価基準や競売評価人選任(選任基準並びに推薦)に関わるのか、関わらないのか?
※競売評価基準に関しては、各執行裁判所毎に設置される評価事務研究会を母体とする競売ネットワークが関与するのが一義的には相当であろうが、鑑定協会も積極的に関与してゆくことに障害はなかろうと考えるし、将来の評価人選任候補者会員のためにも評価基準等開示を含めて評価実務研修機会等を設けるべきであろう。
※評価人の選任行為は執行裁判所の専権行為であるが、執行裁判所に対して選任基準の制定開示を求めたり、評価人候補募集等各種情報の周知方を図ったりすることにより、評価人選任を希望する会員の便宜を図るべきであろう。この点に関しては、先に挙げた公示・調査や相評や固評と同等同列の取扱並びに意見具申が求められると考える。
(二)内閣府規制改革会議第2次答申への対応
 内閣府規制改革会議は、 規制改革推進のための第2次答申(平成19年12月25日) において、競売における評価に関して、様々な批判を浴びせている。批判のなかには改善を行わなければならない事項もあるが、多くは無理解や誤解並びに一部地域のみの状況に基因する批判もある。これについて、些か遅きに失したとはいえ公式見解をとりまとめて公表すべきである。
(参照)『鄙からの発信:司法競売制度批判に答える』
(三)非司法競売手続導入への鑑定協会の対応姿勢
 鑑定協会執行部は、新自由主義派&規制緩和姿勢が強い「自由民主党司法制度調査会明るい競売PT」における鑑定協会の意見表明にのみ目が奪われており、しかも三点セット堅持どころか「必ずしも要らない。」とまで意見表明しているという。このあたりを推量すれば、スタート時点で前(一)及び(二)項についての基本姿勢を確立することなく、対症療法に向かったことから、戦略はおろか戦術さえも見失っているのであろうと思われる。
 しかし、法務省民事局・競売制度研究会「報告書」(2008/04/25開示)を読めば、報告書趣旨は必ずしも積極的導入とは読めないし、導入するとしても任意売却崩れ対応を主眼とする新B案が好ましいという具合に読めるのである。また日弁連の反対意見表明も論旨が明確である。
 鑑定協会は会員である指定評価人が多数存在しているのであるから、競売評価の現状について、よく知り得る立場にいるはずである。自民党明るい競売PTにおいて指摘されるような状況の多くは、既に改善されていると主張すべきである。この点に関しては、東京会をはじめとする都市圏士協会では会員総数に占める指定評価人会員数が僅かであり(一説によれば東京会では数%以下といわれる。)、したがって地元士協会の話題にならず、選出理事の関心も低いのであろう。でも地方圏は自ずと異なる状況にあるのだから、地方圏選出理事諸氏の理解と自覚を促したいのである。

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