何とも気の重い話が幾つかある。気が重い話なのだからスルーすればよいのだけれど、それはそれでまた気が重いのである。物言うべき時に物言わずに済ませたといって、腹が膨れるというほどに若くも気鬱でもない。 言うべきと思うことを言わずに済ませる「自分の世慣れさ」が気に入らないだけである。
だから、言っておくこととする、一つは自らのアリバイの為に、一つはやはり何かでも少しでも誰かに考え直してほしいからである。 この頃の茫猿は「言うべきと思うこと」を「面倒だから、億劫だから、つまらぬ世慣れさ加減から」、言わずして、気付いたら手遅れになっていたという何時かの轍を踏みたくないのである。
最初は国際問題である。 北朝鮮が核実験を行い、次いで長距離弾道ミサイルの発射実験を行うらしいと云う観測記事が新聞・TVに載っている。 これらの北朝鮮の挑発的行為に対する政府与党はじめマスコミなどの反応が何とも騒々しいし、なかには先制攻撃手段保持とか、防衛力増強とか勇ましい談話も幾つか見られる。 明日にも日本に向けてミサイルが発射されそうな物騒なコメントすらある。
北朝鮮の軍事力がそれほどに日本にとって脅威なのだろうか、実は日米韓三国による北朝鮮封じ込め策のほうが、かの国にとっては脅威なのではなかろうか、だからかの国はハリネズミのように頑なになるのではなかろうか。 北朝鮮自身の問題は多いであろう、核開発は認められないし、金正日王朝後継問題、未解決の拉致問題などなど枚挙に限りがない。 でも日本の対応、特にマスコミや一部与党の対応はいささか冷静さに欠けるのではなかろうかと気がかりで気が重いのである。
《090608追記》
自民党の細田博之幹事長は7日、都内の街頭演説で、「われわれが安心して暮らすにはどうしたらいいか。まず国際的に北朝鮮を説得し、向こうの政権が倒れるまで国際的に締め上げないとだめだ」と述べた。 麻生総理も同日、同じく街頭演説で、「戦うべき時には戦う覚悟を持たなければ国の安全は守れない」と述べた。 いかにもセンセーショナルなアジ演説である。 日本と北朝鮮のあいだには日本海が横たわるが、韓国、中国、ロシアは地続きの国なのである。
次いでDNA鑑定にからむ冤罪事件である。 足利事件の服役者は事実上の無罪をかちとって釈放されたが、類似の飯塚事件では再審請求の準備をしているあいだの08年10月に死刑が執行されたという。 今となっては真偽は闇の中であるから、軽々しく物言うわけにはゆかないけれど、もしもを思うと、とても気が重いのである。
足利事件の服役者にしても、17年間の服役期間は取り戻せないし、父母を失い壮年期を失った彼のこれからを思えば、何も言葉が出てこないのである。 せめて残された彼の人生に幸い多かれと祈るだけである。 折しも裁判員制度が始まる。疑わしきは被告の利益にという鉄則を改めて思い起こしたい。
最後の一つはマイナーな業界話である。 先月末にネット経由で届けられた鑑定協会H20年度最終理事会報告のなかに、首を傾げる話が書かれていたのである。
「三次データの外部提供について」
三次データの外部提供については問題点を検討のうえ慎重な対応が必要であり、提供する場合はルールを決めた上で行って欲しい。
この話は取引事例悉皆調査結果のうち、三次データについて学術研究の用に役立てたいから利用したいという所管庁経由の申し込みについての、理事会等協議の顛末である。 理事会報告では「学術研究という名目で利用をする場合もある。」などと開示に消極的であるのだが、何か基本的事項が押さえられていない話なのである。
この三次データなるものは、地価公示スキームのなかで国費を費消して得られるものであり、地価公示の仕様書にも国交省土地鑑定委員会の行う土地取引状況調査と明記されているし、鑑定協会は国交省から調査委託を受けて実施しているものである。 だから外部開示について鑑定協会が言揚げするものでは本来的にない。 国交省は調査委託先である鑑定協会に対して、紳士的にその可否を打診するものであろうと考えられる。
その原則とか基本を等閑にして業益を優先し情報開示の流れに逆らうような議論に違和感を感じるのである。 地価公示と土地取引状況調査に関わる成果物の全部は国民の財産であるという基本認識の上に立った前向きの議論が好ましいと思うのだが如何なものであろうか。 とかく変わることに消極的な業界に気が重いのである。 何より消極的閉鎖的な対応を繰り返していると、そのうちに”業益優先公益否認”とマスコミに叩かれる懸念も感じるのである。
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