不動産鑑定評価における「Client Influence Problem」問題に対応する改善策の一つとして、茫猿はRea Review 制度の創設を鑑定協会執行部に提案しました。同時にこの提案を『鄙からの発信』にも公表したところです。 斯界から芳しい反応は得られていませんが、それでも執行部は前向きに検討すると聞いております。 また一部の読者からは数件の質問もいただいておりますので、考えるところをお答えしたいと思います。
《質問》 Rea Review制度への登録を会員に強制するのか?
『回答』 (仮称)Rea Review登録は会員の任意です。しかも、守秘義務との関係から、依頼者の登録許諾を必要とします。 だから、直ちに多くの評価員が開示登録をするとは考えられないし、依頼者の協力も順調に得られるとは考え難い。
《質問》 Rea Review制度には効果が期待できず、無意味である。
『回答』 この制度は社会が依頼者に求めるCSR(Corporate Social Responsibility)に応えるものである。直ちに大きな効果は得られないが、「鑑定評価書公開の用意有り」と、社会にアピールすることに意味があり、鑑定士に求められている社会的責任に応えるものである。小さく産んで大きく育てることに意義があると考える。
《質問》 鑑定評価依頼が入札に付される状況下に大きな効果は期待できない。
『回答』 Rea Review制度は直ちに入札問題を解決しません。 しかし、開示登録を前提とすれば、業務内容との関係から、極端な安値入札は避ける方向に向かうであろうと考えます。 ひいては、秩序ある鑑定評価受託競争に向かってゆくであろうと考える。
《質問》 鑑定士にとってRea Review登録のメリットはあるのか?
『回答』 依頼者にとっては、官であれ民であれそれぞれの社会的責任を果たすことが重要であると考えます。 Rea Review登録済み鑑定評価書と、非登録鑑定評価書とを明らかにすることから、JREATであれ、官公庁であれ、社会的責任を意識する依頼者にとっては「開示登録済み鑑定評価書」の持つ意味は大きいと考える。
(注)開示登録済み鑑定評価書は、登録済み証写しを評価書に添付できる。
(注)Rea Review登録システムは、鑑定協会会員にのみ対応するシステムであり、この制度を利用するためには鑑定協会へ加入し、ReaNetにアクセスする必要がある。
《質問》 鑑定評価書は作製した鑑定士が持っているノウハウのかたまりと云えるものである。だから軽々に公開したくない。
『回答』 ノウハウを公開したくないという趣旨は理解できます。しかし、鑑定評価書の公開即ちノウハウの公開とはならないでしょう。評価書に記載されない部分にこそノウハウは存在すると考えます。 同時に評価書の公開は作成者の鑑定評価能力(技術力)の公開とも云えます。評価書のRea Review公開は、即ち鑑定士のReviewであるとも云えましょう。鑑定士の技術力や得意分野の広報にもなると考えられます。 「であればこそ、制度創設には反対するという意見も存在するのでしょうが。」
『その他』
1.データベース作製
副次効果として、JREATをはじめ様々な評価書データの集積が可能となり、鑑定士が共有するデータベースが作製できる。 また、評価書を鑑定士や隣接業際専門家が閲覧することにより、公開評価書による学習効果や、既往評価書の抱える問題点等が指摘されることにより、全体のレベルアップにつながると考える。
2.個人情報保護の観点
評価書に守秘すべき個人情報を記載することは一般的に無いと考えるが、個人情報保護等については、登録する鑑定士が自らの責任でもって該当部分を伏せ字にすることにより、抵触を免れるであろうし、依頼者が全面開示を許諾すれば特段の問題は生じないと考える。
3.開示する時期について
鑑定評価書の発行即開示は影響するところが大きいから、多くの依頼者が評価書の交付即開示は望まないところであろうと考える。 しかし、取引終了後における開示は、依頼者のCSR(Corporate Social Responsibility)に応えるものであるから、積極的な開示も期待できる。 その意味から、評価書発行後、数ヶ月後あるいは半年程度の期間をおいて開示することに制度の運用主旨が存在する。
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いつも拝見させていただいています。
鑑定評価書が任意公開されることになれば、公開した鑑定士にとっては、その分析力、知識量を誇示できるわけですから、大きな宣伝になりそうですね。
また私のような未熟な鑑定士にとっては、優秀な鑑定士の評価書で勉強できるわけですから興味深く思います。