不動産鑑定評価について、このサイトに何かを記すことはとても少なくなった。現役を引退してすでに8年余り、昨今の斯界の事情もオボロになっている、私自身もオボロになっているからやむを得ないことである。そんな茫猿ではあるが”雀百まで踊り忘れず”とも云うから、年の初めに何か彼是(あれこれ)と書いてみようかと思うのである。
消え去った者は黙っているべきと云う考え方もあるだろうが、他山の石、向かい山の枯れ木ということもあろうかと考える、枯れ木も山の賑いとも云うではないか。《「鄙からの発信」の元を糾せば、茫猿遠吠すなわち狐猿の遠吠えであり老猿の吠える日々なのである。》
◉不動産価格指数
住宅地に次いで商業地指数が公開されるようになって既に三年が過ぎたけれど、斯界でどのように話題になっているのか聞こえてこない。指数と地価公示など公的価格指数との差異について、どのように扱われているのだろうか。基礎資料の質と量についても話題にされてよさそうなものである。 特に土地総合指数と建物付き土地総合指数とのあきらかな差異についてのコメントが聞こえてこない。
ただし、地価公示と価格指数の基礎資料は同一のもの《ともに取引価格情報調査結果資料》であるから、商業地価格指数の質と量をあげつらう事は即ち地価公示の質を論じることに他ならない矛盾というか撞着がある。それであっても、土地総合指数と建物付き総合指数両者の基礎データの価格帯、面積規模、エリアなどの差異があるのか、それら基礎データの種別と価格変動との関連などの分析結果公表が待たれる。
もう一つ加えれば、地価公示事例資料における更地事例と建付地事例の差異あるいは差異の有無との関連、さらには建付地事例作成過程における事例価格の建物への配分法の適宜などについても踏み込みたいものである。
◉地価公示事例の(業界内)オンライン閲覧
未だに業界内部においても全国オンライン利用が行われていないのである。資料のオンライン非公開には様々な背景が存在していることは承知しているけれど、地価公示評価書のオンライン公開が近く実施されることからすれば、基礎資料の業界内オンライン公開共同利用も早く視野に入れて欲しいと考える。そしてさらに先のステップに進んで欲しいものである。
オンラインということに関して云えば、公示地のみならず事例地の写真添付《一定の情報守秘が必要であろうが》が未だに実施されていない。クラウドシステム利用など、写真データの撮影・情報送付・保存整理が数年前と比べれば格段に容易になっている状況を思えば、写真という情報の宝庫が未だに手付かずなことは理解できないのである。
◉公示価格評価書のCSV公開
「情報開示進む・H29地価(2016年9月17日 )にてふれたことであるが、近く公開されるH30地価公示価格では公示評価書がCSVにて開示される予定である。開示されるデータがどのようなものになるか興味深いものがあるし、茫猿としても可能であるならば何らかの解析をしてみたいと考えている。特に要因格差分析のなかで環境要因に与えられているウエイトについては考えてみたい。
◉取引事例と賃貸事例の掘り起こし
公示価格評価の基礎とする土地取引事例については、登記情報を基礎として全国悉皆調査(郵送アンケート調査)が行われており、一応の到達点に達している。しかしアンケート回収率の向上や、未回収データの分析《価格情報が付されていないデータと云えども、重要な取引情報である。》、レインズなどの他の価格情報との有機的リンクも俎上に載せることが望ましい。
賃貸事例については、以前に変わらず評価員個々の努力に委ねられているようである。個人の努力には限界があり、組織的努力が必要な時期がとっくにきていると思われる。 収益価格や収益事例が重視されるようになって久しいのに、基礎資料の収集について旧態依然であることはとても疑問である。 基礎資料の組織的収集や充実は鑑定評価そのものの裾野を広げてゆくことに大きく寄与すると考える。つまり基礎資料の充実と充実に至る過程は、鑑定評価が価格査定に止まらず、有効利用カウンセリングや収益アナリシスにも視野を広げてゆく過程に繋がると考える。
《追記》凍える朝(-2度)だったから、常は自転車でゆく可燃ゴミ収集所出しを自動車を使った。 車窓の凍結が溶けるまで十分以上かかった。ゴミ出しだけではつまらないからと、近くの大榑川《1kmほど南方》まで足を伸ばして冬鳥を撮りにゆく。昇り来る朝陽が眩しく暖かい。(2018/01/12 07:14)
大榑川土手の桜越しに朝焼けの伊吹山を撮る。
カメラを向けたら一斉に飛び立つカルガモ。マガモなどは見られなかった。朝陽が水面に映えるなか行き交うカルガモ。
実は最初の記事原稿は追記部分だけだった。あまりにも私的記事が続いていることから、二十日も前から溜め込んでいた”鑑定関連”記事に枝葉を付けてメイン記事とするものである。決してヤッツケ原稿ではない。「鄙からの発信」では随分以前から何度も記事にしてきたテーマばかりである。不動産取引価格情報提供制度の方向性模索をはじめ、鑑定評価書の公開はレビュー制度創設提案で問うてきた、事例地写真添付はネットワーク充実提案で取り上げてきた。このサイトのカテゴリー”不動産鑑定”のなかのNSDI、REA-NET、REA Reviewなどのカテゴリーに多くの過去記事が検索できる。つくづく雀百までと思わされる。
とは云うものの、だがしかしである。一度掲載した記事だから削除はしないものの、「何を今さら」感が拭いきれない。74歳になる茫猿の不動産鑑定評価への思いと云うことではあるけれど、老猿の遠吠え以外のなにものでもない。ウエブサイトにも旬があると書いたのは2010年のことであるから、それから七年「鄙からの発信」の旬もとうに過ぎ去っている。自覚はしているけれど、やはり雀百まで踊り忘れずと云うことか。
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