梅雨明け十日の暑熱

 梅雨明け十日の暑さというけれど(当地の梅雨明けは 2019.07.28)、この数年、年ごとに堪え難さが増しつつある暑さを、さらに堪え切れなくさせているのは寄る年波のせいかと思う今朝の暑気である。

 今朝も喫茶店にて、中学の同級生と話していて、「猛暑日」や「熱中症」がニュースになるようになったのは平成になってからであり、昭和の頃には聞いたことがなかったなどと話題になった。猛暑日どころか、この頃では酷暑日が話題になる有り様で、このぶんでは後十年もしたらどんな夏になるだろうと言ったら、その頃には居やしないよと笑われた。

 因みにこの喫茶店、月一で同級生が喫茶モーニングに集まる。今朝の参会者は20名強だった、90才間近の恩師の元気な顔も見えていた。当地話題のモーニングサービスは、トースト、ジャム、ヤクルト、茶碗蒸し(利用はパス)である。

 地球規模で温暖化が進み、北極海の氷が溶け、世界各地で猛暑が報道されている。地球温暖化がこれ以上進めば、もう引き返せない臨界点を超えてしまうのではと懸念されてもいる。“Point of no return”或いは“Tipping point”(臨界点)と云う訳である。実験ができないことである上に、後の世代に取り返しのつかない負担を強いることであるだけに、大気中温室効果ガス濃度をこれ以上高くしない対策が必須である。

 さて、暑気払いというわけでもないけれど、不動産鑑定協会の会長職が熊倉隆治氏から吉村真行氏に代替わりしたことから、役員構成など友人知己の現況を確認しようと協会総会の書類を眺めていたら、興味深い記述に出会った。2007年前後の頃には、この「鄙からの発信」にて月一どころか週一もの割合で記事にしていたNSDIとかREA-NET、REA-MAPなどという語句が眼に入ったのである。
《追記》「鄙からの発信」は NSDI:地理空間情報 (89)やREA-NET構築 (170)と云う記事カテゴリーを設けている。

日本不動産鑑定士協会連合会・第55回総会書類(2019年06月19日)
2018年度(H30年度)事業報告
Ⅳ. 不動産の鑑定評価の発展向上に資する技術開発 、研究開発に関する事業
1. 地理空間情報の活用普及に関する技術開発
地理空間情報活用普及を目的としてREA-NETで公開したNSDI運用版モデル 「REAーMAP」については、一般国民も対象とした利用推進に向けてREA-Jireiの検索機能としての運用を行った。

不動産鑑定協会を離れて久しいから、懐かしく眺めたこれらの用語が当時(2007年前後)の意味のままにて使用されているとは限らないが、茫猿の知る限り(というかいずれも茫猿の造語もしくは協会持込である)の正式名称および和訳を記しておく。

 昔話をして独り悦に入るというのは年寄りの悪い癖と相場は決まっているけれど、今は昔の事の由来を語っておくと云うのも強ち悪いことばかりでも無かろうと考えるのである。そうなのである、故事来歴を語って独り悦に入り暑気払いをしようと云うワケなのである。

『REAーNETについて』
REA-NET:Real Estate Appraiser (不動産鑑定士)Network
2007年当時、REA-NETとは鑑定士のネットワーク構築を意味しており、接続を希望する鑑定協会会員の管理システムと、接続する会員の認証システムを指していた。 この両者の構築がいわばインフラ(基盤)としてのREA-NETであり、その上に各都道府県士協会が採用し稼働させる選択肢として幾つかのシステム(機能)の構築が検討されていた。 

(a) REA-Info(当時の仮称)
:地価公示、地価調査、役員会、委員会等情報の交流機能、電子会議、電子掲示板、電子伝言板等の機能を想定。《当時の茫猿は真面目にKnowledge Management の構築を目指していたけれど、萌芽さえも出せなかった。》

(b) REA-Data(当時の仮称)
:公示、調査のメモや事例などのデータ収集、集約、配布及び様々なファイルデータの交換、配布。《次項のREA-Koujiと一体として、公示・調査付属システムとして構築・利用されていると聞いている。》
(c) REA-Kouji(当時の仮称)
:地価公示・地価調査に特化した情報交流、DATA交換システム。《前述の通り、公示・調査付属システムとして実現》

(d) REA-Jirei(当時の仮称)
:取引事例、賃貸事例、積算事例等の閲覧提供システム。《JireiとMapが有機的に連携したシステムとして構築されていると聞いている。事例収集から始まり、ファイルデータの統合と配分、事例閲覧システムとしての運用に至る。》

『REA-MAPについて』
 REA-MAPは、日鑑連情報委員会・地理情報活用検討チーム(NSDI-PT)が構築して、2010年度より全国14の都府県士協会にて試験施行が行われた機能である。地理院地図及びYahoo Map(変更可能)を背景地図として使用し、地価公示等公的評価地点並びに取引事例を電子地図上に展開するシステムである。REA-MAPはREA-Jireiともリンクしており、表示される取引事例地点等の詳細をREA-Jireiを通して閲覧できるものである。 

『NSDIについて』
NSDI:National Spatial Data Infrastructure:国土空間データ基盤整備
2008/06/17 鑑定協会定例総会にて、茫猿が行った一般質問趣意書 
「事業計画、予算に関すること」(当時は一般会員も総会質問が許されていた)
 不動産鑑定評価にとって「地理空間情報(NSDI)」の、取得と活用は必須事項であろうと考えますが、会長並びに地価調査委員長及び情報安全活用委員長はいかがお考えでしょうか。」

 「取引価格情報開示制度の充実に取り組み、REA-NETやGISの活用推進を図ろうとする鑑定協会にとって、2007年08月29日に施行された地理空間情報活用推進基本法は、見過ごせない重大関心事であるべきだろうと考えます。同時に、同法の主務官庁が国土交通省であることや、公益法人制度改革に伴い公益法人資格認定を目指す鑑定協会にとりまして、同法への取組方如何が、戦略的にも戦術的にも鑑定協会並びに業界の今後に大きく影響するであろうと考えられます。」

 詳しい状況は知らないが、協会内部のイントラネットであったREA-NETが、『NSDI運用版モデル 「REAーMAP」として、一般国民も対象とした利用推進に向けてREA-Jireiの検索機能としての運用』が行われたとすれば情報の開示であり、事例情報の収集・開示行為の新しいステージに至ったものとして御慶至極に思う。

《追記》当時の茫猿は、不動産鑑定協会が運営するREA-NETのなかに公示・調査システム、事例システム、地理情報システムを渾然一体として構築すれば、公示・調査の主導権を不動産鑑定協会が事実上握ることができようと考えていた。隠然としたネット主体の構築でもある。

 そしてそれは、登記情報データの提供に始まる取引事例収集システム(国交省主導)を、不動産鑑定協会の事実上の支配下に置くとも考えていた。当然のことながら、構築・運営にかかる経費は協会負担である。当面の経費負担は閲覧料収入で十分賄えると計算していたし、将来的には一般開示による収入増だけでなく、不動産取引に関わるMas Dataを握ることの効果は計り知れないとも考えていた。(現実問題として、登記情報を握ることは全数データを握ることでもある。)

 然し乍ら、この目論見は霞ヶ関においても同じことであったと見えて、2010年前後に鳶に油揚を攫われ、いずれも公示付随システムとして構築され役務負担だけが協会に残された。登記データや公示事例を鑑定評価に使わせてやるから、事例収集の現地調査等役務を負担しなさいと云うことである。

 当然のことながら、原始データ或いは生データに鑑定協会がアクセスすることはできない。霞ヶ関によるデータ閉鎖である。不動産取引データの現状がどのようであるかは承知しないけれど、情報に関して閉鎖的である霞ヶ関体質が、より閉鎖的になっても改まることは無かろうと考えている。

 2008年以前に役務と費用とリスクを負担して、鑑定協会内部のシステムとして構築できていればと、今となっては死に児の齢を数えている。(だからこそ地理空間情報活用推進基本法が議員立法で成立したのだし、情報こそが利権と云う認識が霞ヶ関や永田町に拡がっていたのである。)

 2008年6月総会における茫猿の一般会員質問に端を発して、早速に予算措置を行いプロジェクトチームを補足させて頂いた、当時の協会トップの慧眼を今も尊敬しているけれど、残念ながら多くのと云うよりも殆どの役員・会員の意識は”事例閉鎖主義”から一歩どころか半歩も出なかった。内部確執に右往左往するあいだに、鳶に油揚攫われたと云う訳である。

 吉村新会長の戦略眼にはかねてから刮目するところであるが、氏の情報戦略如何と注目する。情報というものは門戸を開く者多く報われると、茫猿は考えるのである。また情報は時々刻々に陳腐化し劣化してゆくものであり、コモディティー化してゆくものであるから鮮度こそ命である。

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