2019師走景色

今年も残り一ヶ月となった。月日の過ぎ去る速さなどと手垢にまみれた慣用句を持ち出すまでも無く、年毎に一年が思い出すほどのことも無いままに流れ去るようになった。四月の長崎行きすらが、遠い昔の如く思える。そういえば賀状欠礼の挨拶状も、御遺族から届くことが増えた。月めくりカレンダーも残り一枚となり、2019年(令和元年)も暮れ始めた。「初暦知らぬ月日の美しき」などと言えるのも60半ばまでのことだろう。

師走景色といえば、先日は干柿スダレや紅白の切干しの写真を載せたが、今日は照る照る坊主の行列写真である。照る照る坊主の正体は柚餅子である。色付いてきた柚子を収穫して中身をくり抜き、胡桃味噌を詰めて蒸し上げてからペーパーに包んで干し上げる。

この照る照る坊主、正月頃まで干しておけば、柚子の皮に味噌が染み込んですっかり乾燥した保存食品が出来上がる。スライスして箸休めにしたり、お茶漬けにしたりするのである。お茶漬けにすれば、柚子の香りと味噌の風味と胡桃の香ばしさが口中に広がる一品である。

鄙里の野良仕事は、昨日までに柿と梅の剪定、果樹畑の耕しと鶏糞すき込みを終えた。今の畑には大根、蕪、人参、法蓮草、葱が育っている。春野菜の準備としては、菜花、絹サヤエンドウ、玉ねぎ、アスパラが植わっている。最近は菊、矢車草、蕗、アヤメ、ダリヤなども畑の一部を常に占めるようになった。


黄菊は香り高く咲いている。銀杏、欅、南京櫨などの黄葉は既に盛りを過ぎたが、伊呂波楓の紅葉はもうしばらく先のことである。地表はイチョウ、ケヤキ、ナンキンハゼ、メタセコイヤなどの落葉が敷きつめられて黄色く輝いている。夕陽に映える鄙の雑木林が一年で一番美しい季節を迎えるまであと数日である。

果樹も柿(甘、渋)や梅、それに蜜柑、甘夏、八朔、酢橘、柚子、カボスなどの柑橘類だけでなく、無花果、ブルーベリー、枇杷、桜桃などを収穫できるようになった。今は幼樹だが数年もすれば栗や桃も手に取ることができようと楽しみにしている。

十年もすれば、小さなフルーツパークに変じていることだろうと語ったら、「親父が居なくなれば忽ち荒れ果て、お化け屋敷に変じているだろうよ」と、偶々鄙里に立ち寄っていた息子に軽く往なされた。業者に依頼して手入れを続ける面倒よりは、売却処分した方が手っ取り早いだろうとも言うから、俺の居ない後の世のことなど知ったことかと答えた。

ふと、父や母はいつ頃から日常生活を重荷に感じただろうかという疑問が浮かんだ。茫猿自身は日々の暮らしを、まだ重荷に感んじてはいない。けれども年々同じ暮らしを続ける自信が、年毎に薄らいでゆく自覚は既にある。年明ければ数え77歳、喜寿となる。

《2019.12.05 追記》「桜を観る会」の招待客名簿について、廃棄した後も外部媒体に残されていたバックデータについて、当該データは行政文書ではないので廃棄処分したと、菅官房長官はとんでもない詭弁を弄し始めた。安倍内閣も末期症状といえるが、これで内閣総辞職に持込めなかったら、野党も報道も何より自民党自身が情けない。

《2019.12.06 追記》アフガニスタンで三十年近く、人道支援に取り組んだ医師中村哲さんが現地で襲撃され死亡した。平和憲法のもとでの日本の国際貢献のありようを体現した人だった。志半ばの死を深く悼む。

《2019.12.06 追記》伊吹山初冠雪である。山頂に雲がかかって晴れないので、全容は判らないが、間違いなく初冠雪である。養老山の一部にも薄っすらと雪が被っていた。

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