公示事例標準化補正ソフト

 『鄙からの発信』で予告しておりました地価公示ソフトからエキスポー
トした「JIREI10.txt」データ並びに六次改訂国土庁土地価格比準表を
基礎に作成した「数値比準表」を採用した、「地価公示取引事例標準化
補正・演算ソフト」を、『鄙からの発信』・鄙巷交歓・ダウンロードコー
ナーに掲載しました。なお、比準表格差率は例示ですから、ご自分の判
断で再入力してご利用下さい。
【Software Download】コーナーでのファイルネームは「HIJUN2001.exe」
です。名前は、近く「公示比準2001.exe」に変える予定です。
 事例地の標準化補正が方位と側道等に止まるような中途半端さが嫌な
のと、将来、多方面に利用する便宜のために、標準地データ(比準対象
地)との地域格差の比準も可能なように設計しました。
 公示標準地データである TAKUTI11.txtはデータが不足しており直ち
には使用はできません。公示標準地データを貼り付け不足データを追加
して使用する仕様ですが、この件に関しましては詳細部分が不明なため
標準地データシートは非表示にしてあります。
 また、このモデルはフリーウエアとしますが、改訂並びに他のソフト
への転用等を為さる場合は御一報下さい。著作権は森島に帰属します。
 バグ取りは致しましたが、まだ何処かにバグがある可能性は否定でき
ませんので、皆様でチェックしていただけると有り難いです。お使いに
なって、バグを発見されたら御一報下さい。大変助かります。
尚、何のお礼もできませんが、「美濃・中山道」の絵はがきを差し上げ
ます。
 演算マクロは、「演算と印刷」、「演算のみ」、「比準表印刷」の3
本が付けてあります。演算のみは、演算結果の標準化補正要因格差一覧
表を印刷します。取引事例の標準化補正作業には、このマクロのみで充
分です。
 演算結果一覧の印刷項目は、事例番号1及び2、事例所在地、接面状
況表示、側道A要因表示、月次変動率、正面街路幅員格差、正面道路接
面方位格差、角地・二方路地等格差、規模格差、間口奥行格差及び形状
格差です。
 幅員格差と規模格差はリニア方式とマトリックス方式が選択できます。
お好みで、リニア又はマトリックスを選択してください。
選択方法は「マクロと時点」シートの選択コードを変えることにより可
能です。
 演算と印刷マクロを使用しますと、各事例の比準結果単票が印刷され
ます。単票を見て、事例のエラーチェックと標準化補正率の検討ができ
ます。公示ソフトに入力する標準化補正要因には「塗りつぶし」が付け
てあります。
モデルの応用
1.時点修正率の考え方は色々あると存じますが、価格帯で自動的に月
次変動率を一括計算できるようにしてありますので、変動率判定が用意
となります。
2.作成済事例を貼り付けて運用すれば、該当セルにエラー表示がされ
たり、異常な数値が表示されることによって、事例の記載漏れや異常値
などがチェックできます。
3.側道A~Cの標準化補正率は、地元地価公示・比準表検討委員会の
結論を全面的に採用しました。茫猿の考え方とは少し異なりますが、充
分実用に耐える算定式です。詳しくは、モデルの「説明」シートをご覧
下さい。
質疑応答 ——— 
 本件の数値比準表について、何名かの地元鑑定士から御質問やら御意
見を頂いております。茫猿の答えを公開することにより、多くの皆様も
抱かれているであろう疑問にお応えしたいと考えます。
 まず最初に、お断りしておきたいのは、
 私が作成した比準モデルは、公示ソフトに入力済みの事例並びに標準
地の価格形成要因データのみを使用することを前提としたものであるこ
とです。
 同時に将来の拡張性を考えたモデルであり、現時点で全ての項目を使
用することは考えてはいません。使いたくない項目は格差評点を「ゼロ」
にしておくか、演算結果を公示ソフトへ入力しなければよいのです。
 少なくとも、街路接面方位や角地等について、事例カードに入力済み
の側道等の幅員、方位及び接面状況データから、自動演算すればどうな
るかという意味のソフトです。
 格差評点をどのように扱うかは、優れて評価員の個々の判断と考えま
す。勿論、目線を合わせる意味で、方位格差と接面状況格差は各分科会
で統一されるのでしょうが。
 もう一つ、念のため誤解をおそれずに申し上げれば、六次改訂・国土
庁土地価格比準表は「アナログ時代の遺物」です。
現在では無意味とまでは申しませんが、デジタル処理を考えるときには、
抜本的かつ解体的に検討し直さなければ使い物になりません。
 茫猿がよく引用するのですが、同書の7頁冒頭、並びに同手引き5次
改訂版の13頁、16頁、19頁20頁を再度読み返して見てください。
 同比準表を使うということは、同書に記載の通りであり、同時に現行
鑑定評価基準の考え方に基づく、電卓時代の考え方でもあります。
 電算時代には、自ずと異なった考え方が導入されるべきですが、未だ
その兆しは明らかとなっていません。
 このことは、旧来型の伝票処理スタイルや伝票書式を維持したままで
事務OA化を図った企業が、かえって電算繁忙や電算貧乏に苦しんだと
いう電算導入の歴史を振り返れば自明のことと考えます。
問1.公示ソフトの地域要因の比準表と採用数値等が適合しない。
【茫猿の回答】
 最新バージョンの「HIJUN2001」で試算されたかどうかが判りません
し、私のモデルの評点はダミー数値であり、御自身が比準要因格差区分
並びに比準格差評点をどのように付されたかが判らないのでお答えしに
くいのです。地価公示ソフトは総和を使うことも多いマトリックス方式
比準であります。 本モデルのリニア方式比準表を使えば、結果は自ず
と異なります。
 少なくとも幅員・規模格差及び距離条件については、リニア型比準を
採用すべきであるというのが数年来の私の主張です。
 私はモデルは作成し公開しましたが、格差評点は分科会の結論を素直
に受け入れるつもりです。また、今回モデルでは距離条件等の比準は主
眼点ではありません。一般評価にも転用でき、将来的に標準地データが
充実したときに利用できるように、展開性を考えてあるモデルです。
問2.方位と側道の考え方
「茫猿私案」:主街路幅員×主街路方位×側道方位×側道幅員
「比準小委」:主街路幅員
       +主街路方位×側道方位×角地等基準値×補正幅員係数
【茫猿の回答】
 両者の違いについて今更に論じる気はありませんし、画地条件が主街
路方位・幅員と側道方位・幅員だけとも考えてはいません。
前述の通り、使いたくなければ、当該要因は評点ゼロでよいのです。比
準表小委員会の決定する格差評点のみを利用すれば、事足りると考えて
います。
問3.正面街路幅員4m未満の標準地もあるが。
【茫猿の回答】
 論外でしょう。全ての公示標準地が、必ずしも近隣地域の標準的画地
ではないことと、固評のように近隣地域の標準画地の考え方が採用され
ていないことに、問題点があるのでしょう。
勿論、採用したとしても多く難点は残りますが。
問4.主要街路の方位は街路条件ですか?
 地価公示鑑定書作成ソフトが県内では統一されていることを考えれば、
地域要因比準表で比較している、交通接近・街路・環境・行政の各条件
は事例標準化ソフトから除外すべきである。
 ただし、演算結果シートの街路条件(街路の方位)、街路・側道等
(要因細項目のすべて)、画地条件(要因細項目のすべて)は必要であ
る。
【茫猿の回答】
 前述の通り、将来の拡張性を考えて、現在の公示事例で採用されてい
る要因項目を網羅することを基本としただけです。
できれば、標準地データ「TAKUTI11.txt」をExcelで開いて使用し、
標準地毎の比準価格が試算できるようにしたいと考えますが、現在の
TAKUTI11.txtは残念ながら要因データが不足しています。
 また、標準地との格差比準ができれば、その結果は公示作業の事前準
備として格段の効率化が実現できると予想しています。
 尚、デジタル処理の場合には地域要因とか個別的要因という区別の意
味が格段に低くなります。
 両者のもつ意味や要因の重複を無視して、うかつに区分して並べたり、
同じ要因項目を並べると相乗効果を発生させ、混乱します。
 正面街路幅員を地域要因として捉えるか個別的要因として捉えるかに
ついては、考え方が統一されていないと存じます。
茫猿としては、JIREI10.txt入力済みデータの内、画地条件と正面街路
幅員及び側道要因は個別的要因とし、残りは地域要因と考えるのが素直
であり比準作業の重複も起きないと考えます。
 固評では近隣地域の標準街路・標準画地を設定しますので、近隣地域
標準街路幅員と事例地・標準地正面街路幅員の二個のデータを用いて比
準が可能ですが、公示では設定されていません。
 現行の国土庁フォーマットでも、比準格差項目に道路の幅員を始めと
して、多くの同じ要因項目が、標準化・地域格差・個別格差に列挙され
ています。この整理が最初になされるべきでしょう。
問4.幅員の比準格差をつける実証的データがない。
【茫猿の回答】
 他の比準評点には実証的データがあるのでしょうか。居住環境とか繁
華性とかに実証的データがあるのなら教えてください。
 数値比準評点とは鑑定士の多年の経験と熟練した勘を、数値化したも
のと考えています。貴兄は今年の地価調査・比準価格試算過程において
「道路幅員」格差項目を使用されなかったのでしょうか。もし、使用さ
れたのでしたら論理矛盾ではないでしょうか。
 幅員に限らず、土地価格比準表の比準評点には相応の歴史があります。
また、固評路線価評価で幅員計数は実証されています。
何よりも演繹的比準表に基づく比準結果が実態と合うかどうかを検証し
て、帰納的に数値の合理性を証明することが必要でしょう。
 その意味からは適用地域に適合した実証的データは、統計的解析手法
も採用して我々が作成すべきものと考えます。
 別の観点から云えば、比準評点とは比準した個別格差(95/100)とか地
域格差 (100/85)とかの結果を、内訳説明するものという云い方もできる
でしょう。幅員が1m増す毎に1点加算という実証データがないように、
角地は5点加算という実証データも一部の団地販売実績を除けば存在し
ないのではないでしょうか。
 全て経験値的に云えるものと考えます。今後の課題として、帰納的に
も演繹的にも「数値比準表」を完成させてゆくことが大事と考えます。
※この件に関しては、『鄙からの発信』茫猿遠吠・99/9/16「土地価格
比準表」をご参照下さい。
問5.本来、個別格差は、現地をみて個別に判断するものです。
 例えば住宅団地にしても南垂れと北垂れで方位格差は全く違います。
もっと言えば、隣接地の利用状況等によっても異なり、間口・奥行・規
模等様々な要因があり、幅員を考慮しても矛盾点はなくならない。
茫猿ソフトにしても、格差の根拠に実証的データがない。
【茫猿の回答】
 前述の通り、国土庁土地価格比準表の格差評点を基礎にしています。
実際に使用して、鑑定士が納得できるかどうかです。
 同時にモデルを使用した試算結果が、演繹的格差評点を帰納的格差評
点に置き換えてくれると考えます。
 尚、現地を見て個別に判断すると評価主体の間でブレが生じるから、
画一的に比準するのではないでしょうか。数値比準を行うということは、
ある種の割り切りを必要とします。
 そうでなければ、アナログ手法を採用すべきです。この件に関しては、
比準格差評点を採用して標準化補正や個別格差補正に統一的視点を与え
たいという比準表小委員会の考え方に対比すれば、明らかに論理矛盾で
す。
 この件に関しては、MY Web Site 『鄙からの発信』「地価公示あれこ
れ」をお読み下さい。又、同じく8/22掲載の「評価の電算処理」もお読
み下さい。
問6.全県下で統一ソフトとして利用するのは時期尚早。
【茫猿の回答】
 何か、勘違いされていませんか。角地等補正に関して別の角度からの
提案を行い、ついでに簡易な比準ソフトを公開しただけであります。
 採用するもしないも、個々の評価員の自由ではないでしょうか。
 強制も統一化も毛頭考えていません。強制は最も茫猿が嫌うことです。
統一もあえて云わせて頂けば、間違えたら全員が間違えてしまう恐れが
あるということです。私は、異端を排除する論理には組みしません。
 私は、比準表小委員会が作成した比準格差点数を、HIJUN2001に導入
し、粛々と公示作業を行う予定です。公開するフリーウエアとは、どう
いうものなのか、改めてお考えになって下さい。
 自製の競売評価ソフトや林地比準ソフト或いは固定資産税標準宅地評
価ソフトも Web Siteで公開していますが、何かのご参考になればと考
えるだけであり、どなたかに使用をお勧めした覚えは一切ございません。
自己責任でお使いに為られる方がお使いになるだけです。
フリーウエアとはそういうものです。
問7.全評価員のデジタルアーツの問題
 地域要因比準表ですら、抵抗のある鑑定士が存在する現状を考えれば、
テキストデータをエクセルに貼り付けるだけの作業すら、かなりの抵抗
が予想される。目線の統一化といえども今回(H13年地価公示)は比準
表委員会が全評価員に使用を強制するのは時期尚早と認識する。
【茫猿の回答】
 何をか、いわんやです。前述の通り強制などは毛頭考えていません。
「地域要因比準表ですら」という考え方に大変な疑問とショックを感じ
ています。個別的要因の数値化比準に較べれば、地域要因の数値比準は
「日暮れて道遠し」というのが、茫猿の偽らざる実感です。
 また、今後の情報公開の流れや、電算化の進捗、巷に話題の「IT革
命」などに無関心の方々を同列に論じる気はありません。
別の観点から申し上げれば、すべからく目標値がAランクからCランク
まであるとして、茫猿はAaランクやAbランクを目指そうとは考えま
せん。しかし、護送船団的にCcランク目標を対象にしようとも考えま
せん。常にAcランク、せめてもBaランクを目標にしたいと考えてい
ます。
問8.事情補正について現実の取引価格を無闇やたらに補正すべきでは
ありません。しかしながら、合理的市場が存在していない現在の不動産
市場において、合理的市場に成りかわるべき鑑定士が取引の個別事情を
判断することは必要であり、かつ、すべきと考えます。
【茫猿の回答】
 事情補正をするなといっているのではありません。
事情補正事例が作成済み全体事例数の相当割合を占めていることが問題
であり、しかもその内の相当数は100/(90〜80)であることを問題視し
たのみです。多くの事例について、嵩上げ補正をしなければならない個
別事情とはなんでしょうか?
 別の観点から云えば、最初に事情補正ありきではなく、試算過程の最
後に比準結果が収斂しない事例について、取引事情の存在を疑うと云う
手法が望ましいのではないかと云うことです。
隣接地買進み補正にしても、事情は存在しても、必ず補正しなければな
らない事情補正率が存在するということではなかろうと考えます。

関連の記事


カテゴリー: 不動産鑑定 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください