今、比準価格-2

【茫猿遠吠・・今、比準価格-2・・03.05.15】
 前号に引き続いて、茫猿が実際に数値比準表を用いて比準価格を試算する過程を示して読者諸兄姉のご批判を頂きたいと存じます。。


 「評価に際して採用する数値比準表について」
 評価に際して価格形成要因格差比準は、国土交通省監修の「土地価格比準表」に準拠した比準表を用いて格差率を判定するものである。 同比準表の各価格形成要因格差率は地域要因と個別的要因において重複するものが多数存在することと、評価主体の判定に依存する要因が相当数存在することから、相乗効果による誤謬を避けること並びに格差判定精度の向上を目的として、評価案件に即して改訂を施した数値比準表を採用すべきである。
 例えば、最寄り駅の特性、公共施設の配置密度、社会環境の良否、商業施設の集積度等について、当該評価に際して作成した比準表において比準格差を判定しないのは、判定基礎資料が得られないこと或いは得るためには多くの困難が伴うこと、並びに該当事項の相当部分については表示する他の価格形成要因に既に包含されていると考えることにあると同時に、恣意的な判断を極力避けることに留意するからである。
 それらの評価主体の判定に基因する価格形成要因については「その他」要因で包括的に検討するものである。尚、価格形成要因を個別的要因と地域要因に区分するのは便宜的なものであり、概ね画地条件に該当するものを個別的要因に区分するものである。
 本件採用数値比準表では、数値で表示される、地積要因、間口奥行要因、街路幅員要因、距離要因、基準容積率等要因の比準格差点数の計算にはリニアモデルを採用している。リニアモデルを採用する理由は、マトリクスモデルでは各要因の数値格差区分毎に比準点数が一定値を与えられることにより、要因条件差以上に格差点数差が大きくなったりする場合や要因格差に比較して格差点数差が小さい場合を避けるためである。
 以上の考え方を基礎にして、本件比準価格試算に際して作成し採用した土地価格形成要因格差数値比準表は前掲PDFファイルの通りである。リニアモデルとマトリクスモデルについては、本文末尾に注を記載する。 尚、地価公示価格等についても、「地価公示業務実施要領及び地価公示仕様書・国土交通省地価調査課地価公示室」に規定される個別的要因に関わる格差補正が行われた価格であることから、近隣地域標準的画地(具体的には、評価に際して構成した当該比準表における標準画地)との比較において標準化補正が必要と認められる場合は、所要の補正を施すものである。
「比準表モデルに関して」
(注)リニアモデル(リニアプログラミング)(線形モデル)
 企業経営における生産・輸送および長期にわたる経済計画などを最適にするのに用いられる数学的方法の一つ。制約条件をいくつかの一次の等式または不等式によって表し、計画の効果をはかる尺度も一次式によって得られるもの。
(注)マトリクスモデル(格子状モデル)
 数字や文字を正方形または長方形に配列したもの。マトリックス。
(注)両式による比準表並びに計算例
 (格差区分) (優る・a)  (普通・b) (劣る・c) (限界値)
 (要因数値) (500m未満)  (500m超)  (1000m超) (9999m)
 (格差評点)  ±0点     -5点     -10点    -30点
 マトリクス手法では、上記比準表では要因格差が 100/100、95/100,90/100の三指数以外は求められない結果、(b)と(c)間の要因510mと990mは、ともに95/100となる。 同時に(a)490mと(b)510mでは 100/100と95/100の格差を示してしまう。
 数量化可能な定性的要因の比準手法には適しているが、距離条件や規模・間口・奥行等数値で把握できる価格形成要因の比準には適していない。 尚、上記比準表における、要因最小値は0mであり、 最大値(限界値)は9999mである。
 リニア手法で要因(b区分)690mである場合の評価対象地(標準地)格差評点は、以下の計算式により求められる。
・評価対象地要因=A
・b要因区分=B
・c要因区分=C
・b区分評点=b
・c区分評点=c
  (c-b)÷(C-B)×(A-B)+b
 =[-10点-(-5点)]÷[1000m-500m]×[690m-500m(b)]+(-5点)
 =-6.9点 = 93.1/100
 この場合に事例地要因が(a区分)350mであれば、事例地の格差評点は-3.5点(96.5/100)である。
この両者の相対格差は(96.5/100)÷(93.1/100)=(103.7/100)である。
また、事例地要因が(c区分)2500mであれば、事例地の格差評点は-13.3点(86.7/100)である。
この両者の相対格差は(86.7/100)÷(93.1/100)=(93.1/100)である。
 事例地に関しては、各事例要因による比準格差評点は変動するものであり、表示される数値はダミー数値である。 また、評価対象地及び各事例地の表示される各要因評点は、当該評価におて構成する数値比準表において求められる評点(序列位置)である。評価対象地と事例地の格差は数値比準表において求められた各々の比準評点間の相対格差として計算される。これらの計算はマクロを利用して自動的に行われる。
(注)リニア比準表の要因区分と格差評点構成
 リニアモデルにおける比準表構成は各要因区分もしくは比準評点のいずれか又は双方において、等差数値で構成するものではなく、等比数列的配置を行う。 これは、各要因が価格形成に与える影響の度合が要因区分において異なるからである。例えば駅までの距離を検討するときに、近接するほど距離差に帰因する価格差が大きく、駅から遠ざかるほどに距離差に帰因する価格差が小さくなるからである。
(注)比準表の構成と統計解析
 比準表を構成するに際しては、統計解析が必要であるが、個々評価案件の評価試算に際して、統計解析を行うことは基礎資料の量などからして実際的ではないので、固評標宅評価格や地価公示・地価調査価格、並びに評価に際して得られた事例資料を基礎にして解析した結果を援用することにより、比準表を構成していると同時に、旧国土庁土地価格比準表も参考にしている。

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