不動産鑑定評価部会

【茫猿遠吠・・不動産鑑定評価部会・・01.11.01】
 既に御承知の読者も多いのだろうと存じますが、茫猿は迂闊にもつい
最近まで知らなかったことがあります。それは不動産鑑定評価基準の在
り方について調査審議する機関が発足していることであり、尚且つその
機関の議事録が公開されていることであります。
 具体的には、国土交通省傘下の審議会である国土審議会・土地政策分
科会が01.06.01開催の会合において「不動産鑑定評価部会設置要綱」を
制定し、当該部会が既に4回以上の会議を開催しその議事録を公開して
います。
第一回の議事概要は以下の通りです。
 不動産鑑定評価部会は6月以降の会議の内、第4回の8月29日会議
までの議事録がPDFファイルで公開されています。9月10月開催会議
の議事録公開が待たれるところです。
 また、この部会会議の間をぬって国土交通省土地・水資源局担当者と
不動産鑑定士等で構成されるワーキンググループの会議も精力的に行わ
れているようです。
 いずれにしましても鑑定業界に立脚する委員と他の専門委員との間で
交わされる議論の内容は示唆に富んだものであり、未だ読まれていない
読者諸兄姉には是非御一読をお奨めします。
議事概要引用開始
 6月1日の第1回国土審議会土地政策分科会において不動産鑑定評価
部会の設置が決定されたことを受け、本日午前10時より、国土交通省
土地・水資源局会議室において、第1回不動産鑑定評価部会が開催され
た。議事の要旨は以下のとおり。
1.部会長互選
 委員の互選により、緒方瑞穂委員が部会長に選任された。また、部会
長により、前川俊一委員が部会長代理に指名された。
2.審議の概要
 現行の不動産鑑定評価基準について事務局より説明し、基準の在り方
について各委員から意見等が出された。主なものは以下のとおり。
・鑑定評価上の特定価格の概念と、市場で実際に成立する価格との関係
を明確化することが必要。
・収益価格の算出には、将来のキャッシュフローや割引率の予測が入っ
ており、手法を精緻化するにあたっては、鑑定士の責任のあり方にも留
意して議論していくべき。
・実際の不動産取引の行なわれる市場の特性や市場参加者の行動をシュ
ミレートした評価が行われるように基準を見直すべき。
・鑑定評価の精度の向上のためにも、取引事例データの一層の開示が不
可欠。官民あげて、データ整備に取り組む必要がある。
 今後の調査審議の進め方について、以下のとおり決定された。
今後、約月1回のペースで部会を開催し、調査審議を進める。
次回の部会では、不動産鑑定評価基準の改定に向けた主要な論点を整理
する。不動産鑑定評価基準改定の骨子案がまとまった段階で、パブリッ
クコメントを実施する。 3月中を目途に、不動産鑑定評価基準の在り
方についての最終報告をとりまとめる。
委員会名簿
部会長    緒方 瑞穂 (社)日本不動産鑑定協会国際委員長
部会長代理 前川 俊一  明海大学不動産学部教授
特別委員  吉野 直行  慶應義塾大学経済学部教授
専門委員  秋葉 賢一  公認会計士
 〃    浅井 裕史  三井不動産(株)不動産証券化推進部長
 〃    大川 陸治  東急不動産(株)常務取締役
 〃    大久保 晃  東京建物(株)鑑定部長
 〃    中島 康典  (財)日本不動産研究所常務理事
 〃    長場 信夫  長場不動産鑑定事務所
 〃    森島 義博  三菱信託銀行(株)不動産鑑定部部長
引用終了
 公開されている4回の議事録を拝見した限りにおいて(斜め読みでは
ありますが)、価格概念や価格概念との関連で最有効使用の定義等が中
心に議論されているようです。
第4回の議事録では事務局より改正骨子案が提示されたようで、幾つか
の注目する用語定義骨子案が説明されています。
正常価格の定義(案)
 市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と
考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する
適正な価格。
特定価格の定義(案)
 市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とす
る評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合にお
ける不動産の経済価値を適正に表示する価格。
特殊価格の定義(案)
 文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況
を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格。
 先にふれた改正骨子案ですが、Web Site上では公開されていません。
議事録の開示だけでも大きな進歩でしょうが、骨子案の公開や議事録の
速やかな開示も望みたいものです。
 蛇足ですが、議事録では発言者名は「委員」としか開示されていませ
んものの、発言内容からある程度の推定がつきます。些か不謹慎ですが、
発言者を推理しながら議事録を読むのも興味あることです。
不動産鑑定評価部会のURLは以下の通りです。
http://www.mlit.go.jp/singikai/kokudosin/fukan/fukan.html

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