梅便りを前に凍える話

【茫猿遠吠・・梅便りを前に凍える話・・03.02.01】
 正月に例年のごとく降雪があって以来、雪とは無縁の岐阜県美濃地方
でしたが、1/29夜半からは岐阜市内で15cmという久しぶりの降雪でした。
年末以来寒い日が続いているせいか、我が家の水仙も例年になく満開が
遅れています。それに加えて年末年始の地価公示作業以来、茫猿の右眼
がはれぼったくて気分がすぐれません。
 しばらく発信を怠っていたのは、この右眼のせいだけではなくて、
03.01.12付発信記事「差額配分法を否定する高裁判決」について久々に
多くの閲覧(本日現在で330件のアクセス)があったからです。
330件と云えばメールマガジンの発行部数と併せれば900件弱の方々に読
まれたと云うことです。この閲覧件数は一昨年の公取委聴取事件の閲覧
件数475件に次ぐものです。(その後にサイトを更新したので、現在の掲
示閲覧数は更新後の数字です。)
 多くの読者を得たことは、それはそれで良いことなのでしょうが、茫
猿としては今ひとつ喜ぶ気分になれません。それを言ってはお仕舞いだ
と判っていながら敢えて言わせてもらえば、「何やら、功利主義的業界
の一端を見る思い」がするので、気分がすぐれません。
 これは禁句なのでしょうが。(頓首九拝)
 さて、気分がすぐれないついでに、凍える話を続けましょう。
岐阜県の経済統計を整理していましたら、こんな結果が出ました。
全国各地も大同小異なのか、それとも岐阜県はまだましなのか、そんな
思いで記事にしています。いずれも直近1年間と1997年データとの対比
です。()内は02/10時点直近1年間数値です。
・銀行貸出残高   ▲ 9.2% (36,716億円)
・製造業生産指数  ▲13.2% (92.2)
・新築住宅着工戸数 ▲23.4% (15,521戸)
・着工建築物床面積 ▲26.5% (2,899千平方m)
・名目賃金指数   ▲ 3.7% (97.5)
・有効求人倍率指数 ▲38.7% (70.5)
・大型店舗販売額  ▲ 9.4% (219,569百万円)
 住宅金融公庫が発表した四半期ごとに実施している全国住宅市場調査
の02/12月の結果では、3カ月前の前回調査と比べてマンション市場はや
や悪化し、先行きの見通しではマイナス幅が拡大。注文住宅市場は改善
したが、先行きについては回復感がみられないとのことである。
補償コンサル02/11実績調査によれば、土地評価部門の02/04~02/11受注
実績は対前年同期比、件数で▲6.5%、受注額で▲17.7%とのこと。
緩慢なデフレの進行は、茹で蛙を作るだけなのですが。
 どこにも良い数字はない。一部に見られる企業業績の回復も人員整理
や不良債権処理に伴うものであり付加価値の増加によるものは少ないと
いう。イラン紛争や北朝鮮問題の成り行き如何では、3月期に暴風雨が
吹くという御託宣もちらほらしている。小泉総理も「丸投げ総理」から
「延命長久祈願総理」へと転進を図った様子がみられ、新年の伊勢神宮
と靖国神社への参拝はその祈願だったかと察せられます。
・・・・・・さて閑話休題・・・・・・・・・
 ぬるま湯にいて、少しずつ湯温が上昇してゆけば、いつしかそれとは
知らずに茹で蛙なってしまうと判っていて、出れば風邪を引く、風邪で
すめばいいが肺炎が怖いから出るに出られない。
そんな日本で、急速に業績を回復して何かと話題になる日産自動車のカ
ルロス・ゴーン社長についてこんな感慨を持ちます。
 仏ルノーの出資を受け入れ、カルロス・ゴーンに経営を任せた上で、
旧来勢力の圧力から、彼の楯となり業績回復策を実行させた存在は日産
前社長の塙義一氏ではなかったかと思います。
 マスコミにゴーン氏が取り上げられることは多いが、塙氏の存在が語
られることは少ない。しかし、役員や管理職或いは労組、更には系列企
業やOBからの不平不満・抗議を、一身で受け止めてゴーン氏に思う存
分腕を振るわせたのは塙氏であったと云われている。
 彼にすれば、同じことを自分が行うには、あまりにも日産マンで在り
すぎたし、過去のしがらみも大き過ぎたのであろう。だからゴーン氏を
身代わりに立てたという言い方もできるかもしれない。
 でも自身の存在を一歩も二歩も退かせて、出資受け入れ先とはいえ外
国人社長に全てを委ねる決断は生半可にできることではない。
 日産はブルーバードやスカイラインの成功体験に根ざすところの技術
信仰もあったろうし、トヨタと違って大争議を経ていないことから起因
する労組の問題、東京に位置することから政財界のしがらみ問題などな
ど多くの問題点が指摘されていた。それらを払拭するための「乾坤一擲」
とも云える大業がカルロス・ゴーン氏の起用であったろう。
 同時に、その起用を成功させるために、
20歳も年下のゴーン氏の楯となった、
塙義一氏はもっと評価されてもよいと考えます。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
 いささか、旧聞になりますが、
昨年末に新潟の不動産鑑定士を紹介して欲しいという依頼が、岐阜県士
協会 Web Site 無料相談コーナーに寄せられました。
岐阜県士協会のサイトには全国の士協会連絡先を掲示しておりません。
Web Site を開設している士協会についてはサイトURLをリンク集に掲
示していますが各士協会事務局の住所・電話番号は掲載する立場にはあ
りませんから掲示していないのです。
 誠に残念なことに、社団法人日本不動産鑑定協会サイトにも全国各都
道府県不動産鑑定士協会の住所も電話番号もリンク集も掲載されていま
せん。不動産鑑定士が社会と向き合う姿勢の有無がそこにも端的に現れ
ているのです。
 尚、同サイトの中には全国各地の不動産鑑定相談所としての掲示はあ
りますけれど、全国を網羅している訳ではなくて、記載されていない或
いは相談所が設置されていない士協会も少なからずあります。
http://www.fudousan-kanteishi.or.jp/japanese/soudan_j/index.html
上記相談所記事の末尾に23箇所が掲載されている。
・・・・・・蛇足ついでにもう一つ・・・・・・・・・
 何とも締まらない記事に、ここまでお付き合い頂いて恐縮です。
来3月には、福岡で競売評価人ネットワークの立ち上げ総会が開催され
ます。今更という感もありますし、やっとという感もあります。
事実上鑑定士が100%を占める競売評価人が独自組織を持とうとすること
の是非についても、もっと議論があってもよかろうと思います。
 公益法人の業態改革についても迷走気味であり、事実上の業益法人で
ある不動産鑑定協会が何処へ向かおうとするのか定かではありません。
少しずつ業界選挙の話も聞こえてきますが、相も変わらず「順送り」や
「彼奴が出るなら俺だって」の類(タグイ)の話ばかり。
乾坤一擲なんて薬にしたくも、何処にもない。
 特効薬なんて何処にもありません。それだけは間違いのないことでしょ
う。それでも「茹で蛙・鑑定士」を待つのか、撃って出るのか。
制度発足以来、地価公示、地価調査、国土法届出、補償土地評価、監視
区域添付鑑定・第三鑑定、固評標宅評価、不良債権処理などと、たかだ
か四十年未満の鑑定制度の歴史の中で、よくもまあ、これだけ神風が吹
いたものだと思います。
 でもよくよく考えてみれば、制度の存在そのものが右肩上がりがなさ
しめたことであり、神風も地価上昇が引き起こしたものと云えましょう。
その後、十数年を経過した右肩下がりの潮流のなかでは、全く異なった
発想が求められると思います。
先日の高裁判決もそれを強く示唆していると思われてなりません。

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