選挙から始まるもの

【茫猿遠吠・・選挙から始まるもの・・03.04.06】
 二年に一度巡ってくる(社)日本不動産鑑定協会の会長・副会長等役員選挙
は終わりました。会長選挙について云えば、従来連綿と続いた信託銀行や大手
不動産会社の代表者でなく、個人鑑定事務所の主宰者が初めて会長に選出され
ました。
 この結果を歓呼の声をもって迎えた方もいるでしょうし、肩を落とされた方
もいるでしょう。大きな変化であるのは間違いないことです。
しかし、茫猿は「選挙の終わりが、始まりである。」と考えます。
 不動産鑑定を取り巻く状況は、楽観を許さないものであり、既存の業務分野
には閉塞感があふれ、新規の業務分野はまだまだ定かではない状況にあります。
このような状況の中では、会長が替われば全て変わる、まして良い方に変わる
と考えるのは、あまりに楽観的に過ぎるものがあります。会長が替われば全て
が変わるというような、生易しい状況ではなかろうと考えます。
 同時に、最高意志決定機関である協会理事会において、理事自身が自らを軽
視しそれを広言して憚るところのない状況は、会長一人を変えても如何ともし
難いのかも知れません。また、変わることへの期待の大きさは、変わらないと
きにその何倍もの落胆となって跳ね返ってくることでしょう。その意味におい
て、横須賀氏並びに横須賀氏を支援した会員の責任は重いと云えましょう。
 二年の任期などあっという間の短さでしょう。政治というのは優先順位だと
云います。新会長はあれもこれも手を付けるのではなく、この一つを行うとい
う政策目標を明確にして、健康にご留意され会務に邁進されることを祈念致し
ます。
 この選挙期間中に幾つかのご意見を耳にし、幾つかの出来事を目にしました。
1.選挙応援文書等に、協会役員としての肩書きを付した件
・現職会長が、現職会長名で立候補挨拶状を配布された件。
・現職副会長三氏が、副会長肩書きにて連名の推薦文を配布され件。
・元副会長名を付して、副会長候補推薦文書を配布された件。
 いずれも、地位利用ともみえるものであり、専門職業家団体の選挙にはふさ
わしくない行為と云えましょう。
2.最も歴史があり、組織構成鑑定士数も多い団体が会長候補を出さない件
 日本不動産研究所(日不研、ここに勤務される鑑定士の方々は不動研と自称
されることがお好きなようですが)は、会長候補を出すにふさわしい組織であ
るし、今のような難局において鑑定士のために一肌も二肌も脱いで頂くにふさ
わしい組織と考えますが、いっかな会長候補を出そうとされません。
副会長という不動の地位に止まられるのが茫猿には不思議です。
 だから不動研なのかもしれませんが。今回は直近まで在職のOB氏も含めて
2名の副会長を当選させられましたから、今後のリーダーシップに期待できそ
うです。
3.信託銀行や大手不動産会社出身の役員がボードから消えたこと。
 会長・副会長名簿から、信託銀行あるいは大手不動産会社出身者が消えまし
た。一つの時代の流れと云えましょうが、今後このことが何をもたらすのか興
味深いものがあります。
・協会は専門職業家団体としての性格を明確にして行くのか。
・それとも、依然として大きな地位を占めるそれら組織が、
・鑑定協会や不動産鑑定評価に興味を失ってゆくのか。
4.究極の選択、または不毛の選択
 今回の会長選挙を「究極の選択」と評した方や、「不毛の選択」と評した方
がお見えでした。茫猿は「モア・ベターな選択を」と申しました。
 協会や会長・副会長に何かを期待するのでなく、自分たちが何をして行くか
が改めて問われていると考えます。自らが所属する単位会のなかで、あるいは
委員会や分科会など各種の組織の構成員として、何を果たしてゆくのかが問わ
れていると考えます。
 選挙期間中に「鑑定評価の五年後」と題するシンポジウムがありました。
五年後を予測してみても無意味なことだと考えます。「五年後に斯くありたい」
したがって、「五年間を斯く過ごす」。そういうことであろうと考えます。
 足腰を鍛えてゆく。それしかない、それが迂遠にみえても結局近道である。
茫猿はそう考えます。鑑定士達の協同作業に依存せざるを得ない、基礎資料収
集作業を充実してゆき、資料の管理・解析ツールを拡充してゆくという、地道
ではあるが確実な行為の積み重ねが不動産鑑定士の基盤を大きく確かなものに
してゆく。改めて、茫猿はそう考えます。
「いわゆる公的評価(官需)の拡充」とか、「義務鑑定(官主導の民需)の拡
大」といった、鑑定士にとって我田引水的言辞を弄するのは、もう止めにしま
せんか。
 鑑定評価の業務拡充は市場が決めてくれるでしょう。市場に期待される鑑定
評価であること、市場に提言できる不動産鑑定士であること、それに尽きると
考えます。
 不動産鑑定士にとって重要なのは、
・市場と情報に対するセンサーが鋭敏であること。
・あふれる情報を取捨選択できるセンスを持ち合わせること。
・そして、専門家としての矜持を胸にするスピリットを持ち筋目を糺すこと。
 エエカッコが過ぎましょうか。

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