慌ただしくなった新スキーム

地価公示業務が終了したとはいえ、多くの鑑定士諸氏は固定資産税標準宅地 評価や相続税標準地評価に多忙な日々であろうと推察します。その間隙を縫うように講習会が開催され、「取引情報開示制度」並びに「事例収集新スキーム」の試験施行立ち上げの日程が慌ただしくなりつつある。個人情報保護法の全面施行日である4/1も近づいてきた。4/1が近づくに連れてセキュリテイ関連業界も多忙なようである。


最近の鑑定協会の動きは、1/18が常務理事会並びに理事会、翌1/18には全国士協会会長会議が開催されて、一連の規程等の制定及び説明が行われたと聞き及んでいる。
一連の規程等とは、
・不動産の鑑定評価業務に係わる個人情報保護に関する指針
※いわゆるガイドラインである。ガイドラインに関しては、鑑定協会公式サイトに「意見の募集」(締切2/9)と併せて掲載されているから、お読みになると宜しいと思います。
・資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程(以下、資料管理規程)
・資料の収集・管理・閲覧・利用に関する行動基準書
・個人情報取扱規程
・個人情報苦情等対応細則
・個人情報漏洩等事故対応細則
・個人情報セキュリテイ実施基準
いずれも各都道府県士協会に備え付けてあると思われるし、現在日程が進行中の鑑定協会主催「個人情報保護等研修会」でも配布されていることと思われる。これらの諸規程は今後の鑑定評価業務に大きな影響を及ぼすものであろうから、精読しておく必要があるだろう。
例えば、「ガイドライン第4(5)」には、安全管理措置についての具体的説明がある。特に「コンピュータによる情報管理の場合の技術的安全管理措置の具体例」として、7項目が例示されている。この各項目について、鑑定協会事務局や士協会事務局は云うに及ばず、各会員事務所においても遵守することが義務づけられるものである。準拠または努力義務と読むのが正しいのかもしれないが、実際問題としては義務化に等しいであろう。
また、「資料管理規程」第12条では、講習受講義務を述べるとともに、第13条では受講認定証の発行を規定している。そして第25条(資料閲覧資格)では、資料閲覧資格として受講認定証の携帯を挙げている。つまり講習未了者は原則的に資料の閲覧ができなくなる。
(注)ここでいう資料とは、売買取引・賃貸借等事例資料をはじめ広汎な鑑定評価関連資料を含み、異動通知情報も含まれる。
まだ噂話の域を出ないが、H18地価公示では、受講未了者は「地価公示評価員委嘱申請資格が与えられなくなるということも囁かれている。
これらの一連の流れは、「取引価格情報開示制度」及び「事例新スキーム」に関連するものであるが、基本的には個人情報保護法の施行に係わるものである。個人情報保護が重視されるということは、地価公示をはじめ地価調査や一般鑑定評価においても取引事例その他で個人情報を取り扱うことであるから、個人情報保護法並びにガイドライン及び資料関連諸規程を遵守すること、即ちコンプライアンスの強化が求められるのである。
このサイトでも何度か記事にしてきたが、試験施行を実施しない士協会と云えども、地価調査業務の開始に伴い05/04以降には多くの取引事例を取り扱うことであろうから、諸規程の整備、プライベートポリシーの公表、閲覧体制の法に則した整備、士協会内部に於けるデータの取得・交換・利用に係わるセキュリテイ管理、ネットワーク整備などが早急の課題となっているのである。
尚、ネットワーク構築については、広汎な利用が可能だけれどもやや高価な【IP-VPN】方式の採用は見送られ、より廉価な(会員の負担は殆ど無い)【SSL-VPN】(Secure Sockets Layer-Virtual Private Network」)方式が採用された。さらに中央管理サーバへのアクセスに際しては、USBメモリーで提供される「SSL-KEY」も使用されるようである。
さらにあってはならないことだが、資料管理規定第36条から第41条では罰則規定が設けられ、各規定に違反した場合は最大三ヶ月の閲覧停止処分を受け、団体及び業者会員も両罰規定により処断される。
また、処分は公表されると同時に「協会団体の社会的信用を損なう」と判断された場合は会員権停止処分もあり得る。
まさに心して懸からねばならないと云える。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
先日も、某IT関連企業に勤める方と話したのであるが、情報漏洩が新聞で話題になるたびに社内の情報管理が厳しくなり、仕事がやりにくくて仕方がないとぼやいていました。それでももう一度事故を起こしたら再起不能になりかねないから我慢と努力を重ねているとのことでした。
別の企業に勤める方は、昨秋以来情報セキュリテイコンサルの引き合いがとても多くなった。しかし、セキュリテイ投資は収益に直結しない消極的投資だから、なかなかゴーサインが出ない。
事故を起こせば、取引停止になったり官公庁入札指名から外されたりするだろうことは理解しても、投資には二の足を踏む経営者が多い。
でも年内に同業他社が事故を起こせば、意識が大きく変わるだろう。
事故を待つ訳ではないが、一罰百戒・スケープゴートの出現が、気楽な風潮を変えるだろう、と述懐していました。
士協会会長会議・鑑定協会配布資料のうち、「新スキームによる情報の流れ」と題するペーパーの末尾に、このようなコメントが書き加えられていた。
『皆さんが、自主性、独自性を主張されていますので、基本的にはお任せする規程と致します。』
ニヤリとさせられるコメントである。多分、全国の多数の役員やら会員から、事務局に様々な要望・要求・陳情その他が寄せられて、ウンザリされたのであろうか?  こんな風に読めるのである。
各都道府県士協会の自主性並びに独自性は尊重します。しかし、同時に結果責任も取って頂きます。回復不能な程の社会的信用を損なう事故が発生すればその影響は直ちに全国に波及します。そのような事故の発生しないように「褌の紐を締めて取り組んで下さい。(古い表現だな)
さもありなんと茫猿は思いますが、であれば早急に一連の諸規程等を鑑定協会サイトに掲載するか、できればCDにて配布して頂きたいものである。
独自規程を作成する時間的余裕はないので、取り敢えずは日本不動産鑑定協会を士協会に一括置き換えて単位会規程としたいものである。
個人情報保護法第20条では安全管理措置義務を規定し、第21条では従事者監督義務を規定している。両条に違反しても直ちに罰せられることはないが、第34条において是正勧告を行えると規定する。
つまり、鑑定協会及び士協会において、罰則適用などは論外であり、是正勧告を受けるだけで致命的であろうと考える。

関連の記事


カテゴリー: REA-NET構築 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください