虎ノ門の危機管理(会長談話-その四)

 先日来、話題にしている「会長談話」を本日夕刻(06.07.04・18:00)確認したら、末尾約200字が削除修正されていた。しかし、談話の主要部分には何の変更も修正も加えられていないのである。協会役員のみならず、ひょっとしたら読者諸兄姉も会長談話の何処に問題が潜むのか御理解されていないかもしれない。そう考えて「虎ノ門の危機管理(会長談話-その4)」をお届けします。


 我ながら少ししつこいと思う。茫猿らしくない。でも、WebSiteの持つ意味、会長談話の持つ重みというものを考えたら何度云っても云い足りない。疎まれようと嫌われようと云っておくべきだと考えるのである。
『推敲を加えている今、世界蹴球独伊延長戦前半である(06.07.05・06:20)。 中田は、この手に汗握る緊張感をピッチ上で味わいたかったのであろう。』
  たった今、ブラジルに続いてドイツの世界蹴球も終わった。
『会長談話の部分引用』
「古いエンジニアリング・レポートや暫定版として作成されたエンジニアリング・レポート」を使った「不十分な鑑定評価に基づく取得」が上げられています。」
【茫猿の遠吠】
 上げられているのは証券取引等監視委員会が発した公文書です。
【鑑定評価についての言及は補足文書にあり。】
そこにはオリックス不動産投資法人に係わる不十分な鑑定評価と名指しされています。しかも投資法人に係わる鑑定評価書の概要はWeb Site に数社の鑑定事務所名称とともに公開されています。
 これ以上は書きませんが、談話が指摘するように「投資家の利害に関わり」、「不適正な場合は国民の信用を大きく損なうもの」であると自覚するからには、鑑定業者団体の長として所属会員並びに鑑定協会の名誉にも関わる問題について、他人事のような表現で済まされるものではないだろうと考える。
 鑑定協会は業者の団体である。同時に士の団体でもある。士(サムライ)の品格を社会に表わしたいものである。
『会長談話の部分引用』
「このような情勢を受けて、国土交通省から法45条報告並びに4項目の指導・周知が当協会会員に対して行われました。
 また、週刊ダイヤモンドは、不動産鑑定士の姿勢に大きな疑問が浮上しているとの記事を掲載しました。
 私は、今日、鑑定評価の内容が適正であることに国民の注目が集まっていると思います。」
【茫猿の遠吠】
 国土交通省から法45条報告を求められ、四項目の指導・周知を受けたことを、協会会長としてどのように考えるのかが問われているのである。週刊ダイヤモンド記事をどのように受けとめ、どのように対応するのかが問われているのである。しかし、談話は指導の事実や記事掲載の事実を淡々と述べるだけであり、何も答えようとはしていない。
『会長談話の部分引用』
「会員各位におかれては、各鑑定事務所ごとの自前の努力を持続的に続けられている段階であろうと思料する次第です。
皆様のこの努力のお陰で、証券化関連鑑定評価の適正が保持されてきたと言えますが、今後、より多くの不動産鑑定士が拡大する証券化に関わっていく中で、全ての協会会員が、証券化関連鑑定評価の水準の向上に努めその内容の適正を保持し、以って不動産鑑定士に対する国民の負託に応えていかねばなりません。
 会員各位におかれては、国土交通省の指導の遵守はもとより、証券化関連鑑定評価の水準向上及び内容の適正の確保に当たられるよう求めます。」
【茫猿の遠吠】
 精神訓話などは必要ないのである。現下の疑惑を払拭する具体的な措置や行動が求められているのであり、類似行為を再発させないための具体的な措置や行動が求められているのである。
 また、前号記事でも述べたことであるが、今求められているのは会員への訓話などではなくて、国民への鑑定協会の意思表明なのである。広く世界に発信する協会公式 Web Site に、このような『会員のみに宛てた談話』を掲載するという内向きの姿勢が、社会にどのように受けとめられるかと想像する力が全く働いていないことを哀しむのである。市民感覚の乏しさを哀しむのである。
『会長談話の部分引用』
「協会と致しましては、従来より、精度の高い統一的不動産投資DCF基準の作成に努めてきましたが、今後、証券化関連鑑定評価の水準向上及び適正確保に関し早急に特別委員会を設置して現下の課題に対処してまいりたいと考える次第です。」
【茫猿の遠吠】
 談話の最後に来て、やっと具体的措置の輪郭がおぼろに見えてきた。
でも談話が述べるのは、単なる努力目標にしか過ぎない。何となれば、証券化に関する留意事項について多くの文書を鑑定協会は既に発行済みである。鑑定評価基準並びにそれらの留意事項と倫理綱領が適切に運用されておれば、証券監視委員会や週刊ダイヤモンドからこのような指摘を受けるはずもないのである。
 ことは昨日今日に始まったわけではない。茫猿としてはこれら事件の端緒は二年以上は遡ると考えるが、そこまで遡らなくとも4/5・JPモルガン信託銀行事件以降既に三ヶ月近くが経過しているのである。
 この事件をどのように真摯に受けとめたか、そしてどのように誠実に具体的に対処しようとしてきたかが問われているのである。
 会長談話を対象にして言揚げしているから、茫猿は会長への個人攻撃を行っていると受けとめる読者が多いかもしれない。
しかし違うのである。茫猿は横須賀氏に面識を得ており酒席を伴にさせて頂いたこともある。あの明るく率直な性格は好きなのである。でも、そういった個人的な感情とは違うのである。
 会長談話は談話自体が最後に「協会と致しましては・・・」と述べているように、会長の個人談話などではないのである。公表される「会長談話」というものは、常務理事会もしくは正副会長会の了承のもとに外部に公表される(社)日本不動産鑑定協会の意思表明なのである。軽々に訂正されたり出したり引っ込めたりするものでもないのである。
 問われているのは(社)日本不動産鑑定協会の自治能力であり、自浄能力なのである。鑑定協会は然るべく推敲を重ね、証券監視委員会や国土交通省は云うに及ばず、広く国民の批判に耐え理解を得る「会長談話」を公表しなければ為らないのである。
 そのような形跡が見えてこないから、茫猿は鑑定協会の正副会長及び常務理事諸兄姉に猛省を促すとともに、諸氏の【Sensor】、【Sense】、【Spirit】に期待するのである。
 確か、今日07/04は鑑定協会正副会長会及び常務理事会開催日である。明日には「国土交通省土地水資源局長06/29通知に対応する会長談話」が、協会 Web Site にUPされるであろうと期待して今夜はやすもう。
【妄言多謝、過言蒙御免】
『知ってますか、
「アテ(期待)と褌は向こうから(前から)はずれてゆく。」という俚諺を。
茫猿もこの歳になれば、どれだけ茫猿が鄙の片隅で遠吠えしても、
虎ノ門には届きはしないし痛くも痒くもないと知っています。
 それでも云わなければ何も始まらない。
沈黙は金だと云うけれど、
黙っていれば支持したと、
勝手に都合の良い解釈をされるだけなのだ。
   黙って見過ごせば、日頃、茫猿が最も嫌う、
      無関心、無気力、無感動の三無仲間に入ることとなる。 
      今や、無知、無恥、無理を加えて六無とも云う 。』
※H.H.K原則を知っていますか。 ヒヤリ、ハット、キガカリ原則のことです。
 「1:29:300」というハインリッヒ法則のことです。
 1の重大事故の下には、29の軽症事故があり、
 その下には300のヒヤリ・ハット事例があるという法則です。
 さらにこの300の下に無数のキガカリ事例があると云う、
 安全管理・危機管理の鉄則です。

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