民間競売制度導入問題

 日本不動産鑑定協会(前)副会長・平澤春樹氏が主宰するブログ「APPRAISAL OPINION」に「民間競売」導入に関わる試案が掲載されています。不動産競売制度に関心のある方は、一読されたらいかがでしょうか。さらに内閣府規制改革会議は規制改革推進のための第2次答申(平成19年12月25日) で、競売における評価に関して、後述のような見解を公表している。


民間競売6」エントリーの冒頭部分を引用して掲載しておきます。

(社)日本不動産学会と資産評価政策学会の共同設置による民間競売研究会から、民間競売制度の促進に関する提言が中間報告として発表されました。
 前回、最低競売価格の廃止に伴う、売却規準価格制度への改善の時もこの委員会からの提言等によって、協力に制度改善が要請され、民事執行法の改正となった経過があります。

なお民間競売関連のエントリーは、今日現在で6件が掲載されています。
 民間競売実施に際して、不動産鑑定士が制度的にどのように関わるのかがいまひとつ判らないが、平澤氏は「民間競売2」で、鑑定士の係わりを以下のように述べている。

 鑑定協会は、民間競売を新たな鑑定士の分野として積極的に取り組むべきです。(中略)司法競売は絶対必要な制度ですが、これを残したまま民間競売機関を設置できる可能性のある時代がそこまで来ています。
現在競売評価を行っている人だけでなく、不良債権処理に伴うデューデリジェンス評価を行ってきた人達も含め、既存のビジネスの数倍のマーケットになるものと予測されます。

 また、「不動産競売制度の改善方策に関する調査」のアンケート回答の集計結果が、規制改革委員会のホームページで公表されています。
不動産競売制度の改善方策に関する調査:関連業者、専門資格者アンケート調査結果概要
 このアンケート結果等を踏まえ、規制改革会議は「規制改革推進のための第2次答申」に、競売関連の記載を公開しました。(12月25日に同HP上に公表)
 この調査結果は、不動産鑑定士(回答数201/総回答数902)と銀行・信用金庫等金融機関(回答数509/総回答数902)や司法書士・行政書士(回答数192/総回答数902)との対比が興味深い。大半の設問に対して不動産鑑定士の回答は、鑑定士以外の関連業者、専門資格者回答と逆に(消極的)なっているのである。この回答結果をどのように読むかはさておき、司法競売制度についての鑑定士の認識は、社会の認識とに大きなギャップが存在すると見ることもできよう。
 ついで、規制改革会議は、 規制改革推進のための第2次答申(平成19年12月25日) において、競売における評価に関して、以下のような見解を公表している。

 各裁判所における競売運用の問題点として、まず第一に、競売物件の評価基準が不明確で、裁判官や評価人の個別の判断に依存しており、評価基準についての情報公開も不十分である。
具体的には、裁判所における競売不動産の評価に関しては、全国統一の評価基準が存在しない。各地方裁判所管内で、評価人候補者が任意の研究会をつくり、裁判官、書記官が研究会に参加して意見を述べるなどした上で、マニュアルを策定していると言われるが、多くの場合、非公表で、その成果は研究会内部で独占されている。(以下、略)

第二に、評価人の選任基準が不明確で、一旦選任されると殆ど交代がなく、既得権益化しており、不公正、不透明な状況であるという問題がある。
例えば現在、社団法人東京都不動産鑑定士協会には 2,113 名の資格者が在籍している。また、東京地裁管内では平成 18 年度には 3,224 件の競売が申立てられたが、それにも拘わらず、これらの競売不動産の評価を 46 名の評価人候補だけで行っている。これが、競売不動産の評価について、ユーザー側から遅い、高いと指摘される一因となっている。
 評価人の名簿は公表されておらず、また評価人は2年ごとに更新されることとなっているが、実際には一旦選任されると殆ど交代がなく、選任基準も不明確な状況である。特定の限られた評価人が数多くの評価に関与し続けることは、既得権益化した、公的手続にあるまじき不当な利権構造というべきである。
 不動産鑑定士をはじめ不動産の評価に関する知見を有する専門家は多数存在しており、あらかじめ明確に定められた任期と選任基準に基づき、優れた知識・技能を有する者が透明性、公平性高く、また限られた評価人が多数の評価業務を独占することのないよう数多く選任されるようにすべきである。

第三に、評価人の報酬についても明確な基準がなく、個別事案毎に裁判官が判断して決定しているが、必ずしも実務の難易度に応じたバランスの取れた報酬体系となっていないという批判があり、その算定基準は不透明かつ不適切である。加えて、評価人の選任に流動性がないために、寡占的な状態における費用交渉が行われている実態がある。
 評価にかかる労力と、そこから生み出される価値に応じた統一的な報酬算定基準を定め、それに基づいて評価報酬を決定するように改めるべきである。また、評価人の選任方法を現在の硬直化、寡占化した状態から透明性・公平性の高い方法に改めることにより競争原理を働かせ、評価報酬をより適切な水準に近づけるべきである。

 答申は第四項に結論的に以下のように述べているのである。

 法務省には、立法を支える事実関係について徹底的な調査を行うべき責務がある。
したがって、各地方裁判所の不動産競売の運用における、競売物件の評価基準、評価人候補の選任基準、評価人の報酬算定基準、執行官の選任方法、執行官の報酬基準等について、不公正、不透明な点がないか、利権構造となっていないか、執行裁判所の業務が公正かつ効率的に行われているかなど、関係機関との密接な連携の下に、法務省は、問題点を解明するための調査・検証を行い、必要に応じて法改正によって問題を解決する措置を取ることも含め、十分な検討を行った上で、執行の透明化、適切化に向けての結論を早急に得るべきである。

 さらに、【具体的施策】 では、競売の民間開放について、以下のように述べている。

 平成 17 年 12 月に発足した「競売制度研究会」において、これまでの米国その他の諸外国における民間競売制度等についての調査検討、我が国における現行の裁判所による競売制度についての実情等を踏まえ、抵当権者、債務者、一般債権 者等の利害関係者の正当な利益保護、手続の合理化・迅速化、実務界のニーズがあるかどうか、あるとすればどのようなニーズがあるか等に留意し、我が国の競売制度の改善策として取り入れるべき点がないか、取り入れるべき点があるとすればどのような内容が考えられるかについて、関係機関との密接な連携の下に検討を行い、結論を得るべきである。
【平成 19 年度検討・結論】

 なお、競売評価と直接には関連しないが、「建物固定資産評価の改善」についても、第二次答申は興味ある意見を述べている。課税評価の問題点指摘であり、鑑定評価における建物評価手法とは直接的に関連しないが、建物評価全般に関わる一つの視点であろうし、鑑定建物評価と固定資産建物評価との連鎖の存在を示唆しているとも読めないだろうか。

(中略)したがって、建物の「適正な時価」として取引価格を用いることは、個別事情による変動要因はあるものの、全体の取引例をならしてみれば時価を近似的に反映していると考えられる。むしろ、建物の維持管理状況等の個別事情に関する補正を何ら考慮することもなく、一律の経年減価を施す乱暴な手法を踏襲してきている再建築価格方式の方がはるかに大きな偏差を生じさせているのであって、評価のメリットとデメリットを勘案すれば、弊害の方がはるかに利点を上回ると考えられ、時価の解釈方法として再建築価格方式に無理があることは実務上も明白である。納税者の納得性確保、行政コスト、時価の代替指標としての適切性のいずれの観点からみても、再建築価格を膨大な労力を掛けて積み上げるという不自然かつ正確性に欠ける手法よりも、取引価格を用いる方が優れていることは疑いがないと思われる。(後略)

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