幸せの陽だまり

 08年地価公示作業も一段落して、ようやくに08年正月気分である。というか、今や毎日が日曜日に近い。よく言えばのんびりゆったり気分だし、口悪く言えばただ暇なだけである。


 昨日はそんな緩やかな一日であった。午後2時を約束刻限とする現地立会調査が入っていたのに、事務所を10時に出たのである。事務所から現地(岐阜市の北隣接山県市郊外)までは約30分の距離であるから、午後一時過ぎに事務所を出れば十分間に合うのであるが、そこはそれ「ゆったり気分」なのである。
 現地へ向かう途中、というより市内のロードサイド施設内のCD&DVD販売店に立ち寄り、昨年末より欲しかったCDを探したのである。探してたのは「MILES DAVIS Kind of Blue reissue版(再発行版)」である。 モダンジャズ界の巨星・マイルスについて素人同然の茫猿が何も語る必要はなかろう。囁くような問いかけるようなミュート・トランペットの音をBGMにしていると、仕事にもリズムができて来る気がする。マイルス:トランペット、コルトレーン:テナーサックス、ビルエバンス:ピアノ、キャノンポールアダレイ:アルトサックス、コブ:ドラムス、この音の空間に包まれたときに至福を感ぜずして、いつ感じるというのか、そんな気分である。ショップでは、「KIND of BLUE」と「ROUND ABOUT MIDNIGHT」を求めた。その瞬間から車内はブルーノートに遊ぶ気分である。

 二枚のCDはWindows Media Playerを利用して、LANサーバHDに取り込んで、今もBGMとして事務所内に流れている。ここしばらくはマイルスオンリーの日々である。
 少し昼には早いが、岐阜から山県市に向かうR.256:通称高富街道沿い岩崎地内にお気に入りの食堂「やまびと」があるから、其処へ立ち寄って昼食にする。やまびとの女将は飛騨高山郊外・丹生川の出身であり、飛騨風の菜が豊富なのである。例えば、ジャガ芋の飛騨風煮っ転がし、蕪菜の炊き合わせ、ブリの煮付け、キンピラ、魚卵の煮付けなどである。
 このお店は昼飯もやっているが、メインは夜の居酒屋割烹だから素材やメニューが豊富であり、刺身定食、煮魚定食、牡蠣フライ定食などの他に、単品注文もオーケーである上におでん(関東炊き)もある。大ぶりの具材が鍋に溢れているのだが、嬉しいのは牛すじが飛騨牛だということである。昨日の昼食メニューは刺身定食(ブリ、マグロ赤身、コウイカ)に、キンピラとジャガ芋煮っ転がしを追加し、さらにおでんの大根と牛すじも頂いた。
 この店でもう一つ忘れてならないのは、沢庵である。丹生川直送ということで市販されていない沢庵がとても旨い。大ぶりに切られた沢庵をポリポリとかみ切れる幸せを歯にも耳にも感じながら、アサリのみそ汁(味噌は当然ながら飛騨地味噌)を頂けば、「女将さん、飯と汁と沢庵だけで何も要らないよ!」などと軽口もたたけるのである。
 幸せなお昼をいただいた後は、256号から山県市役所方面に左折してすぐに在る「珈琲店:あるていむ」である。マスターが一杯々々ドリップして淹れてくれるコーヒーとさっき買ったCDの解説冊子を読みながら、食後のひとときを過ごすのである。おりしも店内にはマイルスが流れているなんて具合にはゆかないで、中年のオバサンが三組もいて話し声が耳障りではあるが、幸せ気分が壊れるほどでもない。というか、気持ちが穏やかだから、オバサん会話も許せるのだろう。そういえば、やまびとの相客もオバサン組ばかりだった。この頃は男は疲れていて、コンビニ弁当やラーメンチェーン店で昼をすますのだろう。やまびとみたいな店に現れるのは元気なオバサンばかりという訳だろうか。
 刻限になれば、おもむろに「あるていむ」を出でて現地に向かう。現地での実査作業も順調に終えることができて、昨日は今年一番に気分の佳い日だった。事務所に帰ってきてメールチェックしたら、桐蔭横浜大学法学部客員教授のTAHALA氏から「塾・鄙からの発信」開塾記念講演を快諾するという嬉しい返信が入っていた。昨日は最近にない気分の佳い日となった。
 夕刻近く、昨年から請けている仕事が続いている顧客が事務所に現れ、年始の挨拶やら今後の取組方針やらを打ち合わせる。そこで、茫猿が今年の懸案の一つとしている福井達雨先生講演会場に貴社のホールを使わせて貰えないかと打診したら、「そういうことなら、我が社にとってもハク付けになりますから、是非お使い下さい」と快諾である。
 昨日は快諾続きで、身の幸せを感じる一日だった。生涯にも、そう多くはない気分の佳い日であった。マイルスと、やまびとの女将と、あるていむのマスターと、T教授と、A社N会長に心からの感謝を捧げるのである。
 今日は久し振りに冬らしく伊吹颪(おろし)が吹きすさんでいるが、陽だまりはもう春の気配である。伊吹山が朝日に映えて黄金色に輝くのもやはり春近しの報せである。何はともあれ、今の気分は『コイツァー 春カラ 縁起ガ佳イワイ』なのである。
 

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