員弁川早春賦

一昨日来の雨も上がり、春めいた陽射しに誘われて、ふと向かった先は三重県桑名市から鈴鹿連峰藤原岳の麓に通じている三岐鉄道北勢線である。 窓越しに車内に射し込む陽射しは陽春のものであるが、北勢線の終点・阿下喜駅で降りて歩いた阿下喜の町並みを抜ける風は「春は名のみの冷たさ」であった。見上げる藤原岳にはまだ雪が残っているし、人影がまざらでシャッターが降りている店が多い町並みは寒々としているのだから、当然といえば当然なのだけれど。


三岐鉄道北勢線は、2003年4月に近鉄から営業譲渡を受けた路線で、西桑名~阿下喜20.4kmの区間を走る全国でも珍しいナローゲージと呼ばれる軌間762mmの路線である。一般の車両よりも小振りな可愛い電車だが、沿線の通勤通学の足となっている。
ミニ旅のスタート地点、三セク養老鉄道美濃山崎駅。駅前広場に車を停めて養老線の客となる。駅前広場の桜の蕾は大きくなっている。もうすぐ開花なのであろう。

無人駅だから、乗車駅標を取って乗り込む、先ずは養老鉄道桑名駅に向かう。養老線はもともは近鉄養老線であったが、営業不振から分離分社三セク化した大垣市と桑名市を結ぶローカル路線である。途中には孝子伝説で有名な養老の滝や「天命反天地」もあるのだが、公的支援が打ち切られれば廃線が待っている運命にある。

養老鉄道と近鉄本線、JR関西本線、伊勢線などが発着する桑名駅。

三岐鉄道北勢線は桑名駅を出て、徒歩約1分の距離にある西桑名駅を発着する。車内には沿線の幼稚園生が描いた三岐鉄道の塗り絵が多数飾られていて、何名かの園生や保護者が写メールを撮っていた。

小さな車輌に不釣り合いに大きなパンタグラフの三岐鉄道北勢線車輌。

日曜の午後なのに閑散としている車内。

北勢線の終点、阿下喜駅。

阿下喜駅駅舎、ローカル軽便鉄道ながら券売機や自動改札が整備されている。

阿下喜駅には軽便鉄道博物館なるものがあるが、まだ整備途上のようである。

朽廃寸前の木造車輌をボランテイアが修復工事中である。

三岐鉄道は三重県内を走りながら三岐(三重・岐阜)と名乗るのは、もともと三重県四日市市から岐阜県JR関ヶ原駅を結ぶ路線として計画されたことに由来する。 伊勢湾の四日市と日本海の敦賀を結ぶ交通路としては、「日本横断運河構想」や「四日市・敦賀道路構想」などがあった。三岐鉄道もそのような列島横断交通路構想の一つである。 今回は北勢線を訪ねたのだが、次回は三岐鉄道の本線三岐線を訪ねたいし、同じ軽便鉄道の近鉄内部・八王子線も訪ねたいのである。
阿下喜・北勢町(現員弁市)の蓋。

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