旬は過ぎたかNSDI-PT

 去る6月4日に、NSDI-PT:H21事業年度最後の会合が開催されました。会合の目的はREA-MAP実証実験:参加14士協会対象の説明会でしたが、同時にPTの現状に関する意見交換も行われました。総じて云えばNSDI-PTは事業の旬を過ぎてしまったという印象です。


 NSDI-PTが発足して早や二年が経過しました。事業の当初計画からすれば、今頃は実証実験を終えてその検証を行っている頃ですし、次年度事業計画の掘り下げも始めている頃です。 しかし、集まった実験参加14士協会のうち、曲がりなりにも実験データを提供し、ネット開示を行っている士協会は6士協会のみであり、その6士協会といえどもREA-MAPアクセスは一部の会員に限定しているという状況です。
 可能な限りの情報開示を標榜するNSDI-PTの主旨からすれば、6/4説明資料くらいはReaNetで開示されて然るべきですが、それすら伴わないという状況をとても残念に思います。当日配布された資料の一部をPDF化して開示しますが、印刷物のPDF化ですから不鮮明な点はご容赦下さい。
【6/4配布資料aを開く:5,309KBあります。】
【6/4配付資料bを開く:3,279KBあります。】
 最も懸念されるのは、NSDI-PT事業目的が事例カード(五次データ)の”地図を利用した検索”に矮小化しかねないという点です。話題が事例閲覧や管理に収斂する傾向が強く、REA-JIREIが抱えている様々な問題をそのまま引き継いでいるという点がとても残念です。
 6/4会合においても茫猿は、「NSDI-PTやREA-MAPは、取引事例の閲覧利用に寄与することを事業目的とするものではない。 その効用は否定しないが、それは結果にしか過ぎない。」、「NSDI-PTの事業目的は、鑑定評価に地理情報システムを導入することにあり、事例作成の強力なツールとなることを目指さなければならない。」、「NSDI-PTあるいはREA-MAPは、データ解析の有力なツールに位置づけられなければならない。」と主張しましたが、残念ながら手応えある賛同を得ることはできませんでした。
 地価公示や地価調査業務の副産物である事例カードというデータに、地理座標値を与えて閲覧の便宜を図ることが無意味とは申しませんが、鮮度の落ちたデータにどのような加工を加えても、そこに積極的な意味を認めることはできません。所詮、データ管理という後ろ向きの作業にしか過ぎないのです。
 取引情報(一次データ)に座標値を与え、取引価格情報(三次データ)に座標値を与えることにより、取引市場の趨勢を地理情報として取得しそこから広範な属性データを取得したり解析を行うツールを開発することにNSDI-PTの存在意味があるので、事例閲覧とかデータ開示方法や開示範囲などという次元の課題はPTの関わる事柄ではないのである。
 どのような質を備えるデータが作り得るのか、データを如何に共有するのか、そしてそれらが鑑定評価をどう変えてゆくかが重要なのに、事例閲覧とか管理ばかりが話題になる。 まさに本末転倒であり、事業の矮小化そしてすり替えと云わざるを得ないと言ってみても、今さらに茫猿の遠吠に過ぎないでしょうが。
 それにしても、茫猿はこの二年間なにをしていたのだろうかと索漠とした思いです。鑑定業界が逆風下にあり萎縮傾向にあることは承知していますが、であればこそブレイクスルーが求められるはずなのに、内向き指向やデータ囲い込みにこだわっていれば、将来に虹を見ることは望めないでしょう。
 鑑定会館建設問題は中止の方向で終息に向かうようですが、愚かな問題に時間と人的資源を浪費したという無駄が正しく認識されていないようです。 何よりもこの問題が常務会や理事会でしばらく看過されたという、役員諸氏の「事なかれ主義」がとても残念です。NSDI-PTもこの「事なかれ主義」が大きな壁として立ち塞がっているように見えます。

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