Rea Review 制度創設提案

2010/08/02開催の衆議院予算委員会における「かんぽの宿」関連質疑において、不動産鑑定評価における「Client Influence Problem」が話題となっております。それは鑑定評価の依頼者が示す不適切な働きかけが、引き起こす諸問題と解することができます。 この問題は今に始まったことではなく、最近では2008/06/17付け証券取引等監視委員会が行った行政処分の際にも指摘されたことです。

鑑定協会はこれらの問題を一部の不心得者の行為であると矮小化することなく、鑑定協会全体の問題として積極的な改善策を速やかに講じることにより、鑑定評価への社会の信頼回復に努めるべきであると考えます。 私はその観点から「Rea Review」制度の創設を、本日付けにて鑑定協会会長宛に提案致しました。


《 Rea Review の概要》
一、鑑定協会のRea Netに「Rea Review」と題する鑑定評価書登録保管サイトを設ける。
二、鑑定業者は鑑定評価業務を受託するに際して、依頼者から開示の許諾及び開示時期についての意思表示を、書面にて受ける。
三、鑑定業者は鑑定評価書を依頼者に発行するに際して、「Rea Review」サイトへ以下の事項を登録する。ただし、登録は義務ではなく、鑑定業者の自由意志である。
1.登録年月日及びメールアドレス(アドレスは非公開)
2.パスワード(評価書の差替、登録取下、公開時期の変更等に使用する)
3.鑑定業者コード、公開の諾否、公開の時期(直ちに、1年後、2年後等)
4.対象不動産の表示(都道府県コード、市区町村コード)、価格時点
5.不動産鑑定評価書の全部または一部のCSV等のデータファイル
6.登録したメールアドレス宛に、登録済証を自動交付する

四、公開時期の到来した評価書ファイルは、公開サイトへ移動し開示される。
「Rea Review」は構築費用約百万円、年間維持費約数十万円と安価なシステムです。また会員に登録を強制するものではなく、登録は任意です。 しかし、Rea Review登録済証の発行は、評価依頼者、受託鑑定事務所並びに鑑定協会のCSR(Corporate Social Responsibility)を高めるものとなりましょう。 同時に当該鑑定評価書の信頼性も高めるものとなりましょう。また、制度創設は直ちに大きな効果を期待するものではなく、「Rea Review」登録が鑑定評価書のステータスとなるべく、着実に育ててゆくことが肝心と考えます。

「補足事項」
1.Rea Reviewとは
Rea ReviewとはRea(鑑定評価)のReview(レビュー・再審査、論評)ということである。ただし、発行済み鑑定評価書を不動産鑑定士の誰かが審査するという類のものではない。
依頼者に発行済みの鑑定評価書を然るべきサイトに公開することにより、「利害関係者や不動産鑑定士をはじめとする多くの人によるレビューを受ける姿勢」を明確にしようとするものである。

2. Rea Review 制度創設費用
自主的に制度を創設し維持する費用に関して、「Rea Review」はとても安価である。若干のシステム構築費(Rea Netを利用すれば、追加経費は百万円前後であろう。)と、年間数十万円以下のファイルサーバ維持費用を計上すれば足りると見込まれる。あとは然るべく広報すれば良いのである。

3.不動産鑑定評価書の開示について
当然のことであるが、不動産鑑定士には不動産鑑定評価に関する法律第6条で秘密を守る義務が課せられているから、自らが作成した不動産鑑定評価書を開示することはできない。
しかし、依頼者の許諾が得られる場合はその限りではないと考える。 鑑定評価書を公開するも公開しないのも、依頼者の自由意志である。 問題は受託する鑑定業者側に公開の積極的意志があり、そのことを社会に広報することにより、社会の負託に応えようとする鑑定協会の意思表明である。
同時に官需であれ、民需であれ、評価書の開示は、あらゆるステークホルダー(利害関係者:関係市民、投資家等、及び社会全体)からの開示要求に対して、適切に応えるものとして、積極的な対応が望ましいものである。

4.公開の時期
鑑定評価書の発行即開示と短絡的に考えているものではない。不動産取引交渉の始まる前に評価書の全てを開示することは控えなければならないであろう。 しかし一定期間経過後は開示することに多くの意義が認められるものと考える。
であるから、開示、非開示をはじめ開示の時期も含めて、依頼者が決めるべきことと考えるのであり、事後に何らかの問題が第三者から指摘された場合には直ちに開示できる準備を予め整えておけばよいと考えるのである。 問題はそのような措置並びに行為を鑑定士が自主的かつ自律的に行うものとして、不動産市場に対して「Rea Review 制度創設」を提案することに意義があると考える。

以上の事項に関する詳細は、弊事務所サイト『鄙からの発信』-カテゴリー・不動産鑑定に掲載しております。タグ「レビュー」からも関連記事をお読み頂けます。
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