常備菜2011

『鄙からの発信』では、以前にも茫猿が作る常備菜について書いてきた。 ちりめん山椒(チリメンジャコと山椒の佃煮)、筑前煮(ガメ煮ともいう)、柚餅子(柚子のなかに胡桃味噌を入れて蒸しそして干し上げた保存食)、柚子ねり(トースト用に常備)などである。
今日は最近はまっている常備菜・切り漬について書いてみよう。男の料理の取っ掛かりとして試してみれば良かろう。 晩酌の肴が何もない時に重宝するし、もちろん朝食の箸休めとしても存在感を示すであろう。(朝食トースト派には別の利用方法がある)
野菜の摂取量を増やせとよく云われるが、野菜をサラダなど生で摂るのは結構大変であるし、大量に摂れば身体を冷やしかねない。野菜は煮物、おひたしで摂るのが好ましいが、即席切り漬けも佳いものである。


切り漬けは誰でもできる簡単な即席漬けであるが、一手間掛けると見違える(舌違える)味になる。 先ずは用意する野菜だが、大根、白菜、蕪、他には冷蔵庫の野菜室にある余り物野菜・キャベツ、カリフラワー、人参など何でも良い。 他に鷹の爪、切り昆布、柚子または檸檬、そして塩である。 切り昆布は出汁をとった昆布を冷凍保存しておいて刻んで使う。刻むのはハサミを使用すべきである。包丁で刻むと細かく刻めないからである。 刻むと言えば鷹の爪もハサミで刻めば細く小さく刻めるから、口に入れても辛さで飛び上がるということはない。
塩は当然のことであるが、陰の主役でもありミネラル含有の塩にこだわりたい。
さて、用意した材料を一口大に刻む、といっても大根・蕪は扇形(厚さはお好み)に、白菜・キャベツは適宜であるが根元の厚い部分と葉先では切り方を変えるのがよろしい。人参は千切りが好ましい。好みで玉葱も味にふくらみを増すものである。ただし、人参・玉葱は主役ではないから分量にご注意あれ。 刻んだ材料をただちに漬け込むのでなく、半日程度陽に当てて水分を飛ばすと、旨味が増す。 陽に当ててといっても、今時分のことであり、陽ざしが強くなれば陰干しにするのは云うまでもない。
これらの材料を笊のなかで混ぜ合わせ、細かく刻んだ柚子皮、昆布を合わせて鷹の爪、塩と柚子汁を振りかけながら漬け込むのである。塩は薄いなと思うくらいが適量である。慣れないうちは、柚子や檸檬の搾り汁に塩を溶いて使うと量を間違えることが少ない。 一夜明けて、野菜から出る水が上がってきてから、塩が足りないと思えば足せば済むことである。
この切り漬けは、一夜おけば食すことができる。 当然に塩が効いていないが醤油を足せばよいし、サラダ感覚で二杯酢をかけても好ましいものになる。 二夜明けて、三夜明けて、漬かり込んで食味が変わってゆくのも味わいたいものである。
五夜もたって、うっかり漬かり過ぎたらどうするかといえば、笊で軽く水洗いして(しなくてもよい)、ジャコや出汁をとった煮干しをほぐしたものなどを振りかけて、フライパンや浅鍋で軽く炒め卵でとじれば、これは「飛騨の漬物ステーキ」茫猿流という一品に変貌する。
とまあ、切り漬けでこれだけの文量を書き込む茫猿もおかしな奴だと思うが、ついでに茫猿がお勧めする市販の常備菜について記してみよう。
「一の傳」の「旨煮鱧」
世の中にこんなに旨いものがあるのかと、至福口福絶品である。 冷蔵で宅配されてくるから「煮コゴリ」状態で届く。これをそのまま冷蔵庫に保存し、食する時もその一箸二箸を熱い御飯の上に載せていただく。 もちろん白湯や焙じ茶をかけても佳い。先ずは御飯に乗せていただき、次はお茶をかけていただく。「櫃まぶし」ならぬ「鱧まぶし」である。 なお、お茶は煎茶だけは避けたい、白湯または焙じ茶に限るのである。
一の傳は西京漬けの専門店であるから、西京漬けの旨さは云うまでもない。
「三河屋」の「煎り酒」
煎り酒は常備菜にははいらないが、常備しておけば刺身から漬物・和え物まで様々な副菜の味を数段引き上げる調味料である。 手作りも可能だが、材料を調える手間と煎り上げるまでの手間暇を秤にかければ、購入した方が手早くコストパフォーマンスも良かろうと云えるものである。 一度、取り寄せれば欠かせない品となるであろう。
お値段をしれば、いささか贅沢なと思えるかもしれないが、スーパーの安いマグロもこの煎り酒で《ヅケマグロ》にすれば、銀座の寿司屋もはだしで逃げると知れば安いものである。 茫猿は食材にも多少はこだわるが、何よりも塩、砂糖、醤油、酢、山葵、柚子胡椒などの調味料にこだわるのである。煎り酒にこだわれば安い刺身も旨くなるが、逆の場合は高い刺身もネコマタギに変じてしまうのである。
草深包丁の極意は此処に有る。  各々方 心めされよ。

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