北紀行§1 路地奥カズエ

2012.07.31 08.00 常滑中部空港を発った茫猿は、長野県上空では遠くに富士山を眺めて、09:30 函館空港に降り立ちました。 暑い岐阜から涼しい北海道へと思っていましたが、函館も岐阜に変わらない30度を超える暑さでした。 北海道士協会と岐阜会との親善行事に参加するための北海道紀行ですが、せっかくの機会だからこの際は北海道を縦横に見て回ろうという旅立ちでした。 函館と札幌の市電全線踏破、日本最北の駅・稚内と最東の根室駅に降り立ちたいというのが、旅の目的でした。


そして、先ずは函館市電です。 幸いなことに函館空港から路線バスに十分も乗れば、函館市電の東ターミナル:湯の川です。 函館を訪れるのは二度目です。前回訪れたのは2006.09.03、この時の顛末は当時の記事に述べるとおりであり、タクシーの中から行き交った市電の姿を垣間見ただけでしたが、今回は思うだけ市電に乗れる旅です。 湯の川は折り返しのホームがあるだけの簡素な電停、まわりにはお茶を飲む場所もありません。 市電は湯の川温泉、函館競馬場前、五稜郭公園前を経て函館駅前へと向かいます。 車内で求めた函館市電一日乗車券です。

 

 

 

 

 

函館駅前の宿に荷物を預け、JR函館駅に向かいます。駅で購入したのが、JR北海道フリーパスです。 このフリーパスは25,500円と、ちょっとお高く思えますが、有効期間七日間、JR北海道全線フリー、しかも特急自由席乗り放題、普通指定券6回迄は利用可という優れものです。あまり知られていませんが、今回の茫猿の旅には格好の心強い武器となったチケットです。 市電とJRが目的という、何とも不粋な旅に付き合ってくれた同行者のために、茫猿は早速に指定券利用その1を行使したのです。 それは旭川発美瑛経由富良野行きのノロッコ列車指定券ですが、予定するその日最後の一枚が手に入りました幸運は、同行者の機嫌をとても良くしてくれました。

さて、北海道でしか入手できないフリーパスという旅ツールを入手した茫猿は、昼食と函館ミニ観光の為に、再び市電の客となり十字街に向かいます。 先ずは、五島軒にて昼食です。オーダーしたのは北海道らしく「エゾ鹿カレー」、同行者は「海宝カレー」、カレーに似合うビールはサッポロクラシックビールです。 エゾ鹿肉は上質のビーフヒレ肉を思わせるクセのない旨さで、いきなり、マイウーな旅のスタートでした。

五島軒で朝昼兼用ともいう食事を終えた茫猿は、天主公教会、ハリストス正教会を拝観し、坂の上から函館の町をながめ、再び市電の客となり西のターミナル谷地頭に向かいます。市電通りからハリストス正教会までは陽射しのなかで坂道を昇ってゆくのですが、五島軒でエレベータと階段を使い3階?から道路へ出ましたから、一番きつい坂道は昇りはパス、降りのみですから助かりました。 谷地頭では北海道会のM氏ご推奨の谷地頭温泉に入湯するのです。 谷地頭温泉は市営の施設であり大きな銭湯という感じでしたが、鉄分で赤茶けたお湯は肌に優しくて、昼に飲んだビールのせいもあって、暑い函館でかいた汗を流すのに絶好の温泉でした。 M氏に感謝です。

宿に戻って一休みする同行者と別れた茫猿は、しばらくのあいだ市電三昧です。 函館市電は坂の多い町を昇りそして降るのが面白く、坂の手前で下車して坂道の向こうから姿を見せる市電を待つのも面白いものです。 それに函館市電はエアコンの装備が無く窓を開放していますから、窓から入ってくる海風も心地良いものです。(写真はクリックすれば大きくなります。)
      
(左)(中)函館駅前、(右)超低床型市電、残念なことに復元ハイカラ号に出会うことは有りませんでした。 確認しましたら、本日は運行休止とのこと、空港近くの車庫で出会うべきだったと思いましたが、既に夕刻のこと、後の祭りでした。 祭りといえば、函館は翌日から夏祭りで花電車が運行されていました。
      
(左)青柳町の坂を昇ってきた市電、(中)(右)夏祭の花電車。 そして函館市電には一般的には珍しい女性運転士が乗務しています。ハイカラ号には出会えなかったものの祭花電車に出会え、女性運転士が乗務する電車に客となれたのですから、結構幸運だったのです。

さて、谷地頭温泉で汗を流し、海風に吹かれながら市電を満喫した茫猿は、この日の宿に戻り夕食へと町に向かうのです。 向かった先は、これも北海道会の有力筋M氏が御推輓の「居酒屋:カズエ」です。 M氏いわく「迷わずに行き着くことは難しいでしょう。」 茫猿答えて「何年、鑑定士稼業をしているとお思いですか、ストレートで探し当てます。」 教えられていたのは、「松風町のカズエ」そして「路地の奥」だけです。

電停松風町で市電を降りて、それらしい路地を探すのですが見あたりません。 そこで路地飲屋街で立ち話をしている女将らしき人に尋ねますと、「カズエさん? この先、二本先の路地にありますよ。」 路地を数えながら二本目の路地、ひと一人がやっと通れる、草が生え水たまりもある路地を見つけましたが、店らしき構えも行燈や提灯も見あたりません。 路地の奥、行止りに目を凝らしますとそれらしい灯りの入っていないビニールを被せた提灯が見えます。 もしやと思い、勇気を奮って路地の奥に至れば大正解、「和寿栄」さんでした。 表に顔を見せた和寿栄という名前には似つかわしくない、どちらかといえば「蛸坊主 (-_-;) 」に近い親爺さんに「入れますか?」と問えば、「どうぞ・・・・」と、愛想のない返事が返ってきます。
(写真は帰り際、7:00頃に撮りましたから、灯が入っています。入店は5:30頃)

廃屋に近い路地と店構えに似合わず、店内は小綺麗に調えられており、先ずはビールを頼み、函館ならばイカであろうとイカ刺し、そしてツブ貝刺身、マグロ中とろ、イワシ塩焼き、いずれも美味しくそして手早く供されました。 イカさし身はエンペらも添えてあってマイウーでした。 お勘定の時に、一見さんが来そうもない路地奥の店、誰の紹介かと尋ねもしない無愛想な親爺に「ご馳走様でした。皆美味しかった。さすが達ッアンの紹介です。」と申し上げて店を後にしました。

ところで、松風町とは、北島三郎が歌う函館の女(ひと)に出てくる地名です。「灯りさざめく松風町は 君の噂も消え果てて 沖の潮風 心にしみる」。

〆に函館ラーメンでもどうかとパートナーに尋ねますと、どれも美味しくておなか一杯だからホテルに帰りたいと申します。 最初は何処へ連れて行かれるのかと不安だったが、カズエさんはイカもツブ貝もマグロもイワシも美味しかった。見かけとは大違いとも申します。 ホテルで一休みしたあと、飲み足りない茫猿は最上階(13階)のラウンジバーに向かいます。 大きな窓から函館港、そして函館山に連なる夜景を眺めながら飲む酒はまた格別の味でした。 写真は部屋の窓から眺める昼間の函館駅と函館港、海際で行き止まる線路は青函連絡船が行き来した頃を偲ばせるターミナル駅の風情が見えます。そして、『鄙からの発信』定番、函館の蓋です。

 


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